2022/07/27 コラム

「私道は駐車違反で取り締まられない」は本当? 迷惑駐車トラブルを解決 

道交法をつぶさに確認すると自ずと答えが!

「住宅街の狭い道路の真ん中に、外国人が乗用車を乗り捨てて姿を消した。もうみんな大迷惑。警察に通報したが、私道だからどうしようもない、というのをテレビで見た。ほんとにどうしようもないの?」

お答えしよう。まず、道路交通法(以下、道交法)の第1条がこう定めている。

「この法律は、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、及び道路の交通に起因する障害の防止に資することを目的とする。」

「道路における」とある。道路の定義は第2条第1項第1号にある。道路法がいう「道路」と、道路運送法がいう「自動車道」と、そして「一般交通の用に供するその他の場所」、この3つが道交法の道路だ。

「一般交通の用に供するその他の場所」とは何か。交通警察官の虎の巻、『執務資料道路交通法解説』(東京法令出版。これは名著だ。私は大好き)が、8ページ半にわたり詳細に解説している。こんな部分がある。

「現実の交通の有無をとらえてこの法律上の道路とするものをいう。具体的には、事実上道路の体裁をなして交通の用に供されているいわゆる私道がはいるほか…」

つまり私道も道路に入る場合があるのだ。ご質問を読み返すと「事実上道路の体裁をなして交通の用に供されている」ように解される。そうであるなら、そのような私道は「一般交通の用に供するその他の場所」に当たり、道交法の道路に当たる。私道のほか、どんな場所が該当するのか、解説は続く。

「…道路の体裁はなしていないが、広場、大学の構内の道路、公園内の通路というようなところで、それが一般交通の用に客観的にも使用されている場所をいう。しかし、それが管理者の意思によって閉鎖されたときは、ここにいう道路ではなくなる(国会審議における政府説明要旨)。」

そして、河原や駐車場も、閉鎖されておらず人車の出入り、通行があるなら道路に当たる、という趣旨の判例がたくさん紹介されている。そういえば以前、夜中に港の広い駐車場で、彼氏のバイクで運転の練習をしていたら、パトカーが現れ、無免許運転で取り締まりを受けた女性がいたっけ。

次に、駐車違反について。駐車禁止の標識がなくても、駐車違反に当たる場合がある。たとえば交差点の側端から5m以内は、標識がなくても駐停車禁止だ(第44条第1項第2号)。また、第47条第2項はこう定めている。

「車両は、駐車するときは、道路の左側端に沿い、かつ、他の交通の妨害とならないようにしなければならない。」

ご質問のケースは、道路の真ん中に駐車して他車の通行妨害になっているとのこと。標識がなくても「左側端(さそくたん)に沿わない駐車」という違反がばっちり成立しそうだ。

違法駐車がある場合、警察官は「運転者その他当該車両の管理について責任がある者」(運転者等)に対し、直ちに移動するよう命じることができる(第51条第1項)。運転者等がそばにおらず、命じることができないときは、警察のほうで強制的に移動させることができる(第51条第3項)。いわゆる“駐禁レッカー”だね。これは「強制代執行」の一種だ。移動や保管に要した費用は、警察のほうで運転者等から徴収する。

ところが今回、警察に通報したけど「私道だからどうしようもない」と言われた? うーん、首をひねってしまう。もしかして、「私道に勝手に駐車するのは違反だろ」「いや、私道だからって取り締まれない」という話だったのか。私道でも「一般交通の用に供するその他の場所」に当たるかどうか、微妙な場合があるのに、通報者の説明が不十分だったのか。あるいは、通報を受けた警察官が、道路の定義まで頭に入っていなかったのかもしれない。警察官の職務に必要な法令はたくさんある。“漏れ”はあり得るだろう。

結論。私道でも「一般交通の用に供するその他の場所」に該当し、交通違反が成立することがある。ただし、該当するかどうか微妙なケースもある。とりあえずそんなところで如何でしょう。

文=今井亮一
肩書きは交通ジャーナリスト。1980年代から交通違反・取り締まりを取材研究し続け、著書多数。2000年以降、情報公開条例・法を利用し大量の警察文書を入手し続けてきた。2003年から裁判傍聴にも熱中。2009年12月からメルマガ「今井亮一の裁判傍聴バカ一代(いちだい)」を好評発行中。

ドライバーWeb編集部

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