2020/06/24 コラム

可搬式オービス「LSM-300」が使い物にならない実態が明らかに!2019年の全国取り締まり件数が少なすぎる?

■「可搬式」の整備数は全国で60台

オービスの設置数と取り締まり件数の、都道府県別の一覧表、それを私は1996年分からゲットし続けてきた。ネットでは拾えない。菓子折を持って警察庁へ日参し、ってうそです(笑)、情報公開法により開示請求し、手数料を収入印紙で払い、開示を受けてきたのだ。

「固定式」オービスの最新の一覧表を「オービスでの取り締まり件数…大阪だけが1万件オーバーの不思議」という記事を6月22日付けでアップした→https://driver-box.yaesu-net.co.jp/new-article/34443/

「固定式」があるなら「可搬式」の一覧表もあるはず。そのとおり! 今回初めて、タイトルの頭に「可搬式」の3文字がついた一覧表が出てきた。警察庁の情報公開室で開示を受け、私は大興奮、大歓喜、もうニッコニコが止まらない。警察庁の職員諸氏は気味悪そうに私を見ていたょ、ってそこは冗談だけど(笑)。

さて、まずは「整備数」からいってみよう! おっと、いちおう言っとくとこれは、ネットでは「移動オービス」「移動式オービス」と呼ばれているやつだ。名称問題についてはこちらの記事を→https://driver-box.yaesu-net.co.jp/new-article/33450/


●警察庁交通局交通指導課作成の「可搬式速度違反自動取締装置の整備状況(令和元年度末)」。整備は財政に関係する。現在整備を進めているところなので年度(末日は翌年3月31日)のデータとしたのだろう

2019年度末、つまり2020年3月31日の時点で全国に60台の可搬式オービスがあるってことだ。可搬式は2016年から各地の警察がぽつぽつ購入し始めた。4年間で全国にやっと60台。警視庁(東京)と愛知は5台だが、25府県が1台のみ。山形、茨城、新潟、鳥取、山口、徳島、高知、鹿児島、沖縄の9県はゼロだ。通学路などの安全を守る切り札として登場し、おもに登下校の小学生とともにテレビ・新聞で度々報道されてきたわりには、なーんか鈍いような気がする。なぜ?

可搬式は、以下の2種が競合する形になっている。

 ・日本のオービスの老舗、東京航空計器の「LSM-300」
 ・スウェーデンの世界的企業、センシスの「MSSS」


●警察庁のWebサイトより。左側がセンシス(Sensys Gatso Group)のMSSS。右側が東京航空計器のLSM-300。「通学路の安全を守る切り札が登場」などと報道されるとき、その画像・映像はこれまでほとんどすべてLSM-300だった

私がここまで報道や行政文書をウオッチングしてきたところによれば、ほぼすべてLSM-300のようだ。なぜたった60台なのか。じつはLSM-300はぶっちゃけ使い物にならないのに警察庁内の一派が“無理推し”をした、多くの地方警察は嫌々ながら、MSSSではなくLSM-300を購入した、またはどっちも購入しなかった、そういうことかとマニアな私は見ている。

■1週間に2回使って、1回当たり0.7件という取り締まり件数は少なすぎる?

次に、そんな可搬式オービスによる取り締まり件数である!


●「可搬式速度違反自動取締装置による取締り件数(令和元年中)」。こっちは2019年1月1日~12月31日のデータだ。一般犯罪の認知件数とか、検察庁による起訴・不起訴の人員とか、そういうのは年度ではなく歴年のデータを通常は集計する

こっちは、何年も前からの累計ではなく、2019年の1年間のデータだ。1年間に5069件、1台当たり約73件、お~!と言いたいところだがちょっと待て。1年は365日、52週、1週間に2回取り締まりをやるとすれば、1回当たり0.7件でしかない。もちろん、2019年12月に配備されたものもあるだろう。けど2016年からのものもある。ひっくるめて、少なすぎない? 速度取り締まりに従事したことのある警察官諸氏は、あまりの少なさに驚き呆れるんじゃないか。

■福岡だけが異常に多い取り締まり件数。これは誤記か?

そんななかで不可解な数字がある。福岡だ。整備数が2台で1566件。突出している。整備数が5台の東京、愛知と比べるとこうだ。

 東京  5台  58件
 愛知  5台  572件
 福岡  2台  1566件
※左から、整備数、取り締まり件数

絶対おかしい。何かあるはずだ。あるマニア氏は「誤記(誤計上)」ではないかという。本当は156件だったところ、「6」を1文字誤って加えたんじゃないかと。なるほど。

誤記ではないかと私は福岡県警へ電話してみた。「警察庁のデータだから警察庁に聞いてください」とのことだった。うーん。警察庁へ電話してみた。「都道府県警察から計上されたデータを集計しているだけ」とのことだった。うーん。

じつはもしかしたら、という話は非常にマニアックでややこしくなる。またの機会に。今回はとりあえず、初めて開示された可搬式オービスの整備数と取り締まり件数、そのばらつきぶりをご堪能いただければ。私なんかこれを酒肴(つまみ)に酎ハイを6杯は飲めますよ(笑)。

■ついに始まるかセンシスの台頭。その先には…

おっと、このことは言っておかねばならない。4月12日、朝日新聞が「神出鬼没の可搬式オービス 速度違反どこでも取り締まり」と報じた(https://www.asahi.com/articles/ASN4B421GN49UTIL05Q.html?iref=pc_ss_date)

記事の冒頭にこうある。

道幅の狭い「生活道路」での交通事故を防ぐため、警察庁は今年度、どこでも速度違反の取り締まりができる機器「可搬式オービス」を全国に集中配備することを決めた。昨年度の計60台から計103台まで増やし、未配備の県をなくす。

2019年度末までに60台だった可搬式を、2020年の1年間で一気に43台も増やすのだという。その43台はすべてセンシスのMSSSだろうと私は推測している

「未配備の県をなくす」が成就したころ、警察庁はこう言いだすのだろう。

可搬式オービスによる通学路等の速度抑止に大きな成果を上げています。しかし、違反者を出頭させて取り締まるという従来のやり方では警察の負担が大きい上、新型コロナの感染リスクもあります。そこで、駐車取り締まりと同様、違反者の持ち主の責任を問うことにしたい」

可搬式オービスに測定・撮影されたら、ナンバーから判明した違反車両の持ち主に対し、放置違反金ならぬ“速度違反金”の納付書が届く。金融機関やコンビニに違反金を納付すれば一件落着。なるほど、新型コロナの感染リスクはほぼゼロだ。今がチャンスといえる。

ところで、じつは私はセンシスの固定式オービス、SWSSの測定値を否認する刑事裁判を追っかけて傍聴したことがある。可搬式のMSSSと心臓部は同じだそうだ。従来の日本のオービスとは比べものにならない高性能ぶりに、私は腰抜かしたね。これまで当たり前に速度違反をやっていたドライバー諸氏には受難の時代がきそうだ。ご注意を。

〈文=今井亮一〉

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