2022/08/30 コラム

ステップワゴンの3列目はホントに酔いにくい? お腹いっぱいで試してみた

AIR(4WD)

シンプル&クリーンなエアーと精かんなスパーダの2本立てで生まれ変わったステップ ワゴン。驚いたのは、「酔いにくい3列目」をうたったことだ。筆者は、じつは昔からクルマ酔いしやすい人間。だからこそ、「それってホントかいな…」と思っていた。ならば人柱になろう。大好きなラーメンでお腹を満たし、いざステップ ワゴンの3列目へ! 結果やいかに?



■クルマ酔いは大きな悩み

5月27日に発売を開始した新型ステップ ワゴン。その約1カ月後時点の受注台数は2万7000台を超えるなど、好調に売れている。シンプルな見た目や原点回帰した箱型シェイプが、今どきのミニバンユーザーにちゃんと支持された結果だろう。

個人的にもっとも注目したのは「3列目が特等席」という言葉。しかも、なんとその3列目は「酔いにくい」とまで! ここまでクルマ酔いに言及したクルマはあったか? 

先日、パパ友だちから「今度のステップ ワゴン、酔いにくいってホントなんですか?」と聞かれた。彼の家族グルマはミニバン。娘さんが酔いやすくて困っているのだという。

筆者も幼いころから同じく酔いやすかった。ドライブに連れていかれるのが億劫なほど。じつは今でもそうで、基本的に後席には乗らない。ミニバンの3列目なんてもう!


●編集部・柿崎。この業界に入って約16年、ドライバー編集部一筋。クルマは好きだが幼いころからクルマに酔いやすい。バスに乗るときもなるべく前のほうに座る39歳。ラーメン大好き、でも最近お腹まわりのお肉が気になっている

そこで思いついてしまった。「酔いにくい」とまで強調するステップ ワゴンの3列目に「酔いやすい」状態で乗ってみたらどうなるのか? お腹いっぱいだと酔いやすいのは過去の経験から。せめて大好きなラーメンでお腹を満たして試乗するのだ。

その結果報告の前に、クルマ酔いに関して研究しているホンダの開発陣の話から。どうやらクルマ酔いのプロセスに関してはさまざまな説があり、学会などでもいまだはっきり解明されていない分野だという。

ただ、不快さによってクルマ酔いが起きるのは確からしい。ややこしいのは、不快といっても人それぞれだから。乗り心地やニオイ、暑い寒いといった外的要因もあるが、例えばクルマに乗ったときに怒られてイヤだった、などの強いストレスによってクルマに乗ること自体が不快で、体に不調をきたす場合もあるという。

一度でもクルマ酔いでひどい目に遭うと、その経験がフラッシュバックすることも。しかも、クルマ酔いは複数の要因が重なり合って起きるとされ、非常に厄介な相手なのだ。

また、乗り物のなかでクルマがもっとも酔いやすいイメージがあるが、その点について開発陣に聞くと、「飛行機や新幹線は、速度が安定してしまえば基本的に乗り心地はフラット。一方、クルマは加減速も多いし路面の影響も受けやすい。人間の能力を超えたスピードのなかで、複雑に動きまわる運動性能を持った乗り物なので、刺激が多く、ストレスが多いがゆえ酔いやすいのです」

そしてミニバンの3列目は、空間的に狭くゆったり座れないし、後輪車軸の直上に座るため、路面の凹凸を感じやすい。リヤまわりから入ってくる騒音に近い部分に座わるからうるさいし、さらに2列目の後ろに隠れるように座るクルマが多いため、前方視界が悪い…。想像するだけで気分が悪い。大丈夫かオレ!

■工夫が随所に行き届いている

そんな、ミニバンの3列目ならではのネガを解消するべく、新型ステップ ワゴンは開発された。最大の特徴は視界のよさ。ただウインドーを大きくするのではなく、極力四角く、さらにドアトリムも水平に。そこに2列目から前席までまっすぐ伸びる影ができるようデザインして、3列目に座る人も平衡感覚を保てるようにした。「家の窓は四角いですよね。また、床が傾いていたら人間は気持ち悪くなります。車内でも家の中のように、フラットな環境を作るべく徹底しました」とは開発陣。シートバックレストの縫い目も複雑にせずフラットにしたほどだ。


AIR(4WD)

●2列目上部にも空調スイッチを配置。吹き出し口は3列目まであるから全席で快適だ。(写真のトリプルゾーンコントロール・フルオートエアコンディショナーはタイプ別設定)※写真はAIR(4WD)



●ドアトリムも3列目から前席まで水平に配置。上部に影を作る工夫で、より一層平衡感覚を保てるようにした

また3列目の着座位置を高く設定、さらに前席、2列目のヘッドレストも薄型にして3列目乗員の前方視界も確保。「人って、前が見えないと知らずしらずのうちに体を傾けてしまう。そうすると平衡感覚にズレが出て、余計に酔いやすくなるんです」(同)。確かに「酔いにくい」と語るだけのことはある。説明を聞くだけで、3列目に乗っても大丈夫!と思えてきた。


●編集部・柿崎(身長178㎝、座高は高め)の乗車時。2列目シート越しにスッキリ前方を見渡せて気分がいい。写真はAIR(4WD)

■お腹いっぱいでも大丈夫?
 
