STIが一貫して訴求するのが“運転が上手くなる”ことを目指した製品づくり。それはFRスポーツのBRZでも同じだという。過酷なレースを実験の舞台として選んだSTIが送り出す数々のパーツ群におけるこだわりをひもとく。
内輪をうまく使いきる STI（スバルテクニカインターナショナル）は“運転が上手くなる”をコンセプトに、さらなる走りの質感の向上を図れるSTIパフォーマンスパーツ（以下STIパーツ）を展開している。
「ドライバーが意図したとおりにクルマが応答するというところに着目してパーツを開発しています。装着することで、同乗者に『運転がうまいね』って言ってもらえる。そんなクルマづくり目指しています」 そう話すのは、STIパーツでおもに運動性能の実験に携わる車両実験部の富澤真実さん。
“運転が上手くなる”STIパーツの代表といえば、「フレキシブル」と名の付く機能パーツだ。
「フレキシブルパーツの役割としては、微小舵応答の向上、旋回時に内輪をより使えるようにすることをひとつのキーワードとして開発テストで評価しています。通常、車両は旋回時ロールします。ロールにより外輪に荷重が乗りタイヤが力を出します。ですがこれより早い段階、ステアリングを操作した瞬間、車両が持つジオメトリーの特性により内輪は車体の内側に引き込まれつつ荷重が増え、舵角は大きくなります。この特性を生かして内輪に引っ張ってもらう、結果として微少舵応答が向上する。というイメージです。BRZはフロントに純正でリジッドのVバーが装着されますが、これがフレキシブルVバーだと、姿勢変化時には車体の左右の微小なゆがみをタワーバーと同じように抑え、ステアリング操作時の応答遅れを抑制します。一方、タイヤが路面の凹凸を拾った際に振動がダイレクトに伝わる突き上げ感をリンク機構でいなして良好な乗り心地を確保します。車両応答性を高めつつ、無用に硬めすぎないというのがポイントです。リヤにはフレキシブルドロースティフナー リヤを設定しています。こちらは車両後端のボディ左右にあらかじめプリロードをかける（締め上げる）ことでゆがみを抑え、フロントからリヤにかけて、力の伝達をきれいにつなげる効果があります」フレキシブルパーツを装着することで、ステアリング操作の切り始め（微小舵）からドライバーの意図どおりにクルマが応答、切り戻しによる余計な挙動がなくなり、車両がコントロールしやすくなる。それをドライバーだけでなく、同乗者も感じられるというわけだ。
「車体が安定することでロングドライブも楽になるんです。これはニュルブルクリンク24時間レースでドライバーの疲労軽減に貢献した技術を応用したもので、フレキシブルパーツ装着のメリットになります」 一貫性のある機能パーツ ほかの機能パーツもコンセプトは変わらないという。
「例えばBRZに設定しているラテラルリンクセットは、リンク部にピロボールを採用することでサスの動きがよりスムーズになり、路面の凹凸などへの追従性を高めます。MT車用にコイルスプリングを設定していますが、10mmのローダウン化により、車両のさらなる低重心化が図れますので安定性が向上します」
また、スーパーGTで使用されるのと同じデザインのSTIパフォーマンスホイール BBS 18インチは、見た目のよさはもちろん、アルミ鍛造製法による軽量化により操舵の応答性向上にも貢献している。
「パーツそれぞれでテストをして、“運転が上手くなる”ためのキーワードである内輪をうまく使えているか、というところを確認しながら開発を行っています」 BRZは2023年9月の商品改良でMT車にもアイサイトが搭載されたが、車高が下がるスプリングも引き続き設定される。
「アイサイト装着車についても機能を損ねることがないようしっかりと確認していますので、安心して装着いただけます。ドリルドディスク（ブレーキローター）なども安全運転支援システムへの影響を及ぼさないように、開発段階でしっかりと確認を取ったうえで製品化しています」 エアロも車両応答性を考慮機能パーツと同様に、エアロパーツに関しても車両安定性を高める空力特性を与えるのはもちろんのこと、内輪をうまく使うことを念頭に開発しているという。
「お客様にカッコいいと思ってもらえることが、エアロパーツを選択していただく大事な要素になると思いますので、そこは外せません。そのうえで空力を煮詰めて、コンセプトに沿った形状を盛り込んでいます」BRZではスワンネック形状のドライカーボンリヤスポイラーが強力なインパクトを与える。
「スワンネックのステーはスポイラーの下面の流れを最大限に活用するために採用しています。これはスーパーGT参戦車両で取り入れたものを、イメージをそのままにBRZに最適な取り付け位置や形状、空力特性を考慮して開発しました。優れた空力や操縦安定性に寄与します」新車装着か、後で付けるか今回話を聞いて、どれを付けても効果を感じられるということがわかったが、すべて装着しなければ効果は出ないのだろうか。
「単品装着でも効果を感じられるように開発していますが、お薦めのエアロパーツをセットにした『STIエアロパッケージ』とフレキシブルパーツのセット『STIコンプリートキット』のどちらか、または両方を選択いただくのがより効果的です。商品改良で足まわりのしつけにこだわったグレードとしてSTIスポーツが設定されましたが、そこにはSTIの思想が注ぎ込まれています。さらにSTIパーツを合わせて装着いただけると、われわれが理想とする“運転が上手くなる”をより感じていただけると思います」新車購入時でなくても、“運転が上手くなる”STIパーツは取り付け可能。気分を変えるために装着してみると、きっと装着前後での違いを感じ取れるはず。そしてさらに愛車への愛着が深まるだろう。
BRZ向けに、今後さらにパーツの追加があるのかたずねると、
