2019/08/16 コラム

【車名の由来を知りたいVol.002】ワゴンRは当初、「ZIP」と呼ばれていた!?

名前のセンスが光るワゴンであ〜る!


●前席の着座位置を高めて見晴らしがよくなり、乗降性も向上。居住性や機能性など実利を追求する一方で、他車との部品共通化率7割にもこだわるなどメリハリを効かせて開発した点もポイント
インパクトは絶大。今までありそうでなかった名前、ワゴンR。爆発的に売れて「軽ワゴン」というカテゴリー(他社ではハイトワゴンと呼ぶことが多い)を作ってしまったことは、あまりにも有名だ。ワゴンRはもともと1987年からデザイン先行で企画が進められていた。当初は流行の兆しがあったミニバンを意識したもので、物品税廃止や軽の新規格対応で開発が一時ストップ。女性を意識した軽乗用車は多かったが、男性向けの車は少なかった。そこで、男性ユーザーを意識し、日常の道具として使ってもらえるクルマとしてデザインが検討された。男性4人が快適に乗るために、背が高いパッケージングとし、生活のなかで”道具”として使えるクルマとして新型車の原型が出来上がった。充実した箱をイメージして外観を作り込み、屋根の高さはスタイリッシュに見えるプロポーション(ルーフレールなしで1640mm)に決定。右1ドア:左2ドアは1台で2種類のボディが楽しめる点と車道側への飛び出し防止という実利を兼ねたものだ。
●1996年春に特別仕様車として発売された5ドアのFXリミテッドは8月に継続グレードに格上げ。同時に5ドア車が拡充された。右側のドアは2枚に増えている
開発段階では別の車名で呼ばれていた。2007年3月29日付の中日新聞には、鈴木 修会長が当時を振り返り、「『ジップ』の車名で社長決裁も済んでいた。戸田さんが(社長だった)私にあまりよくないというので変更した。『ワゴンもある』ということで、ワゴンRに決まった」と書かれている。ZIPとは英語で活力や活気、勢いよく進むといったアクティブで活発なイメージの言葉だが、「何もない」などのネガティブな意味合いもある。そのため、この車名を避けたようだ。そこで出てきたのが「ワゴンR」という車名だった。鈴木 修社長(当時)は、一目新型車を見て「これはワゴンだ」と発言したことが決め手となって名前が決まったという。ワゴンは、後部に大きな荷室を設けたステーションワゴンから取り、Rは英語で「革新・画期的」のRevolution(レボリューション)と「くつろぎ・気晴らし」を意味するRelaxation(リラクゼーション)の頭文字から取った。「軽自動車の新しい流れを作る新カテゴリーのクルマ」で「生活にゆとりを与えるクルマ」という2つの意味を込めている。この命名のとおり、ワゴンRは新しいカテゴリーを創出し、気軽に使える道具として軽乗用車自体が広く市民権を得る契機になった。そしてこのクルマが持つ”クラスレス”という特質こそが、軽は最下位にあるべしというヒエラルキーを打ち破った。当時、輸入車が隣に並んでもまったく恥ずかしくないという声も聞かれた。今から考えても、革命という意味合いは、このクルマのすべてを体現しているところがスゴい。もう一つ、人気の秘密は独特な響きの車名にもあったと思う。ヒエラルキーを感じさせないから男性にも親しめる。わかりやすくていい名前、ネーミングのセンスは抜群だ。「車名博物館PART 1」より(吉川雅幸著)

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