そして実験結果だが……お察しのとおり、無事だった! じつは連日の暑さによる寝苦しさで寝不足気味で、さらに条件が悪かったのだが…ステップ ワゴンの3列目は普通に座れていた印象。シートのクッションが柔らかくて座り心地もいいし、そもそも突き上げも気にならないから胃を揺さぶられることもない。


e:HEV AIR(FF)

新型はプラットフォームを先代から継承してはいるものの、開発陣いわく「ボディ剛性を最適化しました。キャビン全体は高剛性にしていますが、下から上に向かって、ちょうど釣り竿ざおのようにしなやかにしなって衝撃を吸収できるボディに。じつは、ボディ上部は先代比で3%ほど剛性をあえて落としています」。なるほど…しなやかな乗り心地を実現しているのには、そんな工夫があったのだ。

そして音に関しても、想像していたより静かだった。先代は、3列目を格納収納するスペースから音が入ってくるのがネガだったそうで、「フロア下に防音材を吹き付けて、遮音性を高めています」とのこと。聞けば聞くほど、徹底している!


e:HEV AIR(FF)

ちなみに2列目は、新開発のスーパーロングスライドもあって至極快適。シートアレンジの手間を省ける技ありのシートレバーも使いやすく、2列目の膝前スペースを拡大させてゆったり座るもよし、3列目と仲良くスペースを分け合うもよし。ファミリーミニバンとして、シートアレンジのしやすさがよく考えられている。


e:HEV AIR(FF)

運転席も特等席だ。足まわりのチューニングはキビキビ系だった先代よりも乗り心地に振っているのだが、「新型は自然なステアフィールと乗り心地をバランスさせたイメージです」と開発陣が語るように、シットリかつドッシリした高級感のあるハンドリングに進化している。e:HEVならEVのような静けさとパンチのある加速感が! ミニバンとはいえ走る楽しさもある。

■酔いにくさならエアー推し!

さて、新型ステップ ワゴンで悩ましいのはグレード選びだ。シンプルかつクリーンなAIR(エアー)と、精悍なSPADA(スパーダ)のどちらを選ぶか。装備の充実度でいけば電動テールゲートなどの設定があるスパーダやさらにその上のスパーダ プレミアムラインを選びたくなる。

STEP WGN AIR

e:HEV AIR(FF)

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●エクステリアはシンプルだが、華奢な印象はなく、スパーダ同様3ナンバーのワイドスタンスで頼りがいのある印象。写真はe:HEV AIR(FF)

STEP WGN SPADA

e:HEV SPADA PREMIUM LINE(FF)

e:HEV SPADA PREMIUM LINE(FF)

●箱型シェイプとスポーティさを融合したスパーダ。装備の充実度ならスパーダ系を選択したい。写真はe:HEV SPADA PREMIUM LINE(FF)

ただ、「酔いにくい」という視点で考えれば、シート表皮がソファのようなファブリック仕立てで、かつ明るい内装色を唯一選べるエアーがオススメ。クルマに乗っている、というより、まさにリビングいるような乗車感覚がエアーにはあるからだ。クルマが苦手な子供にも、落ち着いて乗ってもらえると思う。

e:HEVエアーなら、全席平等で楽しくドライブできる。新型ステップ ワゴンのグランドコンセプト、「#素敵な暮らし」を家族で味わうなら、素敵な選択肢になるはずだ。

〈文=編集部・柿崎 写真=岡 拓〉

〈主要諸元〉
■e:HEVエアー(FF・電気式CVT)主要諸元 [ ]内はe:HEVスパーダ プレミアムライン(FF・電気式CVT) 【寸法mm・重量kg】全長×全幅×全高:4800[4830]×1750×1840[1845] ホイールベース:2890 トレッド:前1485/後1500 車両重量:1810[1840] 【エンジン・性能】種類:直4DOHC 総排気量:1993cc 最高出力:107kW(145ps)/6200rpm 最大トルク:175N・m(17.8kgf・m)/3500rpm 使用燃料・タンク容量:レギュラー・52L WLTCモード燃費:20.0[19.5]km/L 最小回転半径:5.4[5.7]m 乗車定員:7/8[7]人 【駆動用モーター】最高出力:135kW(184ps)/5000〜6000rpm 最大トルク:315N・m(32.1kgf・m)/0〜2000rpm 【電池】形式:リチウムイオン電池 【諸装置】サスペンション:前マクファーソン式/後車軸式 ブレーキ:前Vディスク/後ディスク タイヤ:前後205/60R16[205/55R17]

〈問い合わせ先〉
www.honda.co.jp/STEPWGN/

ドライバーWeb編集部

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