1シリーズの注目ポイントは駆動方式を変更したことだ。先代以前の1シリーズオーナーにとっては、そのドライビングフィールがどのように変化したのか興味津々だろう。結論からいうと、新型はやはりFFで先代のようなFRらしいすっきりした操縦性を獲得するまでには至っていない。
1シリーズファンは、やっぱりかと肩を落とすかもしれないが救いがある。FFであるのを実感する領域は、例えばフロントタイヤに荷重をかけながらタイトコーナーを抜けるといった、かなり攻め込んだ厳しい条件下でだ。こういった状況ではアンダーステアが発生し、アクセルを踏むことができなくなってしまうのだが、そこはあくまでも限られた状況。そこに到達するまでは、スムーズで自然なハンドリングを実現していて、むしろ好印象だ。
しかし先代のFRだったら限界領域でリヤを適度に流すことでバランスを取り、ステアリングの舵角を最小限にしながらコーナーを立ち上がることができた。こうした記憶があるとクルマを操る実感という意味では、FF化によってそれが希薄になったことは残念ながら事実だ。
だが、BMWはこうした限界領域の近くまではFFを感じさせないように努力している。それが日本のBMWとして初となるARBの搭載だ。ARBはタイヤのスリップをコントロールするシステムで、アンダーステアの発生を抑えるシステム。トラクションコントロールやDSC(ダイナミック・スタビリティ・コントロール=横滑り防止装置)と似たような機能だが、制御スピードが大きく違うらしい。
ARBはエンジン・コントロール・ユニットで直接スリップ状況を感知することが可能だという。トラクションが抜けたことを車輪のセンサーではなく、エンジン側で感知してDSCを経由せずに出力を絞る。以前より約3倍の速さでその信号を直接エンジンに伝達するため、FF特有のアンダーステアの発生を抑制しているというわけだ。
確かに限界領域手前まではFFを感じさせないスムーズな操舵フィールだが、ABRを装備しても、当然だがタイヤの能力を拡大することはできない。駆動輪が操舵も行うFFでは、どうしても限界があるわけだ。
だが、スポーティバージョンのM135i xドライブは、4WDのため操縦性がスポーティだ。このフィールが4WDのためか、新開発のトルセンLSDの効果かは判断できないが、コーナーの立ち上がりでリヤ駆動を感じることができる。FRに近いハンドリングを望むならxドライブを選ぶことをオススメする。
新型は新世代デザインのキドニーグリルを採用して上質感が増したし、内装も質感が高められていてプレミアムコンパクトとして魅力的だ。ドライバーズシートに座るとペダル適正な配置やステアリングの感触からBMWであることが伝わってくる。特にM135iのフロントシートはホールド感が高くスポーティな印象だ。
後席に座ると残念ながらFF化したメリットを感じない。FFになれば後席の足元スペースがもっと拡大すると勝手に想像していたせいか、先代とほとんど変わっていないように感じてしまう。スペックを見ると寸法的には拡大されているようだが、それを実感しにくい。
また、118iはロードノイズがキャビンに侵入しやすい点が気になる。特に路面がざらついた舗装路では「シャー」というノイズが耳障りだ。装備や仕立てはプレミアムコンパクトといえる出来栄えだが、静粛性という面ではライバルに見劣りしてしまう。
<文=丸山 誠 写真=山本佳吾>
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