手間のかかる「鍛造」にこだわり、軽くて強靭なアルミホイールに挑み続けているBBS。圧倒的技術力が生み出す機能美が、唯一無二のカッコよさにつながっている。
文=湯目由明 写真=堤 晋一
■鍛造は、美しい2021年シーズンのスーパーGT・GT300クラスで悲願のシリーズチャンピオンに輝いた栄光のマシンが、スバルBRZ GT300。折しもベース車両のBRが初代ZC6型から新型のZD8型にフルモデルチェンジした絶好のタイミングでの快挙に歓喜したスバリストは多いはずだ。
シリーズを通してBRZ足元を支えたのが、BBS鍛造アルミホイール「RI-A」。今シーズンからF1と北米トップカテゴリーレースのNASCARへのワンメイク供給も始まり、モータースポーツの世界で飛躍するBBS鍛造ホイールが生み出されるプロセスを、「故郷」の富山県高岡市の高岡本社工場で見学した。
伝統的工芸品の銅器、漆器、(農作業用の日除け、雨具)など、職人が腕を振るうモノづくりの街として知られる高岡市。世界中で使われるレース用ホイールも含め、すべてのBBS鍛造ホイールがメイドイン高岡。F1用は約400本、NASCAR用は約8000本が作られ、市販品も含めて年間約30万本が高岡からユーザーの元に届けられる。
「おとなの工場見学」をナビゲートするのは、2022スバルBRZ GT GALS「BREEZE(ブリーズ)」の朝倉咲彩(さあや)ちゃん。生まれも育ちも高岡で、昨年レースクイーンを目指して上京したばかり。
まずは工場見学の前に予習ということで見せてもらったのが、鍛造と鋳造の断面がわかるカットモデル。鋳造はまだら模様になっているのに対し、鍛造は金属の粒子がとても細かくキレイ。鋳型に溶かしたアルミを流し込んで成型する鋳造は気泡が入りやすく、それが前述のまだらに表れるが、鍛造はビレット(アルミの塊)を強大な圧力で金型に押し込んで成型。金属同士の結びつきが密接になるので、混じり気のない美しい金属組織の流れ(鍛流線)になる。
●アルミホイールの断面図。上が鋳造、下が鍛造だ。鍛造は断面ですら美しい熱気に包まれた工場に足を踏み入れると10m以上の巨大な機械が現れた。これがBBS最大の1万2000トンの圧力でビレットを4分の1の高さになるまで押し潰すプレス機。鍛造工程の「はじめの一歩」で、金型を取り換えながら3回に分けて鍛造を繰り返し(3次鍛造)、ホイールの顔となる意匠面までカタチにする。
「1万2000トンの圧力でプレス!」意匠面を成型したら、陶芸の「ろくろ回し」の要領でインナーリムを引き延ばすスピニング、熱処理などを経て、ホコリやゴミが混ざらないようにクリーンルーム化された塗装工場へ。ここでは手作業で修正・加工→強度を高めるショットピーニング、ブラスト処理を経て、完全オートメーションの塗装ラインに流れる。
高岡にいたころはDIYで愛車カスタムするほどクルマ好きのさあやちゃんは「BBSホイールって、こんなに手間をかけて作られているんですね」と感動しきり。BBSを履くBRZの応援にも力が入りそうだ。
1)すべてはここから始まる●ホイールの原料になる鍛造前のビレット。これを大型のプレス機(写真右)で成型する2)スピニングでリムを作る●スピニングマシンにホイールを固定、ローラーを押し当てて少しずつ伸ばしてリムを形成していく3)機械加工でディスクを形成●意匠面を金型で成型後、窓部を機械加工するほか、小ロットや試作ではデザインを切削で形成することも可能4)塗装前には手作業も入る●塗装前にショットピーニング加工で表面強度を上げてバレル研磨、そして手作業で磨き上げていく5)塗装ブースは完全オートメーション●本社工場近くの四日市工場で塗装などを実施。ブース内は無人、完全自動のクリーンルームだ歴代BBSモデルも展示されている●写真は2003〜04年ごろ、インプレッサWRXをベースにしたWRカーに装着されていたBBSホイール。貴重な当時モノで、さあやちゃんでも軽々持てる軽さ!〈問い合わせ先〉
BBSジャパン
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