2020/05/11 ニュース

北米限定なんてズルい!日本で買えないSシリーズ、S209に乗ってみた

あのS208を超えるハイパフォーマンス

昨年末に登場したアメリカのスバルファン待望の「S209」。ついに試乗する機会がやってきた。これまで北米市場で販売されたことのない、STI(スバルテクニカインターナショナル)ファクトリーで1日2台が手作業に近い形で組み上げられるSTI最高峰のSシリーズ。そのS209は、米国限定販売209台のスペシャルモデルだ。もちろん、2年前に国内で限定販売されたS208を上まわるパフォーマンスを発揮するというのだから、否が応でもでも期待は高まってしまう。


北米専用モデルということで、大きく異なるのは搭載されるエンジンの排気量だ。国内仕様のSシリーズに搭載されてきた2LターボのEJ20エンジンではなく、北米のWRX STIと同じ2.5LターボのEJ25をベースにSTIがチューニングを施している。8000回転まで回る高回転型の2Lターボの魅力は味わえないものの、高速サーキットはもちろんのことフリーウェイを含むアメリカ一般道での走行も楽しめるよう、大排気量エンジンを選んだのだと言う。


エアクリーナーのサイズからエアーインテークの形状、エクゾーストに至るまですべてのパーツをイチから見直したエンジンは、大型タービンとの組み合わせでベースのWRX STIの310hpから31hpアップ。歴代スバル最強パワーの341hp(345.7ps)を発揮する。パワーアップに合わせた足まわり、そしてよりアグレッシブな風貌のエクステリアも特徴だ。



●エンジンルーム内にシリアルナンバーが備わる(この車両は取材車両のため000/000)

その風情は、もはやレーシングカーの勢い

エクステリアはS209専用に約40mm広げられた一体成型のワイドフェンダーに、見るからにダウンフォースを稼ぎそうなカナードをつけたバンパーと角度調整可能なリヤウイング。軽量化と低重心化に寄与するカーボンルーフなどなど、ノーマルのWRX STIとは一線を画す迫力満点の出立ちだ。




BBSの19インチホイールに履くタイヤはS209専用に開発されたダンロップSPスポーツMAXX GT600A。サイズはS208よりも幅広の265/35R19だ。足まわりは前後のアジャスタブルストラットタワーバーやドロースティフナー(新たにリヤにも)でガッチリ固められ、ビルシュタインダンパーとコイルスプリングも専用のチューニングが加えられている。また、ブレンボのブレーキ システムには制動力を高めた高性能パッドを採用しているとのことだ。


異次元の走り。スビー憧れの的!

胸躍らせて車内に乗り込んだ。エンジンを掛けると低音のボクサーサウンドが響き渡る。シフトはカチッと固めの手応えだ。SIドライブモードをノーマルにして走り出すと、いたってマイルドなアクセルレスポンス。じつのところノーマルのWRX STIとの違いもほとんど感じられなかった。しかし、ここからがまさにS209の真骨頂だ。スポーツモードに切り替えてアクセルを踏んだ途端にパワーが湧き上がり、中速域からレッドゾーンの6600回転まで一気に背中を押されるようなパワフルな加速を見せつける。ちなみに高回転でのエクゾーストノートは思ったほど高くない。




しっかり固められた足まわりとグリップの効いたワイドタイヤ。そして少し重めにセットされたステアリングで路面をしっかりつかんで踏ん張っている感覚とともに、低速でも高速でも踏み初めから吸い付くような強力なブレーキのフィール。これはこれまでのWRX STIでは味わったことのない高次元、異次元のものだ。


●冷却用のインタークーラーウオータースプレイも装備。パドルシフト風に、ステアリングにスイッチを配置している

WRX STIよりも2万ドル以上も高い$6万4880ドル(約650万円。1ドル107円換算)というプライスタグは、北米スバルで最も高価なものだ。しかし、単なるWRX STIの最速バージョンやサーキット走行に特化したガチガチの乗り味でもなく、むしろデイリードライブやロングドライブもマルチに楽しめる味付けと装備をも備えている。GTカーの雰囲気も十分あると思う。モデル名にちなんだ限定209台という希少価値もあって、アメリカのスビー(スバリスト)が憧れてやまない1台になっているのだ。

〈文&写真=ケニー中嶋〉

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