2018/08/15 ニュース

あらためて “センティア” がエモすぎる件(1)

いまの子どもたちが描くクルマって、どんなカタチなんでしょう。少なくとも40代の筆者の幼少期は、まだノッチバック(トランク付き)のセダンでした。そのセダン。いま、日本ではあまり売れていません。世界的なSUV人気も その一因でしょう。それでも欧州では、メルセデス・ベンツのE/CクラスやBMWの5/3シリーズは根強い支持を受けていますし、中国でもセダンが人気です。日本でセダンが売れない理由。それは、ひとえに “欲しい” と思わせる魅力を持つモデルがないからだと思います。易きに流れるではないですが(ビジネスとしてはまっとうなんでしょうけど)、SUVやミニバンに傾注しすぎてセダンがおろそかになり、それがいまの状況につながっているのではないかと。そんな国産セダンの復権を掲げ、昨年から今年にかけてカムリとクラウンが一新しました。どちらも新車台の導入などにより、走り、カタチとも従来の “おじさんのクルマ” というイメージからの脱却を図っています。特にクラウンは、先に登場したレクサスLS同様、クーペルックのスタイリング。今風の言い方(もう古い?)をすれば “エモい” セダン。これがユーザーにどう受け入れられるのか? 今後の売れ行きが気になるところです。で、過去にも “エモい” デザインの国産セダンがあったなぁ…と思い浮かんだのがこれ。「マツダ センティア」です。どうですか? ここでは、イメージに振った全24ページのカタログを見ながら、あらためてどんなクルマだったのかを振り返ってみたいと思います。
「エンスージアステック」とは「熱狂的な・非常に熱心な」という意。同車においてはたぶん後者。俗に言う「エンスー」です
センティアが登場したのは、1991(平成3)年の5月。当時のマツダの最上位機種、「ルーチェ」の後継モデルとして投入されました。ボディは全長4925㎜、全幅1795㎜、全高1380㎜に、2850㎜のホイールベースという、見るからに伸びやかなプロポーション。3Lと2.5Lの、いずれもV6エンジンに4速ATを組み合わせました。ちなみに車名のセンティアは、フランス語の “SENTIR”(感じる)と、ラテン語の “IA”(場所)を組み合わせた造語。「感動を呼ぶ洗練された空間」との思いを込めて命名されたのだそう。
●「へ〜、いいじゃん」(と言ってるかはわかりませんが…)
「このごろセダンを愉しんでいますか」。そんなキャッチから始まります。「(中略)そのエンスージアステックな感触に、これまでとは違った新しい価値 “アナザー・プレステージ” をきっと感じていただけることでしょう」。普通の大型セダンじゃないんですよ、ってことだと思います。
●エンスージアステックって、こういうことらしい
「(中略)任せるべきはテクノロジーに任せながら、自動車を操るという本質的な愉しさは、人間であるドライバーに委ねる。セダン本来の機能性を貫きながら、官能的な感触を磨き込む。高級を見せるプレステージから、自分を語る “アナザー・プレステージ” へ。エンスージアスティックの真意です」。これって、いまのマツダ車にも共通していますね。
「ボクんちのクルマ、エモいでしょ?」(…とは絶対言ってない)
「センティアのデザイナーは、『デザインのことをあまり語ってくれるな』といいます。デザインは感じとっていただくものであり、すぐれた感性をお持ちの方が相手なら、なおさらだというのです(後略)」。これも、いまのマツダ車に通ずる考え方かも。
●内装のステッチも手縫いとしました
「センティアのシートは、第4〜5腰椎をしっかり支え、肩甲骨(肩まわり)部をゆったり包む独自のエルゴノミック設計。キャビンの快適さは、何よりもまず、乗る人の疲れをできるかぎり軽くし、体に負担をかけないことからはじまると考えるからです(後略)」。最上級の「エクスクルーシブ」にはオーストリア(現オーストリー)製の本革シートを標準装備しました。
●ちなみにボンネットとロアアームはアルミ製
「自動車にも、当然のこととして身につけるべきいくつかの『たしなみ』があります。(中略)センティアは、新世代4WSや4輪アンチロックブレーキシステムなど安全走行を支援する機能から、ハイセーフティモノコックボディ、SRSエアバッグ、サイドインパクトバーなど万一の際に乗る人を守る機能まで、二重三重の安全対策を施しています(後略)」。
●同時期の「ユーノス500」あたりと共通する意匠
インパネには3次元曲面デザインを導入。「エクスクルーシブ」のセンターコンソールには本杢(楡)を使用。オーディオも、フルロジックカセット一体型AM/FM電子チューナーや300Wハイパワーアンプ、12スピーカーに6連奏CDオートチェンジャーを組み合わせた「スーパープレミアムミュージックシステム」としました。なんとも当時らしいネーミングです。でも当時のインプレッションには、「このクラスとしては質感がもうひとつ」というものが少なくなかったと記憶します。

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