2023/05/12 ニュース

戦前のニッサン消防ポンプ自動車の再生が完了。約2年かけて走行可能な状態に

テストコースに3670㏄直6ガソリンエンジンの咆哮がこだました

東京消防庁と日産自動車は2023年4月27日、戦中戦後の火災に奔走した「ニッサン180型消防ポンプ自動車」の再生を完了したと発表した。



【画像】消防ポンプ自動車の細部

ニッサン180型消防ポンプ自動車は、本格的な国産消防ポンプ自動車の第1号といわれ、1941(昭和16)年2月に発売されたニッサントラック180型がベース(ベース車の諸元は、全長5895㎜×全幅2000㎜×全高2140㎜。3670㏄水冷直列6気筒80馬力ガソリンエンジン搭載の4速MT仕様)。180型はアメリカのグラハムページ社が設計したキャブオーバー型のニッサントラック80型(1937年製造開始)にフルモデルチェンジを行ったもの。前型はキャブオーバータイプで斬新だったが泥濘地などでは前部が重く脱出が困難といった欠点があった。そのため、より重量バランスに優れたボンネット型に改良。頑丈でどのような悪条件にも耐えるような強度と耐久力を持つ新設計を施したという。


●ニッサントラック80型(1937年生産開始)は180型トラックの前型

そんな当時の最新鋭のトラックをベースにした1941年製の消防ポンプ車は、大田区の蒲田消防署に配置され、戦時中は空襲火災の消火活動で活躍。その後、1945年5月に高輪消防署(二本榎出張所の前身)に配置され、東京オリンピックが開催された1964年10月まで使用された後、高輪消防署二本榎出張所で広報車両の1台として展示され、地元の人から愛されてきたという。

東京消防庁によると、このクルマが再び走ることになれば、ロマンがあるということで、日産に相談したという。今回の再生は日産の社内活動で、歴代の日産車のレストア(再生)に取り組む日産名車再生クラブのメンバー4人が担当。走る・曲がる・止まるというクルマの基本性能だけではなく、やはりやるからには完璧を求めたくなるということで、動かなくなっていた方向指示器やワイパー、点灯しなくなっていた赤色灯など車両全体の電気系統の再生も行った。



●方向指示器

こうしたレストアには資料が大切な役割を果たすが、日産テクニカルセンターのライブラリーにニッサントラック180型の整備要領書が残っているのを発見し、それが活動を進めるための手がかりとして役立ったという。当時の塗装や凹みなどは生かしつつ、走行を実現するために約2年間かけて作業を完成させた。



2023年は1923(大正12)年の関東大震災からちょうど100年の年にあたる。この節目に歴史ある車両が動き出したのは意義深い。レストアが完了したニッサン180型消防ポンプ自動車は2023年6月15日〜18日まで開催される「東京国際消防防災展2023」でお披露目し、イベント初日に最後の仕上げ作業となるホーンの取り付けを行う。その後はさまざまな場所で活用し、東京都民の防災意識の向上に役立てるという。



〈文=ドライバーWeb編集部〉

ドライバーWeb編集部

RELATED

RANKING