ミシュランからプレミアムスポーツタイヤ=ミシュラン・パイロットスポーツ5(PS5)が発売された。パイロットスポーツ4(PS4)の後継モデルであり、高級セダンからスポーティカー、ミニバンまで広くカバーするウルトラ・ハイ・パフォーマンスタイヤだ。
基本コンセプトは「意のままのハンドリングを実現するハイグリップスポーツタイヤ」であることは間違いないが、ウエット性能をより重視するとともに、転がり抵抗の低減を図っているのが特徴となっている。
低燃費性能とウエット性能に優れるタイヤグレーディングは、43サイズ中42サイズが転がり抵抗/ウエットグリップ=A/aで低燃費タイヤの要件を満たしている。
トレッドデザインは4本のストレートグルーブを基調にしたリブデザインで、デュアルトレッドデザインと名付けられており、内側2本の溝は溝幅を太くし排水性を高め、アウト側は大型ブロックで構成し高いグリップ力を発揮する。
コンパウンドはシリカを増量しており、排水性を高めたトレッドデザインとともにウエット性能を高める要因となっている。
タイヤの構造面では、タイヤケース設計でナイロンとアラミド繊維を縒って作られたキャッププライを採用することで、しなやかさと高速域での剛性を両立。バリアブル・コンタクト・パッチ3.0と名付けられたコーンリング中の接地面圧分散化設計によって操縦安定性の向上も図られている。
雨中の試乗で実感試乗はあいにくの雨模様だったが、それだけにウエットグリップのよさが際立つ結果となった。
比較のために用意されたPS4と乗り比べると、PS5はハンドルの手応えがしっかりしており、タイヤが路面を捉えている手応えがしっかり伝わってくる。
ハンドリング路での乗り比べでは、PS4もウエットグリップ、排水性ともに優れたタイヤで、ウエット性能の評価の高いタイヤだが、PS5のほうがハンドルの手応えが明らかに重かった。
手応えだけでなく、微細な滑り感が少なくグリップレベルが高いのが感じ取れた。
試乗会当日は気温が7度を下回っており、路面を濡らした雨も冷たかった。ちょうどサマータイヤ用コンパウンドが硬くなり始める気温。そのこともあってか、PS4でハンドリング路のタイトなコーナーでハンドルを深く切り込むと、手応えが抜けてズズズッ…とタイヤが外に逃げていく場面があった。
一方PS5では、より深くハンドルを切り込んでもタイヤが外に逃げる(滑る)ことがなく、タイヤのゴムがより柔軟性を発揮して路面を捉えているのが分かる。
シリカの増量により、寒冷時でもゴムの柔軟性を保つことができるのだろう。
軽く滑らかに転がる真円性の高さでは、高速操縦安定性はどうかというと、これも秀逸だった。高速周回路を走りだして、まず感じたのはタイヤの真円性の高さだ。ウエット路面だったので正確なところはわからないが、それでもタイヤが軽く滑らかに転がっていくのが感じ取れた。
80km/hでのレーンチェンジでは、修正舵が少なくすっきりクルマが動いてくれる。ウエットハンドリング路でのコンパウンドの柔軟性が、もしかするとレーンチェンジではハンドルを切り出した時のヨレ(トレッドブロックの変形)につながるのではないか? と思っていたのだが、そんなことはなく、ハンドルの切り出し速度と量に応じて正確な応答が得られた。遅れがないのでハンドルの切りすぎもないし、そのための修正舵もいらない。レーンチェンジしたときのハンドル操作がとてもシンプルなのだ。
PS4との比較でいうと、ハンドルを切り出した時の応答はPS4のほうがわずかにシャープかもしれない。PS5が鈍いというわけではなく、落ち着きや安定感が増えたという印象だ。
というわけで、PS5は新型タイヤとしてきちんと進化していた。特にボクが感心したのは、ほぼ全サイズが低燃費タイヤとしての要件を備えている点だ。いまやスポーツタイヤといえども転がり抵抗の低減は克服しなくてはならない課題と言えるが、PS5は優れた操縦性を進化させながら、同時に低燃費性能も満足してきたのだから、まさに新時代のスポーツタイヤだと思う。
〈文=斎藤 聡 写真=ミシュラン、ドライバーWeb編集部〉