ご長寿モデルのデリカD:5には、数々の特別仕様車が登場。なかでも人気なのがシャモニー。その最新版が昨年11月にデビューしている。これまで冬の風物詩だったシャモニーで新緑キャンプを楽しみつつ、あらためてその魅力について考えた。
初出/driver 2024年7月号 特別付録 (2024年5月20日発売)
[バリエーションと価格]
〈4WD・2.2Lディーゼルターボ・8速AT〉
シャモニー(特別仕様車):491万6670円
アーバンギア Gパワーパッケージ:462万2200円
P:460万1300円
Gパワーパッケージ:449万4600円
アーバンギア G:438万5700円
G:425万8100円
M:415万6900円
夏もシャモニー!
●特別仕様車シャモニーには、専用グリーンのエンジンフードエンブレムをはじめとした「シャモニーコンプリートパッケージ」が設定される。詳細は別項にて
唯一無二だからこそ先日、トライトンで能登に行った。そこで出会ったとあるお寺の執事さんの言葉がとても印象に残っている。
「ボランティアに行くための移動車は、デリカ一択だなと思ってます」
多人数乗車を可能とするミニバン価値はもちろん、荒れた路面を走る際に心強い185mmという最低地上高。さらに、いざというときの脱出性にも優れた電子制御4WDシステムなども加わり、デリカD:5には「ミニバン×SUV」という唯一無二の魅力が備わっている。
そんなデリカD:5が誕生したのは2007年。ご長寿モデルと呼ばれるロングセラーではあるが、19年には大幅改良を実施。内外装のリフレッシュのみならず、パワートレーンの刷新や先進安全装備の充実など、現代に必要とされる性能を手に入れ、今に至っている。
なかでも注目したいのが、その改良時に採用された電動パワーステアリング(EPS)。「え、そこ?」と思われるかもしれないが、その味つけが、なんとも秀逸なのだ。
三菱のEPSは、例えばアウトランダーやデリカミニ、そして最新のトライトンに至るまで、どのモデルも気持ちのいいフィーリングが味わえる。具体的には、操舵した分だけクルマが反応するナチュラルさ。それでいて低速域では扱いやすく、まさに街なかから高速道路までまるでストレスを感じさせない。
その理由の一端は、過酷なテストを繰り返してクルマを作り込んでいるから。それを深く感じたのは、“あのコース”を走ったときだった。
過酷さは快適さにつながる「ここを快適に走れないクルマは、三菱のクルマとして認められません」という話を聞いたのは、 昨年9月にお披露目された、北海道の十勝研究所内にある「十勝アドベンチャートレイル」での試乗会。トライトンはもちろんだが、ほかの三菱車でそのオフロードコースを走ってみても至極快適だったのだ。路面変化がつかみやすく、それでいて不要なキックバックは抑えられている。
デリカD:5は、ボディ剛性の面で不利とされるスライドドアボディ……なのだが、そんな心配は無用なのだ。速い、とか、俊敏、とかではない。なんとも頼もしい走り。そこに扱いやすいEPSが加わり、頼れる相棒という言葉が口に出る。
その素性のよさは、オンロードでもわかる。路面のショックも優しく受け止めるし、ステアリングの据わりもよくロングドライブが苦にならない。だからこそ、遠出したくなる。撮影する際にクルマのブレを気にするカメラマンも「デリカいいよね」。
燃費が悪そうと思われがちだが、今回向かった茨城県のキャンプ場まで高速道路を淡々と約70km走って16km/L台をたたき出す2.2Lディーゼルエンジンも魅力だ。アクセルを踏み込めば特有のノック音を奏でるが、長く触れていると不思議と慣れてくる。それよりも、多段化された8速ATのおかげでエンジン回転数が低く抑えられるからクルージングが楽ちん。応答も緻密で、これもやっぱり繊細なアクセルコントロールが必要とされるオフロードで磨かれたものではないかと想像している。
次のデリカにも期待していい。でも、D:5だってまだまだ現役だ。古くならないクルマ自体の魅力が、デリカD:5には詰まっている。
非日常へ誘う魅力のミナモト●シフトノブ横に配置されたダイヤル式のドライブモードセレクター。燃費優先の2WD(FF)、高速道路やウエット路面の走行に適した4WDオート、深雪やラフロードで威力を発揮する4WDロックと3つの走行モードが選べる●シャモニー専用のブラック塗装アルミホイールには、「シャモニーコンプリートパッケージ」として専用デカールも用意。ほかにも同パッケージはエンジンフードエンブレム/ボディサイドデカール/ドアミラーカバー/フェンダーデカール/ブラックライトイルミフロアマットがセットで26万370円シート表皮が上質なシャモニー特別仕様車シャモニーは、撥水機能付きのスウェード調素材と合成皮革(シルバーステッチ付き)の専用シートに加えて、木目調のアクセントパネルや「CHAMONIX」エンブレムなどを装備。外装も専用デカール(サイド&テールゲート)やブラックマイカのフロントグリル&ポジションランプガーニッシュなどで精悍な顔立ちに仕上がっている。撮影車は、これに前述の「シャモニーコンプリートパッケージ」を装着した車両。
ギアをラクラク飲み込む積載性3列目を跳ね上げれば「ちょっと持ち込みすぎ?」なんてキャンプギアも軽々積載可能。シートの格納にはそれなりに腕力が必要だが、「座り心地を考えたゼイタクなシート」と思ってつき合うべし。
【デリカD:5 シャモニー 電動サイドステップ装着車(4WD・8速AT)主要諸元】 ■寸法・重量全長:4800mm
全幅:1795mm
全高:1875mm
ホイールベース:2850mm
トレッド:前1540mm/後1535mm
最低地上高:185mm
車両重量:1970kg
■エンジン・性能種類:直4DOHCディーゼルターボ
総排気量:2267cc
圧縮比:14.4
最高出力:107kW(145ps)/3500rpm
最大トルク:380Nm(38.7kgm)/2000rpm
使用燃料・タンク容量:軽油・64L
WLTCモード燃費:12.6km/L
最小回転半径:5.6m
乗車定員:7人
■諸装置サスペンション:前ストラット/後マルチリンク
ブレーキ:前Vディスク/後ディスク
タイヤ:225/55R18
〈文=本誌・柿崎 写真=長谷川拓司 〉
取材協力:フォンテーヌの森