2020/01/24 ニュース

【違反行為が合法に!?】トラックの荷台に人を乗せて走っても違反にならない場合とは

軽トラの荷台に園児と保育士を乗せて走行


なんと保育園児と保育士を軽トラックの荷台に乗せて走ったというニュースが流れた(徳島新聞)。報道によると私立保育所の男性理事長が運転する軽トラックが、荷台に園児などを乗せて公道を走行したというのだ。園児は5、6人いたようで、女性保育士1人も同乗していたらしい。

これらの行為は道路交通法違反であることはもちろん、安全面からも決して許されないことで、運転免許を持っていない人でも危険な行為だとわかるはずだ。例えば急ブレーキをかけただけで荷台に乗る園児は前方に飛び出しケガを負う恐れがあるし、軽トラックが横転するような事故が起きれば、荷台の人は路面などに叩きつけられ生命の危険があることが容易に想像できる。


●本来、軽トラックはこうやって使うもの


理事長は「低速で走行した」といっているようだが、仮に10km/h程度の極低速でも急ブレーキをかけると人は簡単に前方飛ぶ。筆者が所属する日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)が主催する安全運転イベントでは、シートベルトの効果を体験してもらうため10km/h程度で急ブレーキをかける同乗体験を行っている。体験者は、こんな低速でも自力で体を支えられないことに改めて驚くことが多い。通常のシートに着座していても体を支えられないのだから、トラックの荷台にはシートベルトがあるはずもなく、前出の行為は大変危険なことだ。

荷台に人を乗せて走っていい場合も!?


だがトラックの荷台に人を乗せて走行することが、すべて違反になるわけでもない。じつは道交法では、荷物の落下などを見張る目的で、座席がないトラックの荷台に乗車させてもいいことになっている。


古い時代に大切な荷物の落下や盗難などから守るために設けられた規定だが、現在も1人までは荷台に乗ることが許されているというわけ。ただし条件があり、荷台に乗っていいのは一般道。高速道路は違反となる。とはいえ、一般道であっても公道でなくても危険。荷台に人を乗せて走行するのは極力やめておいたほうがいい。

しかも複数人乗っても大丈夫!なときも


ここで、合法的に荷台に乗れるのは1人ということに疑問を持った人もいるはず
。お祭りなどで、トラックや軽トラックに太鼓などと一緒に数人乗せて、町内を練り歩くという風景を記憶している人もいるだろう。山車のようなトラックは歩く速度で数人を乗せて公道を走っている。


これは合法なのか? じつは上記のような場合は、走行する区域の警察署長の許可があれば荷台に数人の人を乗せて走行できるのだ。祭用車両の通行では前後の警備を地元の警察官が担当していることが多いが、違反を見逃しているわけではなく、警察署長の許可を得ているため合法となる。


本来は違反なのに、合法になる行為をもう一つ。駐車禁止区域でも警察署長の許可を受ければ駐車可能になる場合があるのだ。それは冠婚葬祭の場合。昔は自宅で結婚式や葬式をする家庭も多かったため、式のクルマや来場者のために駐車許可証を発行していた。こうした式では、地域によるが花輪などを家の近くの道路に並べることもあったため、道路使用許可を取ることもあった。これらの許可権限は警察署長が持っている。


もっとも現在は、こうした許可申請をしても周りへの影響が考慮されて許可が出されるとは限らないが…。いずれにせよ、警察署長はかなりの権限を持っているわけだ。


〈文=丸山 誠〉

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