2018/01/26 コラム

まもなく半世紀 歴代モデル “試乗記” で見る スバル4WD「進化の軌跡」8

driver archive SPECIAL数ある自動車メーカーのなかでも “四駆” に強いこだわりを持っているのがスバル。その歴史は半世紀近くにさかのぼり、いまも水平対向エンジンと並ぶ同社のコア・テクノロジーである。林道から市街地、そしてサーキットまで。その進化の過程を、本誌試乗記で振り返ってみたい。 まとめ:編集部

1989 LEGACY RS第8回は、1989(平成元)年2月に発売された「レガシィ」。富士重工が理想とする水平対向エンジンや4WD技術を受け継ぎながら、すべてが新設計。まさに社運を賭けた1台だった。EJ型2L DOHCターボは、「RS」でクラス最強の220馬力を発揮。レオーネから一転、“本格スポーツセダン” の筆頭に躍り出た。*:当時の試乗記はすべて本誌の記事を抜粋、一部再構成したものです
「スポーツ四駆」 1989(平成元)年6月20日号「ズバッとステアリングを切り込む。タイトコーナーへの進入は、これでいい。高性能4WD車の多くは、基本的に安定指向だ。一気にステアリングを切っても前輪がダラッと逃げ出すだけで、クルマは思うように向きを変えてくれない。だが、レガシィは違う。ステアリングの初期応答性は、従来の4WD車では考えられないほど鋭い。さすがに軽快さはないが、フロントヘビー傾向を感じず、正確な回頭性を発揮する。ただし、コーナリング中は前輪が逃げやすくなる。それをステアリングに与える舵角で修正しようとすると、そのたびにロールを繰り返す。もう少しダンピングをきかせたいところだが、舵に頼れるという意味では、じつに扱いやすいクルマだ。それは、コーナー脱出時でも同じ。前輪のグリップが限界に達すると、ダッダッダッと断続的に逃げ出すが、かまわずそのまま加速態勢に入れる。限界を超えてもネバリ強さは抜群。これがFF車ならとてもアクセルを踏めない状況でも、グイグイと加速しながら立ち上がれる。さらに、ブレーキングの安定感も魅力のひとつ。(筑波サーキットの)最終コーナーへは155km/hで進入するが、奥まで突っ込んでバンッとペダルを踏み、一気に減速しても姿勢の乱れは少ない。ラップを続けるうちにペダルのストロークは深くなるが、制動力そのものは高いレベルを維持する。ブレーキングによる荷重移動とステアリングを切り込むタイミングを合わせれば、テールアウト姿勢にも持ち込める。カウンターステアを戻すタイミングを早めにしてやらないと、後輪がグリップを回復する瞬間に、前輪がズルッと滑り出すクセがある。だが、基本的に前輪と同様に、後輪のネバリ強さは申し分ない。限界でクルマをコントロールしているときでも、積極的にアクセルを踏んでいられるのは4WDの魅力。バックストレッチでの車速の伸びは、いささか期待外れだったが、ラップは1分12秒47というタイムをマークした。唯一気になったのは、ハードコーナリングで2速が抜けてしまうことだ。駆動をかけている状態では問題ないが、コーナー進入時にダウンシフトしても、立ち上がりでニュートラルに戻っていることがあった」 (萩原秀輝)

●搭載エンジンはすべてを新設計とした次世代フラット4の「EJ系」。画像のEJ20(NA)は4カム16バルブ仕様。「RS」は大容量ターボと水冷インタークーラーを組み合わせ、当時2L 最強の220馬力/27.5kgmを発揮

●室内はデザイン、質感とも、レオーネより格段に向上。画像は89年12月に追加発売された、競技用グレードの「RSタイプRA」。ラジオやスピーカー、トランクマットなどを廃し軽量化を図った

●レオーネに続き2段ルーフを採用した「ツーリングワゴン」(画像は2L NA車)。89年10月には200馬力ターボにATを組み合わせた「GT」を追加。ワゴン人気の火付け役となった

“STi” を名乗らなかった初のSTiチューンモデル
●「RSタイプRA」の当時価格は229万9000円。「RSタイプR」との差額は27万5000円ほど。インタークーラーにはゴールドの塗色が施された
「RS」の装備を簡素化し “モータースポーツ用競技車のベーシックグレード” として89年10月に追加発売された「RSタイプR」。その2カ月後、矢継ぎ早に追加されたのが、STiがチューンを施した初の市販モデルとなる、この「RSタイプRA」(12月発売)。エンジンは鍛造ピストンと高耐久コンロッドメタルが組み込まれ、吸排気ポートの段差修正研磨(ポート研磨)のほか、クランクシャフトやフライホイールなどの回転系パーツのバランス取りも実施。また、パワーステアリングもバリアブルクイックタイプとし、冷却性能向上のためラジエターファンもダブル化。強化ヘッドライトも採用した。RSタイプRと同様、「セラミックホワイト」の5速MT車のみを設定。フロントドアモールの下部に「Handcrafted tuning by STi」の文字が、ごく控えめに入る。

■レガシィRSタイプR(4WD・5速MT) 全長:4510mm 全幅:1690mm 全高:1395mm 車両重量:1280kg 水平対向4気筒DOHCターボ 1994cc 220馬力/27.5kgm
当時、「ギャランVR-4」を筆頭にハイパワー化が急加速した2L 4WDスポーツセダン。0→400m加速のレコードホルダーは件のVR-4(前期型)で、タイムは13秒97。90年1月5日号では、発売間もない「RSタイプRA」を谷田部に持ち込み早速テスト。ウエットコンディションながらVR-4の数値を0秒20短縮する、同タイム13秒77をマークした(テスター:萩原秀輝)。ちなみに、2速40→80km/hの追い越し加速タイム(3秒35)は、スカイラインGT-R(R32)を0秒35上まわる値。レオーネ時代の憂さを晴らすような快走をみせた。

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