2023/01/24 カー用品

STIが目指す、「微小舵を極めれば運転がうまくなる」の理由とは!?|ワークスチューニング合同試乗会2022|

STI(スバルテクニカインターナショナル)では「クルマを運転するすべての人にもっと安全に、もっと楽しく、運転が上手くなることを体感してもらいたい」という思想の下に、各種パーツやコンプリートカーを開発している。


 
STIが考える運転がうまくなるクルマとは「ドライバーの意思が的確に伝わるクルマ」のことで、それを実現するためのアイテムの開発に取り組んできた。運転がうまくなるクルマづくりに不可欠なのが「微小舵を極める」こと。
 
微小舵を極めるためにSTIが着目したのは「内輪をうまく使う」ことで、ステアリングの切り始めからしっかりと穏やかに、かつ素早くクルマが反応するようになる。クルマの反応を車両全体に伝えるためのアイテムがフレキシブルパーツである。
 
操舵の瞬間からクルマ全体に動きを伝えるフレキシブルパーツを装着したフォレスターSTIスポーツと、ノーマル車との比較試乗を通して体感した。
 
ハンドリングの肝となるパーツは以下の3点。
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1:フレキシブルタワーバー

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2:床下のフレキシブルドロースティフナー

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3:リヤバンパーフェイス内のバンパービームに装着するフレキシブルドロースティフナーリヤ

これらのパーツを車種に合わせて最適セッティングすることでSTIが理想とするハンドリングを実現している。
 
STIの目指す「運転が上手くなるクルマ」とは
 
STI開発副本部長の高津益夫氏に開発のポイントを伺った。
 
「ポイントになるのは減衰力カーブの設定の仕方で『運転が上手くなるクルマ』を目指して開発しています。そこに深く関わるのが「微小操舵」、「微小舵角」におけるクルマの応答性。クルマが“ギューンと曲がる”ような、ゲインの高い領域を狙うのではなく、微小舵角におけるクルマの『わずかな応答遅れ』を徹底的に小さくすることに取り組んでいます。

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●STI 開発部本部長の高津益夫さん
 
どんなクルマでも操舵してから若干、ほんのわずかな微小舵角でも反応するまでに遅れが生じます。ドライバーは切り始めの応答でクルマがどのぐらい動くかというのを予測しますが、切り出したところで遅れが大きいと『まだ切り足りない』と思ってステアリングを切り増します。そうするとクルマ反応したときにはすでにステアリングを『切り過ぎている』状態になって、慌てて戻す。
 
戻すときもクルマの反応が遅れてくると『戻し過ぎ』てしまい、自分の意図を正確にクルマに伝えることが難しくなってしまう。
 
我々は『遅れを小さくする』というところを目指していて、そのポイントになるのが『内輪を使う』こと。これを念頭にフォレスターをはじめSTIスポーツのセッティングも行っているのですが、スバルの場合、フロントはマクファーソンストラット式のサスペンションを使っています。ハンドルを切る(転舵する)ときに回転軸=キングピンよりも少し外側にずれたタイヤにより転舵する仕組みです。
 
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キングピンにキャスターがついているので、内輪側の接地点は地面に潜り込む方向に動こうとします。外輪はその逆になります。その潜り込もうとする内輪側の動きを使ってしっかりと減衰力でタイヤを路面に接地させてあげると、スムーズにクルマを動かせます。
 
直進から切り出し始めたところで横Gが出る前のほんの一瞬なのですが、ここで内輪をうまく使うためのセッティングを施しています。
 
もちろん、その後から横Gが出てきて、荷重が外輪側にどんどん移ってきます。そのときにはスッと内輪側が伸びて接地荷重ができるだけ減りにくくなるように減衰力をセッティングします。そこに外向き荷重が入るとサスペンションが内輪に少しリバウンド(サスが縮む方向)し、ロールを抑える方向に動く“過渡ロール”が発生します。この過渡ロールを穏やかにするという意味でも内輪をしっかりと使っていくというところがものすごくメリットが大きいと考えています。
 
こうした一連のクルマの動き方に合わせて、減衰力の伸び/縮みなどのバランスを取りながらセッティングをしています。加えて、フォレスターSTIスポーツはフロントダンパーにSFRD(周波数応答型ダンパー)の機構が入っているので、細かい微振動についてはそれで吸収し、不快要素になる振動を伝えません。SFRDとフレキシブルパーツを組み合わせることで、スポーティな走りと路面からの細かい振動を上手にいなす上質な乗り心地を両立しました」。
 
フレキシブルパーツが雑味を抑える
 
フレキシブルパーツの目指しているところは基準車と同じで、ハンドルを切り始めのところ=微小舵角で、切ったハンドル角をしっかりとタイヤの転舵角に反映させなければならないが、車体にどこかで力が逃げてしまうところがあると、うまく内輪を使えなくなってしまう。力が逃げないように車体構造のちょっとした遊び要素があるところをフレキシルブパーツで「締める」というもの。

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操舵初期にしっかりと内輪を動かすことを狙っており、ここでフレキシブルパーツが効いてくる。
 
(ちなみに前述した遊びとは、モノコックボディを組み立てる際、鉄板をプレスして作られるパーツひとつひとつは剛性があるが、それらを溶接で組み立てていくと、ほんの少しうまく荷重が初期に伝わらない部分が出てくる。これは溶接の近傍で起こるフリクションや、プレスした鉄板のスプリングバック、残応力によるゆるみなどに起因するもの)
 
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そのほんのわずかなところをフレキシブルパーツでプリロードを掛けて、取り除くことで操舵とクルマの動きが一致するようになるのだ。
 

”意のままに操れる”がしっかりと体感できた
 
微小舵の動きを体感できるように、幅の狭いパイロンスラロームのコースが設けられていて、ここを30km/h程度で乗り比べることで応答性の違いを体感できるという。

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パイロンスラロームは「こんな場所をすり抜けられるの?」というぐらいの、思わず身構えする狭さだが、ノーマル車に比べてフレキシブルパーツ装着車は中立からほんのわずかに舵を当てたときの手応えが増し、意のままに動いてくれるので車両感覚がとてもつかみやすい。1815mmの全幅を感じさせず、楽にクリアできた。
 
通常の走行コース(パイロンを立てた特設コース)で速域を上げて深いコーナーを攻めてみると、確実に内輪側の足が伸びて粘っているのが分かる。ライントレース性が抜群によく、なかなか出口が現れないコーナーでもステアリングの「切り足し」がいらず、同じ舵角をキープしたままスムーズに旋回できた。
 


意のままに操れる楽しさ、操舵した通りに応答するクルマの動きと直進のしやすさに加えて、乗り心地のよさや路面からの小入力から大入力までしやなかに動くSFRD機構を備えたサスペンションのフラットライド感を体感できた。
 
〈文=湯目由明 写真=山内潤也〉

ドライバーWeb編集部

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