2023/12/21 新車

ホンダ、WR-Vの価格とスペック公開…プロトタイプ試乗で乗り心地に「!!」

最上級となるZ+でも価格は250万円以下

■センタータンクではないメリット

WR-Vは新興国を中心としたコンパクトSUVの世界戦略車にして、インド工場から日本に輸入される初のホンダ車だ。

ボディの全長・全幅は、同じホンダのヴェゼルとほぼ同じ。セグメント的にはもろ被りだが、商品コンセプトの違いは明快である。

WR-Vが投入されるのは、2019年以降に急成長している税込み車両価格250万円以下のスモール・コンパクトSUV市場。この価格帯はガソリン車が7割超の販売を占める。ちなみにヴェゼルは9割がハイブリッド車(HV)で、主力のe:HEV ZはFFでほぼ300万円。

【画像】大きな荷室も魅力…WR-Vを写真で見る

WR-Vはパッケージも大きな魅力だ。ヴェゼルより約70㎜高い全高、40㎜長いホイールベース(日本車Bセグメントで最長)と相まって、後席ニールームは2クラス上のミッドサイズに匹敵。荷室も458リッターの大容量を備える。センタータンクレイアウトを採用しないためシートアレンジを割り切った代わりに、後席はクッション厚がたっぷりした座り心地重視の造りだ。

250万円以下となると競合車はかなり絞られる。しかも、トヨタ ヤリスクロスとマツダCX-3は後席の広さが今一つ。三菱RVRはその点で及第点だが、基本設計が古く賞味期限切れの感は否めない。また、ヴェゼルのガソリン車は1グレードのみで、内外装の見栄えや一部装備がベーシックな設定。

ファミリーユースからアウトドアまで使い倒せる実用性と充実装備を備えた、250万円以下の正統派SUVはほかに見当たらない。WR-Vはこの空白地帯に投入された、ありそうでなかったコンパクトSUVなのだ。

■ヴェゼルよりも取り回ししやすい

さて、プロトタイプの試乗車は中間グレードのZと最上級のZ+(プラス)。違いは外観のみで、Z+はフロントグリルやシルバー系パーツの専用エクステリアで高級感を演出する。

パワートレーンは1.5リッターのガソリンとCVT、FFの組み合わせのみ。エンジンはヴェゼルやフィットのガソリン車と基本的に同じで、118馬力・14.5kgmの動力性能にも違いはない。CVTやファイナルの減速比もヴェゼルと共通だ。一方、車重はヴェゼルのガソリンFFより20㎏軽く仕上がっている。

実際の走りもスペックどおりだ。試乗はつねに2~4人乗車で行ったが、実用域のトルクはさりげなくも頼もしい。市街地を模したコースでは発進&停止の繰り返しでも十分扱いやすい。WLTCモード燃費がヴェゼル(17.0㎞/リットル)より若干落ちるのは、アイドリングストップを搭載しないためか。ロングホイールベースでも最小回転半径はヴェゼル(FFで5.2m)より小さく、取り回しがとてもいい。

高速周回路の合流では、エンジン回転を少し上げるだけでCVTが無段階変速でエンジントルクを効率よく引き出し、程なく巡行速度に乗せる。アクセル開度に応じたホンダのCVT協調制御技術「Gデザインシフト」は、WR-Vの車両特性に合わせてチューニングされている。

ハンドリングコースでアクセルをグッと踏み込めば、キックダウンとともに疑似有段のステップ変速制御へと切り換わる。タコメーターの針がビンッ!と跳ね上がり、車速とリンクしながら上昇。6600回転のシフトアップ直後でも5600回転までしかドロップせず、クロスレシオのレーシーな加速を披露する。ステップ変速は通常のCVT変速のようにトップエンドをキープしないたため、高負荷時の振動・ノイズを軽減する効果もある。

WR-Vの試乗でもっとも注目していたのは乗り心地だ。先行販売されたインドは舗装路面の状態が日本よりかなり悪く、またオーナーが運転手付きで後席に座るケースもあることから(現地ではWR-Vクラスも上級車)、乗り心地に対する要求レベルが高いとホンダ陣営から聞いていたのだ。

■気になったのは急加速時のエンジンノイズ

開発陣の自信を実証するべく案内されたのは、周回路の一部に世界各地の舗装路を再現した乗り心地評価路。どの路面も日本の舗装路ではほとんどお目にかかることのない“悪路”だ。が、そこをお構いなしに60㎞/hくらいで走ると、ボディは上下に激しく揺すられても突き上げ感に不快なカドはない。サスやその周辺、フロアなどにブルブルとした振動も気にならず、足まわりや土台となるボディがSUVらしく骨太な印象だ。

ハンドリングコースで感心したのは、リヤサスの動き。FF系コンパクト車でおなじみのトーションンビーム固定式だが、車高の高さと相まって粘っこいストローク感がある。日本車より欧州車に近いフィーリングだ。この懐の深さも優れた乗り心地の理由の一つだろう。

逆に一つだけ気になったのは、前述の急加速時におけるエンジンフィール。積極的に回すと近年のホンダ車では記憶にないほどノイジーで洗練さを欠いている。個体差であったらいいのだが。ホンダの量販エンジンはいつもスッキリ爽やかでなければならない。

販売面で考えられる懸念材料を挙げるなら、今やクラスで当たり前になりつつある電動パーキングブレーキ(EPB)を採用しない点。そのためアダプティブクルーズコントロール(ACC)の停止保持もできない――。

と思って装備表を確認すると、ACCはそれ以前に全車速追従ではなく、約30㎞/h以上でないと追従しない旧タイプだ。ACCを含む先進運転支援システム「ホンダセンシング」は、新たに近距離衝突軽減ブレーキを加えているものの、旧世代がベースと言っていい。

価格の安さを何より重視するという250万円以下のコンパクトSUV購買層が、こうした点をトータルでどう評価するか。クルマの基本性能はオススメの出来だ。2024年3月22日の発売を楽しみに待ちたい。

■バリエーション&価格(全車FF・7速CVT)
Z+ 248万9300円
Z  234万9600円
X  209万8800円


■Z+/Zグレードの主要諸元(FF・7速CVT)
全長×全幅×全高:4325mm×1760mm×1650mm
ホイールベース:2650mm
トレッド:前後1540mm
最低地上高:195mm
車両重量:1230kg ※Xグレードは1210kg
エンジン型式:L15D
エンジン種類:直列4気筒DOHC
ボア×ストローク:73.0mm×89.5mm
総排気量:1496cc
圧縮比:10.6
エンジン最高出力:87kW(118ps)/6600rpm
エンジン最大トルク:142Nm(14.5kgm)/4300rpm
燃料種類・タンク容量:レギュラー・40L
トランスミッション:7速CVT
駆動方式:FF(前輪駆動)
サスペンション形式:前ストラット/後トーションビーム
ブレーキ:前Vディスク/後L&Tドラム
タイヤサイズ:215/55R17 94V ※Xグレードは215/60R16 95H

ドライバーWeb編集部

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