2019/12/11 ニュース

【ダン・アオキの輸入車通信簿】第2回 シボレー カマロ&VW ザ・ビートル

本誌連載「峠狩り」で活躍中のカメラマン、ダン・アオキがお送りするWeb新連載「輸入車通信簿」。第2回はシボレーのカマロと、間もなく販売終了のVW ザ・ビートル。個性的な2ドアモデルが登場だ。 
 ■シボレー カマロ LTRSフォードにマスタングあれば、シボレーにカマロあり。メリケン伝統のスポーツクーペ。プラス2のリヤシートを持つものの、実質2人乗りのデートカー(死語)だ。
先代にあたる5代目の登場は2009年。初代のイメージを上手にモダナイズしたデザインが好評を博し、成功を収めた。現行のカマロはキープコンセプトの6代目。グッと大きくなったフロントグリルと、より薄く、凄みを増したヘッドランプまわりが識別点。一見、単なるスキンチェンジに見えるが、じつはホイールベースを短縮するほど本格的に手が入れられている。車体がコンパクトに、かつ軽量化が図られた。日本へは、本国より2年遅れで導入が始まった。2リッター直4ターボ(275ps)のLT RSとコンバーチブル、そして6.2リッターV8(453ps)を積むSSをラインアップする。
いまどき珍しく旧型よりシェイプされたボディ。とはいえ、絶対的には大柄だ。トヨタ 86はおろか、日産 フェアレディZさえスッポリ入れられる寸法を持つ。運転席に座ると、助手席側のドアが遠い。彼女を乗せるときは、ちゃんと車外に出てドアを開けてあげないとね。「かつてのマッスルカーに、2リッター直4エンジンか!」と今更ながら驚くが、控えめにタービン音を響かせて、車重1560kgを軽々と運んでいく。トランスミッションは贅沢にも8速AT。7000rpmまで回しても、ロウで約62km/h、セカンドで約94km/hまで。加速重視、というより、余剰トルクの少なさを細かく切ったギヤでカバーする。存外速い。「はやい男は嫌われる」。ドライブデート中は、そんな交通安全の標語を思い出したほうがいいかもしれない。
一方、トップギヤの100km/h巡航では、1600rpm付近で粛々と回るだけ。筋肉よりスマートさで勝負する優等生な一面も見せる。価格は、539万円。ヤングなカップルというより、もっぱらちょいワル系に愛用されそうなアメリカンクーペである。

走り:★★★★コスパ:★★★★質感:★★使い勝手:★★★
 ■フォルクスワーゲン ビートル デザインマイスター20世紀終盤から21世紀初頭にかけてのカーデザインにもっとも影響を与えたクルマの1台が、1994年のデトロイトショーで発表されたフォルクスワーゲンの「コンセプトI」だと思う。ご存知の通り、コンセプトIはニュービートルとして商品化され、2011年にモデルチェンジを受けてザ・ビートルとなった。
言葉は悪いが、自分たちのヘリテイジを臆面もなくパクる。過去の名車のデザインエッセンスを「まんま」現代風にアレンジして、ニューモデルとする。従来、カーデザインの禁じ手とされてきたことが、じつは大いにアリで、顧客にも受けるということを、世界中の自動車メーカーに気づかせたのがコンセプトIだった。かつてのニッポンのパイクカーやWiLLプロジェクトは線香花火のように儚く消えてしまったけれど、VW発のレトロムーブメントはドンドン流れを太くして、MINIという新しいブランドを成立させ、フィアット500が同社の米グルマとなり、北米ではマスタング、カマロ、チャレンジャーといったマッスルカーの人気を再び燃え上がらせて、ついには未来志向を堅持していたフランス・ルノーをしてアルピーヌを復活させてしまった。うーむ、恐るべし、コンセプトI。そんな歴史的使命(!?)を果たしたビートルが間もなく販売終了となる。日本市場でも去りゆくビートルを惜しんで、「See You! The Beetle キャンペーン」を実施。次々と特別仕様車がリリースされている。
マイスターシリーズも、そうしたキャンペーンモデルのひとつで、ベーシックな1.2リッターターボ(105ps)を積んだ「デザイン」グレード、1.4リッターターボ(150ps)の「Rライン」、そして2リッターターボ(211ps)搭載の「2.0Rライン」、それぞれに装備充実版が用意される。デザインマイスターは、通常のデザイングレードに17インチ専用ホイールを履かせ、パドルシフト付きマルチファンクションステアリングホイール、2ゾーンフルオートエアコンなどを与えたもので、価格は309万5000円。オプションでレザー内装も選択できる。
改めてザ・ビートルを目の前にすると、ポップなファンカーの色彩強かったニュービートルから、ずいぶんと真面目な実用ハッチになった印象を受ける。タイプIの時代に、先祖返りしたんですかね。ベーシックな1.2リッターエンジンはツインクラッチ式の7速DSGと組み合わされ、過不足なく1300kgのビートルを走らせる。ことさら速くはないけれど、穏やかな乗り心地としっかりしたボディを実感させる。全体に無理がない。これなら飽きずに長く乗れそう。次のジェネレーションのビートルが登場するまで、大事に乗っていきたい。そんな人にピッタリかもしれません。

走り:★★コスパ:★★★★質感:★★★★使い勝手:★★★
<文=ダン・アオキ 写真=佐藤正巳  text by Dan Aoki photo by Masami Sato>  

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