2019/12/13 ニュース

【乗ってわかった新型フィットのマルとバツ】2モーターHVは驚きの完成度。1.3Lとの差が激しすぎる!

4代目となる新型フィット。2019年10月の東京モーターショーでお披露目されたその姿は、先代のイメージから一変。優しげな雰囲気に様変わりした。力強く!とかスポーティ!とか、そういう誇張がない、肩の力が抜けた、それでいて頼もしい存在感。では、走りはどうなんだろうか? 2020年2月を予定する発売前に、モータージャーナリスト戸田治宏がホンダの鷹栖プルービンググラウンドでとことん試した!


思わず口元が緩んだ

いちおう事の顛末に触れておくと、北海道は鷹栖プルービンググラウンドを舞台にしたフィットの先行試乗会は、東京モーターショー開催以前、2019年9月下旬に行われていた。Nワゴンに端を発した電動パーキングブレーキ(EPB)の共用部品供給問題はその時点で発覚しており、東京モーターショーで正式デビューという当初の予定はすで変更を余儀なくされていた。先行試乗会の情報解禁日は11月にセットされたが、くだんの影響が尾を引いたのかさらに1カ月ずれ込み、この12月にようやく日の目を見たというわけ。現行の3代目フィットは、ホンダの新デザインコンセプト「エキサイティングHデザイン!!!」の嚆矢。その掛け声はいつの間にかフェードアウトしたが、「ソリッド・ウイング・フェース」をホンダ車の新しいアイデンティティとするそのデザインが、その後の新型車に続々採用されたのはご存じのとおりだ。デザインの好き嫌いは人によってさまざまな意見があり、一概に評価することは難しい。が、個人的には、少なくとも国内市場でNボックス以外のホンダ車があまり元気のない要因のひとつは、アカ抜けない悪顔のうえ、大味ですぐに飽きがきそうなデザインにあると思っている。だから、鷹栖で新型フィットに体面した時は思わず口元が緩んだ。
●新型フィットのグレードは、販売の中心を担う「ホーム」、本革シートなどを装備した上級機種「リュクス」、フィットネスの”ネス”から想起されたスポーティファッショナブルな「ネス」。クロスオーバースタイルの「クロスター」、そして最廉価の「ベーシック」の5機種。今回試乗したのは、1.5L+2モーターのHV車と、1.3Lのガソリン車。最低地上高をかさ上げした親機種「クロスター」の試乗機会は得られなかった
現行型と打って変わり、原点回帰を思わせるシンプルでクリーンなスタイリング。しかし先祖返りではなく、笑みをたたえながら意志の強さを感じさせるその表情は、今の時代にふさわしい確かな存在感を放つ。時あたかも、ツアールーキーの渋野日向子選手が全英女子オープンで初優勝したばかりのこと。地元メディアに「スマイリング・シンデレラ」と称された実力と笑顔は、海外のゴルフファンからも共感を得た。周囲の人々を自然と引きつける、そんな笑顔の力と大切さを新型フィットにも感じたのである。

ただ広いだけではない

スペックは今回の情報解禁でも明らかにされていないが、標準ボディの寸法は国内5ナンバーサイズの現行型をほぼキープ。Bセグメント最大級の室内空間、センタータンクレイアウトならではのシートアレンジは、もちろん踏襲されている。しかし、乗り込んだ印象は別モノ。すべての開発は「心地よさ」をテーマに進められた。シートはクッション厚が前席で30㎜、後席で24㎜それぞれ増加。シートは「アコード並みの座り心地」をうたうまでにグレードアップされている。
●高密度かつクッションの厚さを30mm増やしたフロントシート。Sバネ構造からマット構造とすることで、体幹を支えて疲れにくい座り心地を実現している
コックピットの印象も大きく変わった。これまたシンプルな水平基調に刷新されたインパネ、2本スポークのステアリングもさることながら、極細Aピラーの「パノラマフロントウィンドウ」もたらす前方視界は、じつにワイドで爽快、そして新鮮だ。

●写真上が新型で、下が現行型。Aピラーが極端に細くなり、現行型とは比べものにならない広大な視界を手に入れた。また、ワイパーがインパネ上面から見えないようにするといった配慮も
アップライト気味だったドライビングポジションも改善。現行に対してステアリングポストを寝かせ、ペダル配置の角度を見直したことなどにより、身長175㎝の筆者がすぐに自然なポジションを決められるようになった。前席は体幹を面で支えるマット構造を採用。体をゆったり預けられ、腰まわりがぴったりフィットするサポート感も、またいい。

2モーターHVの実力とは?