「BRZ用を含め、さまざまな車種でパーツの開発を進めていますので、期待していただければと思います」具体的には明かしてはくれなかったが、含みのある回答ははたしてBRZユーザーへの吉報となるか。大いに期待したい。
車両実験部 車両実験グループ富澤真実さん
●「BRZはパーツの設定が多いので、気になっているパーツを選んでいただき“運転が上手くなる”効果を体感いただけたらと思います」
見えないけれど効果は抜群
フレキシブルドロースティフナーリヤ価格：3万5200円
●リヤフレームの後端部に装着し、適切なプリロードをかけることで、ボディのごくわずかな遊びやガタツキを締め上げて抑制。車両応答性にリニアな手応えを感じられ、フロント→リヤの挙動の一体感も高まる
ステアリングの応答性が高まる
フレキシブルVバー価格：5万7200円
●フロントストラットとバルクヘッドを連結するVバーにピロボールを内蔵。サスペンションまわりのゆがみを抑制してステアリングの応答性を高めつつ、タイヤからの入力に対しては適度ないなし効果を発揮。胸のすくハンドリングと乗り心地を両立するより軽快なハンドリングを生む
STIパフォーマンスホイールBBS 18インチ 7.5J（マットブロンズ）価格（1本）：10万3400円
●スーパーGT参戦マシンと同デザインのBBS製アルミ鍛造1ピースホイール。モータースポーツで培った知見やノウハウを取り入れ、BRZ用に専用チューニング。軽量・高剛性化による走りの質感と信頼性が高まる フリクションを低減しダイレクト感を高める
ラテラルリンクセット価格：5万5000円
●純正のラバーブッシュ部をピロボール化することでフリクション低減とキャンバー剛性が向上。ハンドリングのリニア感が高まる低重心化により操縦安定性が向上
コイルスプリング（MT用）価格（フロント、リヤ）：各1万1000円
●10mmのローダウン化により低重心化が図れ、操縦安定性を高める。アイサイト搭載の最新モデルでも安心して使える官能的なスポーティサウンド
パフォーマンスマフラー価格：17万4900円
●回転数の上昇とともに上質で心地のいいスポーティなサウンドを奏でる。軽量化も図れ、大口径のカッターは鏡面磨きのルックスでドレスアップ効果も高い
空力性能と操縦安定性にこだわり“運転が上手くなる”思想も盛り込まれるモータースポーツシーンからフィードバックしたノウハウを基に、車体下部の整流効果を高める形状を採用。フロント部はマイナスリフトによりタイヤの接地性を高める効果があり、内輪をうまく使えるようになる。サイドとリヤサイドアンダースポイラーはボディサイドの整流効果で走行安定性を高める。これらのパーツを同時に装着することでSTIが目指す最適なパフォーマンスを発揮できるのだ。3点をセットにした「STIエアロパッケージは11万4400円で用意。
フロントアンダースポイラー価格：4万5100円
サイドアンダースポイラー価格：4万4000円
リヤサイドアンダースポイラー価格：3万8500円
スカートリップ（チェリーレッド）価格：8800円
●アンダースポイラー保護を目的に開発されたが、装着すれば低速度域から微小舵の応答性も高められるという。ブラック（6600円）も用意され、好みのカラーコーディネートが楽しめる ルックスと整流効果を高める
フロントフェンダーガーニッシュ価格：3万3000円
●フロントフェンダーのエアアウトレットに装着することで、ドレスアップに効果的なパーツ。3本のフィンによる整流効果も期待できる。マット調シルバーのSTIロゴ付き レースカー譲りのこん身作
ドライカーボンリヤスポイラー価格：39万6000円
スーパーGT GT300クラスの参戦車両にも取り入れられている、スワンネック形状のステーを取り入れたドライカーボン製のリヤスポイラー。リヤのダウンフォースを高めるとともに、ハイスピード時の走行安定性を向上。２段階の角度調整機構を備えている。
極限のレースで鍛え上げ、市販車にフィードバック
●スーパーGT GT300クラスに参戦するSTI BRZ GT300は、シリーズチャンピオン奪還を目指し2024年シーズンに向けたシェイクダウンテストを2月に実施。新たにルーフにカーナンバー「61」をデザイン。観戦時のマシンの視認性を高めた
走りへの期待が高ぶるアイテム プレミアムシフトノブはアルミ＆ディンプル加工を施した本革巻き。操作感を考慮し素材や形状、重量を最適設計。プッシュエンジンスイッチはSTIロゴが刻まれたチェリーレッドのボタンが走りを予感させる（STIスポーツは標準装備）。
シフトノブ（レザー 6MT）価格：1万9800円
プッシュエンジンスイッチ価格：1万6500円
車内をスポーティな装いに変え、所有欲を満たすサイドシルプレートは、ヘアライン加工のプレートにチェッカーフラッグのエッチングが刻まれ、チェリーレッドのSTIロゴが映える。カーボン柄のドアインナープロテクターは乗降時にドアインナー部のキズ付きを防ぐ。
サイドシルプレートセット価格：1万6500円
ドアインナープロテクター（ZD用）価格：1万7600円
STIパーツでエンジンルームを彩るフレキシブルタワーバーを模した遊び心あるバッテリーホルダーや、ダイキャスト成形に切削加工を施したオイルフィラーキャップ（樹脂カバーの下にホイールレンチで外せるサービスホール付き）、ハイプレッシャータイプのラジエターキャップは機能性も十分にエンジンルームを彩る。
バッテリーホルダー価格：9680円
オイルフィラーキャップ価格：9680円
ラジエーターキャップ価格：4290円
〈文＝ドライバーWeb編集部・兒嶋 写真＝岡 拓／佐藤正巳〉
■問い合わせ先
スバルテクニカインターナショナル
https://www.sti.jp 
