2018/01/18 コラム

まもなく半世紀 歴代モデル “試乗記” で見る スバル4WD「進化の軌跡」6

driver archive SPECIAL数ある自動車メーカーのなかでも “四駆” に強いこだわりを持っているのがスバル。その歴史は半世紀近くにさかのぼり、いまも水平対向エンジンと並ぶ同社のコア・テクノロジーである。林道から市街地、そしてサーキットまで。その進化の過程を、本誌試乗記で振り返ってみたい。 まとめ:編集部

1986 LEONE 3Door COUPE RX/II TURBO第6回は、1986年の春にレオーネ3ドアクーペのスポーツグレードとして追加された「RX/IIターボ」。「セレクティブ(パートタイム)4WD」、「MP-T 4WD」に次ぐ、スバル第3の四駆システム「フルタイム4WD」を同社で初めて搭載したモデルだ。*:当時の試乗記はすべて本誌の記事を抜粋、一部再構成したものです
「素直なハンドリング」 1986(昭和61)年6月5日号「4月に新登場したレオーネ・フルタイム4WDは、レオーネ4WDシリーズでは第3のシステム。常時4WDという駆動方式が、レオーネRXターボにどんな走りをもたらすか。さっそく箱根で試乗した。当日はあいにくの悪天候。走り慣れたいつものワインディングロードは、雨に煙っていた。にもかかわらず気分は晴れやかだった。ウエット路をものともしないRX/IIターボ・フルタイム4WDが、確かな手応えをもたらしてくれたからだ。特筆すべきはハンドリング。レオーネ系のこれまでの悪評をきれいさっぱり吹き飛ばす、素直でいて頼りになるフットワークを見せてくれた。開発陣の話によれば、足まわりは従来のRXターボと共通とのこと。でも、フルタイム4WDに乗って、メーカーの足まわりのチューンにかける意気込みが感じとれた。RX/IIターボのサスペンションセッティングは、硬いが減衰力の効いたコシのあるタイプ。硬さをもろに感じるのではない、どちらかというとヨーロッパ車的な上質なフィーリング。路面の継ぎ目こそ拾うものの、不快感をともなうものではない。パワーステアリングはロック・ツー・ロックが3.5回転。操舵力は重めで、マニュアルに近いフィーリングだ。切り始めのレスポンスはマイルドで、クイック感はない。ひと言で言えば、スポーティ車というより、一般車に近いおっとりとした性格といえる。このステアリングとダンピングの効いたサスペンション、そして4WDの組み合わせがRX/IIターボに優れたハンドリングをもたらした。とにかくバランスがいい。ステアリングを切れば切ったなりに、素直な身のこなしをみせてくれるのだ。ステア特性は基本アンダーだが、その度合いは最適。要するに、とくにアンダーステアを意識させられることはないのである。ウエット路面のハードなコーナリングでステア特性が急変することはない。さすがは4WD、ウエットのコーナリングで路面をとらえて離さないと感じたのは、4輪のトラクション(前後比50対50)がバランスよく路面に伝わっているからだ。試しにセンターデフをロックしてみると、アンダーステアの度合いが強まる。通常のデフをロックしない状態でのコーナリングラインがなめらかな弧を成すとしたら、ロック状態では弧にいくぶん角ができると言ったらわかりやすいだろうか。むろんこれは極端な形容だが。EA82型OHCターボの性能は、ネットで最高出力120馬力/5200rpm、最大トルク18.2kgm/2400rpm。数値上はともかく、性格づけには疑問を感じるエンジンだ。というのは、パワーバンドが狭いから。低速域でのねばり強さと、高回転域でのパンチ力に欠ける。2500から5500回転あたりまでが、軽快な走りをもたらすゾーンだ。とはいっても、1.8Lターボはそこそこの実力はある。回転を3500から4500の強力ゾーンに保っていれば、パワフル感が味わえる。その意味においては、前述のゾーンに保っていればパワフル感が味わえる」 (横越光広)

●シンプルな構成により、トランスファーケースは従来の「セレクティブ(パートタイム)4WD」とほぼ同じサイズに収めた
コンパクトなセンターデフ式フルタイム4WDシステムは、スバルが独自に開発したベベルギヤ方式。センターデフは通常の4枚ベベルギヤ構成のデフギヤと構造的には同じ。トランスミッションのドリブンシャフト後端に取り付けられ、前後に50:50でトルク配分する。デフロックはセンターコンソールのダイヤルスイッチ操作でオン・オフの切り換えが可能だった。
●スバルに先んじること半年。日本初のフルタイム4WD搭載車となったのは、6代目「マツダ ファミリア」(85年10月発売)。こちらはセンターデフに遊星ギヤを使用した

●デュアルレンジセレクターが備わるインパネまわりはレオーネシリーズ共通。メーターは油圧計と電圧計が備わるスポーツタイプだ

●「RX/II」の標準装着タイヤは185/60R14サイズのポテンザRE86M(アルミホイールはオプション)。前後ディスクブレーキ&スタビライザーが備わるスポーツグレードだった

■レオーネ3ドアクーペRX/IIターボ(4WD・5速MT) 全長:4370mm 全幅:1660mm 全高:1405mm 車両重量:1110kg 水平対向4気筒OHCターボ 1781cc 120馬力/18.2kgm
「オールニューレオーネ」を名乗り84年に登場した3代目。「スバル1000」から続くEA型エンジンはOHVからOHCに改められ、3ドアクーペやフルタイム四駆も追加された。しかし基本設計の古さは隠せず、レオーネは次第に商品力を失っていく。

フラット6とACT-4

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