走りで最大の注目は、ハイブリッド車(HV)だ。これまでミドルクラス以上に搭載してきた2モーター式のスポーツハイブリッドi-MMDを、今回コンパクトカーに初採用。名称は「e:HEV」(イーエイチイーブイ)に一新されている。
●1.5L+2モーターは、大きさでいえばインサイト用からパワートレーン長を3分の2程度に小型化したが、それでもボンネット下は“ギュウギュウ。当初は「搭載できないのでは?」と開発陣一同かなり苦労したという

試乗車は上級グレードの「リュクス」。Dレンジに入れアクセルを踏み込めば、EPBが自動解除され発進する。レバー操作の必要がないこの走り出しだけでも、Bセグとは思えない先進感を覚える。高速周回路に向かって緩加速。現行の1モーター式i-DCDならすぐにエンジンが再始動するところだが、新型はEV走行のままスムーズに車速を上げる。3つの走行モードを自動的に切り換える動作は従来のi-MMDと同じ。モーターはコンパクトカー用に小型化されているが、公表されたパワーは80kW、トルクも250Nmを超えるもようで、完全なシリーズHVのノートeパワーに肩を並べる。現行フィットHVに対してトルクは約1.5倍、パワーは約3.6倍。リチウムイオンバッテリーは小型だが、システムには昇圧機能が追加されている。
周回路の合流車線で一気に加速。1.5Lエンジンが再始動し、シリーズHV状態のHV走行モードに移行する。エンジンが発電機となり、モーターはその高出力をフルに発揮。ハイレスポンス、パワフル、そしてシームレスなその走りは、これも現行では味わえないEV感覚だ。エンジンは基本的に現行と同じで、熱効率は世界最高レベル。急加速では車速の上昇にリンクしたステップ変速制御まで採用するが、i-DCDの7速DCTのような煩雑さやショックはもちろん気にならない。最高速を試す時間はなかったが、プレゼン資料では競合車を20㎞/h近く引き離す約180㎞/h。一方、巡行では70㎞/hあたりから、クラッチをつなぎエンジン動力で走るエンジン走行モードが確かめられる。高速ではモーター走行より高効率。低中速で作動領域を大幅に拡大したEV走行と相まって、燃費性能でもクラストップの戴冠をうかがう。周回路ではホンダセンシングの性能向上の一端もかいま見えた。検知方法は従来のミリ波レーダー+カメラから、フロントワイドビューカメラ+計8個のソナーに進化。車線維持支援システムを試すと、現行は車線内をゆっくり蛇行するような傾向が見られるが、新型は緩やかなカーブでも車線中央を正確にキープしてくれるのだ。

1.3Lとの差が激しすぎる?

欧州の比較的粗い舗装路面を模したワインディングに舞台を移すと、シャシーも現行との比較など必要のないほどの出来栄えを見せた。サスペンションがじつにしなやかだ。バネ下が正確なストロークで路面に追従し、乗り心地は細かい振動もオブラートで包むように上質。4輪の接地感もしっかり伝わってくる。プラットフォームのホイールベース間やサスの基本設計は現行を踏襲するが、サス保持部を中心としたボディの補強やサスの徹底的なフリクション低減がじつに功を奏している。コーナーでは車両の重心が若干低くなった印象もあり、グッと腰を落とすように安定したロール剛性も両立。さらに、HVの16インチタイヤ装着車は可変ステアリングギヤレシオ(VGR)を採用する。回り込んだコーナーでもフロントはクイックに向きを変え、つねにキビキビ正確なハンドリングを楽しませる。HVバッテリーの搭載位置は現行と同じく荷室床下だが、その重さによる影響はまるで感じさせない。
●荷室開口部やアンダーボックスの容量を現行よりも拡大。その使い勝手にさらに磨きをかけている。ただ、後席背もたれを倒したときのフラット感は若干だが薄れた。後席乗り心地を優先し、シートを肉厚化したためだ
一方、ガソリンは1.5Lを廃止し、1.3Lに一本化。これはシンプルな「ベーシック」に試乗した。エンジンはWLTP対応の新型触媒以外、現行をキャリーオーバー。CVTはセカンダリー軸支持のフリクション低減、走行用オイルポンプの電動化など、いっそうの高効率化が図られた。HVと同じくステップ変速も採用され、加速のリニアリティが向上。ただ上り勾配の再加速では少々モタつきを感じた。動力性能は現行と同じだが、CVTの制御をいくぶん燃費寄りにしているようだ。
タイヤはインチ違いの185/60R15。サスチューンの違いは不明だが、VGRなしのシャシーはごくフツーといった印象で、ハンドリングの一体感と乗り心地の質感には、前述のリュクスと正直けっこうな差がある。ただ、HVの16インチ車が出来過ぎの感もあり、2020年2月のデビュー後にあらためて確かめたい。乗る人も自然と笑顔になる“スマイル・フィット”。公道での実力も鷹栖の感触どおりなら、そうした呼び名がついても不思議ではない。〈文=戸田治宏 写真=ホンダ〉

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