本日(6月5日)昇ってくるお月さまは、明日6月6日(土)の明け方に満月の瞬間を迎える。
というわけで、クルマの名前で「月」をテーマにしたものがないかと調べてみると、下記2台が上がった。
・トヨタ ソルーナ
・スズキ カルタス クレセント
どういったクルマだったのか。それぞれ解説してみよう。
あまり馴染みのない車名ではあるが、それもそのはず。SOLUNA(ソルーナ)は、1997(平成9)年にタイでアジア専用乗用車として発売されたモデル。トヨタ・モーター・タイランド(TMT)と共同開発され、ユーザーの要望を幅広く設計・デザインに取り入れた。中間所得層が購入可能な価格設定とし、発売と同時に好評。しかし、直後の通貨危機とその後の不況の影響で、アジア向け乗用車としての先兵役を十分に果たせないまま、モデルライフ終了を余儀なくされた(2002年)。2002年にはソルーナの後継車種としてヴィオスが誕生している。
ソルーナの車名の由来に関する確かな文献は未確認だが、ヒントはラテン語の「Sol(太陽)」と「Luna(月)」だ。この2つをかけ合わせて、「SOLUNA」と名付けられたもよう。ちなみにソルーナをネットで検索すると、「ソルーナ化粧品」がヒット。そのHPには、「『ソルーナ』は、ラテン語で太陽を意味するSolと、月を意味するLunaから名付けられています」とある。
なんと美しい名前だろうか。ソルーナとの車名は現在消えてしまったが、ヴィオスとして現在もアジア地域で販売中。3代目を迎えている。ちなみに2代目ヴィオス、日本ではベルタの名前で2005年から2012年まで販売されていた。
1995年1月にデビューしたカルタス クレセント。そもそもカルタスは、1983年にデビューした小型乗用車だ。開発こそスズキによるものだが、デザインに関しては北米で販売するGMの意見が色濃く反映されたクルマだった。日本での販売はイマイチ。
そこでスズキが決断したのは、「日本には日本のモデルを!」だった。スズキは日本およびアジア、欧州向けのニューモデルを別に開発。そこに付けられたのが「クレセント」で、英語で「三日月」という意味。当時の広報資料には、こう記述がある。
「カルタス・クレセント」は、カルタスより1ランク上の、パーソナルにもファミリーにも使える新型車として誕生いたしました。(中略)「クレセント」とは、英語で「これから満ちてゆく月(三日月)の意味。この車名のように、これから満月に向けてさらにその価値を高められるよう、今後もたゆまぬ努力を重ねてゆく決意です」
販売上の理由でカルタスの名前は残っており、また従来のカルタスも一定期間併売された。だが、GMデザインではないスズキ独自のクルマという意味で、これはもう従来のカルタスとは別車種だったのだ。
カルタス クレセントは、1.5Lの4ドアセダンと3ドアハッチバック、それに1.3Lの3ドアハッチバックをラインアップした。エンジンはいずれもオールアルミ製。左右のAピラーをダッシュボード下でつなぐパイプを新設したのをはじめ、高張力鋼板の多様、補強材の効果的な配置などにより従来のカルタスより曲がり、ねじれともに1.4〜1.5倍の剛性を確保。4ドア、3ドアともにS、S-4グレードには運転席&助手席エアバッグが標準装備と安全性も高かった。
翌96年2月にはワゴンボディの「カルタス クレセント ワゴン」を追加。当時、カローラワゴン、カリブ、インプレッサ、リベロなどなど、1.6〜1.8Lのツーリングワゴンが鎬を削っていた時代。この市場に突然スズキが殴り込みをかけた。
スズキ初となるステーションワゴン。トップグレードのGTには135馬力の新開発1.8L直4DOHCを搭載。しかも電子制御サスペンションを採用、荷室容量は通常時で379Lを確保するなど、ライバルを徹底的に研究した魅力的なモデルであった。しかも、やはりスズキらしい価格設定で、GTですら160万円を切る価格設定。1.6L、1.5Lモデルも用意し、いずれもライバル車より安かった。
だがこのクレセントという名前も、長くは続かなかった。1998年5月のマイナーチェンジを機に、カルタス クレセントはカルタスに名称を統合。クレセントが使われたのは、わずか3年のみ。なんとも儚い名前であった。
〈文=driver@web編集部〉
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