2024/03/07 新車

雪道なら「オールシーズンタイヤ」で大丈夫? いざというときの走り方

グッドイヤーのオールシーズンタイヤを試す

■規制によっては「チェーン」を履かせる必要がある

2024年は暖冬だったが、これが意外にやっかいだった。太平洋側に位置する東京は例年ほとんど積雪がないが、南岸低気圧が首都圏近くを通過するとやはり雪が降った。降雪量はそれほど多くはなかったが、首都高や幹線道路は一部通行止め。

突然の雪に備えるのはなかなか難しいが、四季を通じて安定した走りが可能なオールシーズンタイヤを装着していれば安心感は高まる。グッドイヤーのベクター4シーズンズGEN-3は、ネーミングのとおり四季を通して使えるプレミアムタイヤ。コンパクトカーから大型のSUV用まで豊富なラインアップがそろっているのも魅力で、スタッドレスからこの時期に履き替えるユーザーも多いという。今年のような冬の天候だとサマータイヤからスタッドレスに履き替えるタイミングを見極めるのが難しいが、ベクター4シーズンズGEN-3ならそうした心配がいらないのだ。


●トヨタ カムリ×グッドイヤー ベクター4シーズンズGEN-3(215/55R17)

オールシーズンタイヤの認知度はかなり高まったが、疑問を持っているユーザーもいるので少し解説したい。

冬季、高速道路などでは降雪時に冬用タイヤやチェーンなどの滑り止めを求められることがある。スタッドレスタイヤでなければ走行できないとカン違いしているユーザーもいるようだが、オールシーズンタイヤでもサイドウォールにM+S(マッド&スノー)表記やヨーロッパで冬用タイヤとして認められる三角の山脈のなか雪の結晶が書かれたスノーフレークマークがあれば、スタッドレスと同じ扱い。高速道路のSA・PA、出口付近で行われる冬用タイヤチェックでもこのマークがあれば通行可能だ。

もちろんベクター4シーズンズGEN-3には両方の表記がある。ただ、チェーン規制が発令された場合は、スタッドレスタイヤであってもチェーンの装着が求められ、オールシーズンタイヤも同様にチェーンを装着することになる。


●左がスノーフレークマーク、右が「M+S」マーク

■「雨」に弱いオールシーズンタイヤ…でも「GEN-3」は

ベクター4シーズンズGEN-3のスノーグリップテクノロジーは、雪をしっかりつかむ特徴的なトレッドパターンにある。トレッド中央部から流れるように両側に向かう大型のサイプはベクターシリーズの特徴。他社のオールシーズンタイヤにも大きな影響を与えている。


●「V字」のパターンが特徴

特にヨーロッパではこのデザインがオールシーズンタイヤであるという認識が高く、似たパターンを採用するタイヤも多いという。この大きなサイプで雪をしっかりとつかんでグリップを高め、接地後は雪をしっかりと排出。特に圧雪路で高いグリップ力を実現している。

スタッドレスやオールシーズンタイヤに共通するのは冠水路などでのブレーキ性能。柔らかいブロックが制動によって倒れ込むことで、トレッドの水の逃げ場が減少して制動距離が長くなる点だ。つまり、ウエットグリップが苦手なわけだ。その点、グッドイヤーは独自のアクアコントロールテクノロジーにより制動時にもブロックの倒れ込みを少なくすると同時に、摩耗が進むと溝が広がる特殊構造で排水性を確保。高いウエット性能を長く維持できるが自慢だ。夏のゲリラ豪雨などを考えると、オールシーズンタイヤにおいても排水性能は見逃せない重要な要素だ。

今回試乗したのはベクター4シーズンズGEN-3を装着したカムリ。FF駆動のハイブリッドセダンで、高速道路から雪山まで走ってみた。

■「GEN-3」は乗り心地に優れている

高速道路での第一印象はプレミアムタイヤらしい優れた乗り心地のよさだ。タイヤのトレッド面の当たりがソフトで、ちょっとした段差ならタイヤで吸収してしまうような感じで、突き上げ感が小さい。これまでもコンパクトカーなどでベクター4シーズンズGEN-3を装着したモデルに試乗したことがあるが、共通するのは乗り心地がいいこと。



タイヤサイズが変わるとケース剛性が違って乗り心地に大きな変化をもたらすことがあるが、このタイヤはそうした傾向がない。パターンノイズも抑えられているため、プレミアムタイヤらしく高級セダンからSUVまで相性がよさそうな印象だ。

ドライビングにこだわりがあるユーザーにもベクター4シーズンズGEN-3はオススメだ。ドライ路面でも、サマータイヤに近いハンドリングが得られるからだ。スノー性能を重視したタイヤはどうしてもドライハンドリングが低下傾向だが、ベクター4シーズンズGEN-3は高剛性トレッドによってタイヤの変形を低減、高いハンドリング性能を実現している。ステアリングの切り出しからスムーズで応答遅れが少ないのだ。

もちろんスポーツタイヤのようなキレ味はないが、オールシーズンタイヤであることを知らずに試乗すると、「乗り心地のいいサマータイヤかな?」と思えるほどほどすっきりしたハンドリングだ。



これは圧雪路でも似た傾向。ステアリングを切ると自然な感じで向きを変え、応答遅れがない。じつはこれが大切なポイントで、スタッドレスタイヤでも同様だが、ステアリングレスポンスが遅いとよりステアリングをより切り込む傾向になるため旋回力を十分に発揮できないことがある。操舵どおりに反応するベクター4シーズンズGEN-3は安心感が高く、コーナーを気持ちよく走り抜けることができた。

■いざ「氷上」に出くわしたらどうする?

今回は残念ながらアイスバーンを走る機会はえられなかった。だが以前、氷上を走ったフィーリングでは意外なほどグリップするという印象。もちろんグッドイヤーではアイス路面ではスタッドレスタイヤの使用をオススメしているが、ベクター4シーズンズGEN-3でも速度を抑えればグリップは何とか確保できる。

圧雪路からアイスバーンに変化した路面での走行のコツは、左右タイヤの片方だけでも圧雪に乗っていれば、意外なほどグリップしてコーナーを曲がってくれる。もっと言えば、トレッドの半分でも圧雪をつかんでいればグリップしてくれるから、路面を見極めて進路を選ぶことが重要だ。



地域によっては、もうすぐスタッドレスからサマータイヤに履き替える時期。積雪が少ない地域では思い切ってオールシーズンタイヤに履き替えてみることをオススメしたい。なにしろ季節によってタイヤを交換する手間がいらないし、スタッドレスタイヤの保管場所の確保もしなくていいからだ。

〈文=丸山 誠 写真=佐藤正巳〉

■問い合わせ先
ベクター4シーズンズGEN-3公式ページ

ドライバーWeb編集部

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