2024/06/26 コラム

オービスは何キロオーバーから取り締まりの対象になるのか?

写真は可搬式オービス「LSM-300」

固定式のオービスは「赤切符」の速度違反を取り締まる。ここまでは多くの方がご存知だろう。赤切符の速度違反とはこうだ。

一般道:超過速度が30キロ以上
高速道:超過速度が40キロ以上(自動車専用道路を含む。以下同)

なぜ赤切符限定なのか。1970年代の後半にオービスが登場して間もなく、タクシーやトラックなど職業運転手の組合が「オービス裁判闘争」を展開した。1980年ごろ、その裁判の判決が次々に出た。すべて有罪だった。

だが、争点のひとつだった肖像権、プライバシー権の問題について、要するに「制限速度を多少超えた程度での写真撮影は相当でない」という趣旨の判断が示された。

加えて、オービスによる取り締まりは手間がかかる。撮影した写真のナンバープレートから違反車両の持ち主を調べて呼び出し状を郵送し、違反者の出頭を待って取り締まる。ずるずる出頭しない者もいる。ネットのデマを真に受け、「クルマは知人に貸していた。誰に貸したか言わない。捜査には協力しない」などと宣言する者もいたりする。

過去の裁判例、プラス、やたら撮影しても後の処理に手間がかかるという事情、そのへんからオービスは赤切符限定の運用になっているようだ。

たとえば2023年の速度取り締まりは88万8500件。うち固定式オービスによる撮影枚数(取り締まり件数と同じだという)は2万8549枚にすぎない。

ならば、オービスの設置場所を、一般道で超過30キロ、高速道で超過40キロを超えたら、ソク捕まるのか、今回はその話をしよう。

■赤切符ぴたりの取り締まりがない理由

私は以前、全国の運転者諸氏からご質問、ご相談をいただいていた。数年間にわたり、総数で約4200件。うち速度違反は1400件ほどになる。オービスによる取り締まりで、一般道で超過30キロぴたり、高速道で超過40キロぴたり、つまり赤切符ぴたりのケースは見事に1件もない。

青切符と違って、赤切符だと反則金ではすまない。罰金刑の対象になる。場合によっては懲役刑だ。なにより、一発で免許停止処分の基準に達する。青か赤か、どえらい違いだ。違反者としては、赤切符ぴたりの測定値だと、こんな抗弁をしやすい。

「1キロ、いや0.1キロでも低ければ青切符だ。オービスにも誤差はあるだろ。納得できない!」

私は固定式オービスの否認裁判をさんざん傍聴してきた。メーカー社員(裁判所にとってはオービスの専門家)の証言をさんざん聞いてきた。現在ほぼ独占状態にあるメーカー、東京航空計器の社員は必ずこう証言する。

1、誤差はある。誤差はプラスマイナス2.5%。
2、そこでナマの測定値に0.975を掛け、かつ小数点以下を切り捨てる。
3、よって表示される測定値は、ゼロから、マイナス5%、さらにマイナス約1キロ、この範囲に必ず収まる。プラス誤差は絶対にない。

しかし警察官は、出頭してきた運転者にそんな説明をしないようだ。仮に説明しても、違反者は「0.1キロでも低ければ」と、なかなか引き下がらないことが予想される。それはめんどうだ。

そもそもオービスは、超過何キロ以上を撮影するか、警察のほうで設定できる。その設定速度を、運転者たちがあきらめやすいよう、赤切符ぴたりではなく、少し上の速度に設定しているのだろうと考えられる。

ドライバーWeb編集部

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