タイヤは黒い。もう気づいたころからずっとそうだったわけで、何も疑問を持たないかもしれない。でも、ちゃんとした理由があるのだ。
タイヤが黒い理由は、ゴムのなかにカーボンブラックという素材を練り込んでいるからだ。カーボンブラックは塗料や黒インクにも採用されており、小さい粒がぶどうの房のように繋がった構造している。でも、なぜゴムの中に配合しなければならないのか? その理由は、ゴムだけでは強度が弱いから。カーボンブラックを加えることで、ゴムの強度を高めることができるのだ。
そもそも輪ゴムなどのゴム製品は、生ゴムに硫黄を混ぜて加熱することで強度を高めている(これを加硫と呼ぶ)。ゴムを加熱し、硫黄で分子同士を結合(橋かけ)すると、引っ張っても元に戻るといった性質が得られる。すなわち強くなる。
ただ、クルマはとても重い。そして速く走る。つまりタイヤには非常に大きな力が加わるため、加硫だけでは十分な強度が得られない。
そこでカーボンブラックの登場だ。カーボンブラックをゴムに配合すると、ゴムがカーボンブラックのまわりにまとわりつくようなカタチ、つまり大きな橋かけ(架橋点)になり、飛躍的に強度が向上。タイヤ用のゴムだと、カーボンブラック未配合のものと比べて20倍ほど強くなるというのだ。
カーボンブラックを配合する理由は、もうひとつある。タイヤに詳しい人ならご承知かもしれないが、最近はシリカと呼ばれる素材の配合比率も高くなっている。このシリカはホワイトカーボンとも呼ばれ、カーボンブラックと同じような構造を持ち、低転がりなタイヤ、すなわち燃費のいいタイヤを作る際に用いられるものだ。このシリカはゴムと直接結合しない水と油な存在だが、ゴム分子とシリカの間を取り持つシランカップリング剤を配合して結合する(素材開発の進化はすごい)。
カーボンブラックにも似ていて、低燃費にも効くし、そしてゴムとの結合も可能になったんだったら、カーボンブラックはヤメてシリカだけでもいいのでは?と思ったりもする。ただ、ご想像のとおりそこにはコスト面という高いハードルが立ちはだかるわけで(シランカップリング剤が高いらしい)、「じゃあ安くするためにカーボンブラックも入れている」というのも確かに理由のひとつ。だがそうではなく、ちゃんとした理由、それが「耐候性」だ。
カーボンブラックは紫外線を吸収するため、耐候性に優れた商品となる。タイヤは基本的にずっと紫外線にさらされる。耐候性が低いと、すぐに劣化してしまうわけだ。そんなカーボンブラックの性能が発見されたのは1900年代前半。およそ100年にもわたって、タイヤにはカーボンブラックが使われており、それをコスト面も含めて上まわる素材が登場していない、という意味でもある。
となると、「レース用のタイヤは黒くなくてもいいのでは?」と思ったりもするが、カーボンブラックのほうがグリップ性能が高くなるとのこと。最近のレース用タイヤはもちろんシリカなどの素材も配合され、グリップも燃費も高次元で両立したタイヤとなっている。さらに昨今は、カラータイヤや、サイドウォールの意匠をアクリル製着色料で印刷するものなど、「真っ黒タイヤ」からの転換も研究されているが、まだまだ研究段階。
目の黒いうちは、タイヤは黒い!?
〈文=ドライバーWeb編集部〉
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