2023/11/28 イベント

ルノー・スポールさよならイベント「R.S.ULTIMATE DAY」体感! 開発陣にシビックタイプRのこともちょっと聞きました

これでルノー・スポールも最後!

「今度の土曜日ヒマですか?」と『driver』編集部のバネこと赤羽根氏。
「ヒマ、ヒマ。何の撮影?」
「いや、一緒にレースに出てほしいんです」
「!?」

サーキット走行のためにグラビアカメラマンに声をかけるとは『driver』の人材払底もはなはだしい…などと不遜にも思いながら参加させてもらったのは、千葉県の袖ケ浦フォレストレースウェイで開催された「ルノー・スポール ULTIMATE DAY」。その名の通りルノー・スポールのファンの集いで、同時にルノーのモータースポーツ活動やスペシャルモデルの開発を担ってきた同部門への「さよならイベント」でもある。



実はルノー・スポールは、本国では2021年にアルピーヌカーズに吸収され消滅している。日本市場では世界的にも異例なほどルノー・スポールの人気が高かったのでR.S.ブランドが残っていたのだが、「そろそろけじめを」という経営判断が下されたのだろう。

イベントでは、各種R.S.モデルの展示、フランスから来日した開発者、テストドライバーへのQAほか、武闘派(!?)ブランドらしく、サーキット走行、プロフェッショナルドライバーによる同乗走行なども準備された。「メディア対抗」と称して実施される、二人一組でエントリーするホームストレートを使ったジムカーナや本コースのタイムトライアルもその一環だ。


●パレードラン

■開発陣が語る「最後のメガーヌR.S.」

今回、日本にいらっしゃったのは、シャシー開発責任者のフィリップ・メリメ氏と、開発ドライバーのロラン・ウルゴン氏。ルノー・スポールですでに20年を過ごしているというメリメさんは、同部門に来る前は、小型トラックを開発していた異例の経歴の持ち主。


●左がフィリップ・メリメ氏、右がロラン・ウルゴン氏

「もちろん両者はまるで違う分野ですが、共通点もあります。それは、どちらも要求がハッキリしているということです」

なるほど。トラックはプロフェッショナルユースだし、R.S.が手がけるクルマは、極めて趣味性が高いモデルに限られる。日本市場でルノー・スポールの人気が高いのは、シェアが限られる輸入車市場のさらにマイナーブランド(失礼!)だから、ことさら高い個性が求められるからだろう・・と考えていると、それを見透かしたように、

「日本のユーザーも好みがハッキリしていますね。なぜなら、ルノー・スポールとカングーが人気だと言うのですから!」とメリメさん。おっしゃる通りです。

本イベントの主役のひとり(1台)が、ルノー・スポールの手になる最後の作品、メガーヌ R.S.ウルティムだ。300馬力を誇る1.8リッターターボを搭載。コーナリング性能を引き上げるトルセンLSDを備え、ブレーキを強化。もちろん前輪にプラスして後輪も補助的に操舵する「4コントロール」システムを装備する。



R.S.ウルティムは、メガーヌ中最もスポーティな「R.S.トロフィー」をベースに、通常より1本あたり2kgも軽い19インチホイール「Fuji Light」を与えられ、各種専用パーツやデカールでドレスアップされたモデルである。ルノー・スポール創設の年にちなんで、世界中で1976台が限定販売される。日本での価格は659万円。価格差なしで6速MTと6速AT(EDC)から選択できる。



同車の開発にも携わったテストドライバーのウルゴンさんが語る。

「ウルティムには、持てる技術の全てを投入しました。シャシー開発においても同様です」

ルノー・スポールのモデルというと、ニュルブルクリンクやサーキットでのタイムアタックが注目されるが、それ以上に耐久性に留意しているという。1台につきニュルで1000km走り、細かくブレーキ、サスペンション、タイヤのチェックを行う。耐久テストには1週間をかける。

メリメさんが説明を加えた。

「ニュルブルクリンクは難コースであるだけでなく、ヨーロッパにある路面の80%を再現できることを忘れてはいけません。そのうえ多くのサプライヤーが周りにいるのです」

同地がタイムアタックのベンチマークであるだけでなく、開発を加速させるのにも最適な場所だということだ。

「われわれは2006年からニュルブルクリンクを使い始めました。以来、頻繁に同地に通うことで、ルノー・スポール自体の認知度が上がりました」とウルゴンさん。R.S.ブランドのクルマを作るにあたっては、スポーツ性、耐久性、そしてもうひとつキーがある。

「パフォーマンスと乗り心地のバランスを取ることが重要です」

開発にあたっては公道重視。30%をクローズドコースでのテストに費やすとすると、70%は一般の道でのテストにあてる。日常性は大事なファクターなのだ。日本でも鈴鹿、大阪、京都、そして箱根ターンパイクを走って熟成を進めた。

「クルマの開発は、一旦終わっても毎回納得しません。『もっとよくできるのではないか』と、つい新しい技術を探してしまうのです」とテストドライバーは笑う。

■シビックタイプRの印象は?

