2023/06/14 ニュース

メイドインジャパンの「FIA-F4」第2世代マシンは、何が変わった?|人とくるまのテクノロジー展|

人とくるまのテクノロジー展に展示されたFiA-F4マシン

公益社団法人 自動車技術会が主催する日本最大の自動車技術展「人とくるまのテクノロジー展2023 YOKOHAMA」。神奈川県横浜市のパシフィコ横浜で5月24~26日の3日間開催され、499社が出展。3日間の合計来場登録者数が6万3000人を超える盛況ぶりだった。



各社がCASEやカーボンニュートラルに関連する技術紹介に注力するなかで、1台のマシンと、そこに用いられている部品や技術をパネルで紹介していたのが、特定非営利法人 日本自動車レース工業会(JMIA)のブース。マシンの正体は2024年シーズンから導入されるFIAフォーミュラ4(FIA‐F4)規格の第2世代フォーミュラカーで、シャシーは東レ・カーボンマジック(TCM)、エンジンはトムスを公式サプライヤーとし、高品質のものづくりを次世代に継承していくのが狙いだ。



●エンジンや駆動系などマシンの担当パートごとにメーカーが記され、それぞれの企業の取り組みをパネルで紹介


●2024年からFIA-F4は第2世代に進化



FIA-F4、F1を頂点とするフォーミュラレースの入門カテゴリーとしてFIA(世界自動車連盟)により制定され、2014年にイタリアを皮切りに各国でシリーズがスタート。日本ではGTアソシエイションがFIA-F4のプロモーターとなり、2015年からスーパーGTのサポートレースとしてスタート。トップドライバーを目指す若手やハイアマチュアの活躍の場として、多くのエントラントを擁する国内屈指のシリーズに成長している。

JMIAは、日本の自動車レース産業をけん引してきた「日本コンストラクター・ユニオン」と「日本レーシングエンジン・ユニオン」を母体として創立されたNPO法人で、日本の自動車レース関連企業約60社が参画し活動している。活動の理念は「自動車レースは自動車開発技術の戦いである」ことを原点に、「技術とレース産業を育成することによって日本の自動車レースの発展振興を図る」こと。前述の第2世代フォーミュラカー「MCS4‐24/TOM’S」は加盟企業の協力で作られた国産化率95%の高耐久、高信頼性部品で構成される「日本のものづくり技術の集大成マシン」である。


●JMIAの会員一覧。TRD、ニスモ、無限のワークスチューニングに加えて、おなじみのアフターパーツブランドが名を連ねる


●高い精度が求められるエンジン部品はマシニング加工に特化した金属部品の切削加工を行うセキダイ工業が担当



自動車レース産業には、企画、デザイン、設計、試作、評価などの開発技術と、加工、部品、電機電子、材料、ソフトウェアなどの要素・基礎技術が必要とされる。日本のレース産業界にはこれらの優秀な技術力・製品を持つ企業が数多く存在するものの、その多くが中小企業で、ポテンシャルが十分に活用されていない。こうした現状を打開するためには企業とカスタマー・ユーザーとが密接に連携する必要があり、JMIAの取り組みを広く発信するためにFIA-F4マシンを出展した。



JMIAの加盟企業60社に名を連ねるのがスポーツシートでおなじみのブリッド。同社ではこれまでF4マシンに用いられるシート表皮の貼り付けを行ってきたが、第2世代のマシンではカーボンモノコックと合わせてTCMがシートの開発を行い、その仕様に合わせてシートの骨格となるシェルの製造を担う。

一般社団法人 日本自動車用品・部品アフターマーケット振興会(NAPAC)の会長でもあるブリッドの高瀬嶺生代表は「フォーミュラの分野は裾野が広く、安全性や技術力も高いレベルが求められる。素材や製法など新たなノウハウや技術を吸収することで、アフターマーケット向けのシートにもフィードバックしていきます」と抱負を語った。


●ドライバーシートはシェルの製造から表皮の貼り込みまで一貫してブリッドが行う。ドライバーの体型に合わせてひとつずつフルオーダーで製作される


●3D‐CADによって解析・設計されたボーンフレームとモノコックシェルで高い強度と剛性を実現した、ブリッドのスーパーセミバケットシート「GIASIII(ガイアスIII)」を展示。モータースポーツで培った知見をフィードバックしたフラッグシップモデルだ

JMIA会長の戸田幸男氏は「世界統一規格のFIA‐F4は厳しいコスト制約のなかで高品質・高精度のものづくりが求められます。1社だけでは難しい課題も加盟各社がノウハウや技術を持ち寄ればクリアできる。それを具現化したものがここにあるセカンドジェネレーションのFIA‐F4マシンになります。大幅に強化されたFIAの安全基準を満たし、ハイブリッドなど環境対応のパワーユニットにも対応した世界基準のフォーミュラカーを造れるという技術力はいろんなことに応用できる可能性を秘めています。例えば部品単体のレベルアップにとどまらず、ハコのレーシングカーや将来的には保安基準を満たした公道を走れるロードカーにもつなげていきたいですね」と展望を語った。


●JMIA会長で戸田レーシング代表取締役会長の戸田幸男氏


●戸田レーシングはギアボックスとダンパー、シフトシステムを担当


●第2世代マシンにはドライバーの頭部を保護するHALOが備わり、安全性が格段に向上



日本のものづくりに根差した開発・製造技術を存続させて創造性豊かなエンジニア、メカニック、ドライバーなどさまざまな分野の人材を養成し、日本のモータースポーツ産業の発展・振興を図ることを目的としたJMIAの取り組みに今後も注目していきたい。

<文と写真=湯目由明>

ドライバーWeb編集部

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