2020年2月27日、STI(株式会社スバルテクニカインターナショナル)は今シーズンのニュルブルクリンク24時間レース(以下 NBR24H)と、SUPER GTシリーズの参戦に向け、富士スピードウェイにてマシンのシェイクダウンを行いました。
じつはこのシェイクダウン、毎年報道機関向けに同社のレースに取り組む姿勢や体制、また今シーズンのマシンの技術的特徴などのプレゼンテーションを行う場でもあり、現場にはスポンサー企業をはじめとする関係者なども多く集まる賑やかなものでした。しかし、今年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策のためイベント的な催しは一切取りやめとなり、一部選手とマシンの集合写真撮影などは行ったものの、粛々と今シーズンに向けた走行を重ねる本来のシェイクダウンのみとなりました。
NBR24Hには19年同様、「SUBARU WRX STI CHALLENGE 2020」と名付けられたWRX STIをベースにしたマシンで参戦します。基本的には19年のマシンを踏襲したものですが、SP3T(排気量2リットル以下のターボモデル)クラスでの3連覇を果たすべく変更箇所は多岐に渡ります。その内容は、サスペンションジオメトリや空力パーツの変更はもとより、軽量化のためフロントブレーキキャリパーを小型化したり全幅のナロー化に踏みきるなど、より洗練されたマシンとして進化しているようです。
また予選タイムでのクラスレコード(8分56秒)や過去最多周回数(146周)の更新など、その目標も多岐に渡りクラス優勝のみならず総合順位でも過去最高の18位以内を目指すという、非常に高いハードルを課した挑戦となっています。
気になるパワーユニットですが、今回参戦するNBR24H参戦車両には19年の東京モーターショーで生産終了を告げたEJ20型が引き続き搭載されます。また今シーズンの開幕もしていない今、いささか時期尚早ではありますが今後の予定について伺ったところ、現行エンジンをベースに開発をしているとの話は伺えたものの、その時期やスペックはまだ発表できる段階ではないとのことです(まあ、当たり前ですね)。
20年間にも渡って世界のトップカテゴリーで戦い続け、数々の成功を収めてきたスバル。これを支え続けたパワーユニットの後継モデル開発となると、そのハードルがいかに高いかは想像を絶するものだと思います。一方で、WRCをはじめ様々なカテゴリーでの挑戦を途切れることなく続けてきたスバルの姿勢は、決して変わらないと明言していたことはファンにとっては朗報です。その活動を支える心臓部の登場はお預けとなりましたが、時代に即し、時代をリードし続ける次世代の戦うパワーユニットをじっくりと仕上げて欲しいものです。
と、話は少々先走りましたが、まずは自ら立てた数々の高いハードルを超えるべく開発を重ね、5月21日から24日にかけてドイツにて開催されるレースでの3連勝達成の報告を待ちたいと思います。
なお、チームの総監督は19年に引き続きSTIの辰己英治氏がつとめます。今回のシェイクダウンでは現在のスーパー耐久シリーズの前身となるN1耐久レースで、かつて辰己氏とともにレガシィRSで戦ったモータージャーナリスト桂 伸一氏が、2016年モデルの試走も行いました。桂氏はNBR24Hでのクラス優勝経験を持ち、ニュルブルクリンクのコースをよく知るドライバーの1人。走行後その運転フィーリングや旋回性能に対し、「これほどドライバーの意思に忠実な動きをするとは! ドライバーの負担がびっくりするくらい少ないマシンだ」と評しました。また「これほどレーシングマシンとしてモディファイしているのにもかかわらず、運動特性が量産車に極めて近く、そこにも感心した」とも。
スバル/STIが量産車ベースのマシンでこのレースにこだわる理由の一端が桂氏のコメントで浮き彫りになったようでした。
当日はNBR24Hのマシンのほか、今シーズンのスーパーGTを戦う「SUBARU BRZ GT300 2020」もシェイクダウンを行いました。こちらも昨年モデルの改良型で、搭載されるエンジンはEJ20型です。驚くことにSTIの発表ではエンジンの設計、組み立てから運用管理方法、そしてタービンや排気系に合わせた制御の見直しまで行われたとのことです。
スーパーGTは3月中に岡山国際サーキットと富士スピードウェイで合同テストを行い、4月11~12日に岡山国際サーキットで開幕戦が開催されます。世界中のFIA-GT3マシンがひしめくGT300クラスで、どんな戦いを見せてくれるのか。こちらも楽しみです。
<文&写真=高橋 学 text & photo by Manabu Takahashi>
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