こっそりライバルと目されるホンダ・シビック タイプRについて尋ねると

「トラクションの良さに驚きました。特にLSDの利きが印象的でした」
「では、メガーヌIVのアドバンテージは何ですか?」
「4コントロールです!」

横でハナシを聞いていたメリメさんが、

「リリース当初こそ『不自然だ』『人工的だ』との声がありましたが、次第に改善されて、今はそのようなことはありません」と胸を張る。

そんな素晴らしいメガーヌ R.S.ウルティムを使ってのメディア対抗ジムカーナ&タイムアタック。前者では、各媒体の運転ジマンが積極的に攻めてパイロンタッチ(5秒プラスのペナルティ)するなか、地道に走ったバネ氏の作戦が功を奏して、なんと9チーム中3位につける望外の成績。しかし続く本コースのタイムアタックでは「編集+助っ人カメラマン」ペアの実力のなさが露呈して、結局、総合7位という煮え切らない結果で終わった。





さて、東洋の島国でも惜しまれつつ役割を終えたルノー・スポール。今後は、本拠地デュエップで作られるアルピーヌA110に加え、電動モデルの開発に勤しむことになる。最近では、電動SUVの「クロスオーバーGT」がスクープされ、またかつての名車「ルノー5(サンク)」をモチーフにした電動化コンセプトも話題になった。今後に期待したい。


●ルノー5(サンク)をモチーフにしたEVプロトタイプ

ちなみに、ルノー・スポールの”白鳥の歌”となったメガーヌ R.S.ウルティムは、まだ購入可能だ。特に「純」内燃機関モデルのMTを求める向きは、ルノーの販売店へお急ぎください!
 
■オーナーに聞いた「なぜルノーだったの?」

岡谷航平さん、岡谷明日香さん
メガーヌR.S.(2012年型)



「以前はスズキ・スイフトスポーツのMT車に乗っていたのですが、メガーヌ乗りの友人の影響で、このクルマを購入しました。デザインがいいし、3ドアのスポーツハッチって意外にないんですよね。片道40kmの通勤に使っていますが、乗っている時間が幸せ。最高です!」

以前付いていたナンバーから、どうやら雑誌などのメディア向けに用意された広報車らしい岡谷さんのメガーヌ ルノー・スポール。誌面で、まさに同じ個体を目にすることがあるという。オドメーターは既に10万kmを超えているが、走行に支障をきたすようなトラブルが起きたことはない。



ちなみに奥様(岡谷明日香さん)も航平さんに刺激されてトゥインゴを自分の愛車にしている。「一目ぼれして即決しました。小回りがきいて乗りやすい」とのこと。素敵なルノーカップル。どうぞ、お幸せに。

※※※

○佐々木健太さん、佐々木恵美子さん
ルーテシアGT(2017年型)



かつては日産スカイラインGT-R(R32)にも乗っていたという佐々木さん。仕事関係にクルマ好きな人が多い関係で、ルーテシアR.S.に試乗して感心した。

「走りが良くて、でもちょっと(値段が)お高くて」、一段おとなしいルーテシアGTを購入。今度は乗り心地に感心したという。

「足まわりが絶妙ですね。硬すぎず、柔らかすぎず。それと、RSと同じシートが与えられているもいい」

「シートは本当にいいですね」と、奥様の恵美子さんも太鼓判をおす。「安定していて疲れません」。

思い出のドライブは、瀬戸内海の島巡り。景色のキレイさが今でも忘れらない。

「ただエアコンが不調で、修理に15万円ほどかかると言われているんです」と、健太さんは表情を曇らせる。

「メガーヌもいいのですが、駐車場が機械式なので、サイズ的に入らないんですよねぇ」



さて、どうなることやら。

※※※

○渋谷太一さん
アルピーヌA110 1300VC(1974年型)



この日、サーキット走行にも参加して快音を響かせていたオレンジ色のアルピーヌ。オリジナルA110のオーナーの方に声をかけてみました。

「今から19年前に手に入れました。輸入車の旧車に強いクルマ屋さんがいて見つけてくれたんです。A110に関しては『カタチから』入りました。ラリーでの活躍などは後から知りました」

渋谷さんのA110は、1.3リッターの比較的おとなしいモデル。OHVユニットのヘッドはターンフローだ。



「見た目以上にしっかりしていて、高速道路での100km/h巡航も余裕。パワーも(大排気量車のように)『ガーン!』とはいきませんが、低回転域からトルクが太いので実用上問題ありません」

なるほど。

「ヒラリ、ヒラリと軽く走るかというと、そうではない。意外とどっしりしています」

リアエンジン車ですからね。実は筆者もA110を所有していたことがあるので、渋谷さんのハナシに納得&懐かしく感じていました。ヤフオク(Yahooオークション)でパーツを探すこともあるという渋谷さん。最近では、自分のクルマの年式にあったmomoのステアリングホイールを落札して、取り付けている。旧車に長く乗るコツをうかがうと、

「コツというより、クルマが魅力的なことじゃないですかね。乗る度に新鮮なので、飽きが来ません」



まったくその通り! ぜひ大切に乗り続けてください。

〈文=ダン・アオキ 写真=山内潤也〉

ドライバーWeb編集部

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