2018/01/17 コラム

まもなく半世紀 歴代モデル “試乗記” で見る スバル4WD「進化の軌跡」5

driver archive SPECIAL数ある自動車メーカーのなかでも “四駆” に強いこだわりを持っているのがスバル。その歴史は半世紀近くにさかのぼり、いまも水平対向エンジンと並ぶ同社のコア・テクノロジーである。林道から市街地、そしてサーキットまで。その進化の過程を、本誌試乗記で振り返ってみたい。 まとめ:編集部

1982 LEONE TOURING WAGON 4WD 1800 TURBO Automatic第5回は、前年のAT車に続き、1982(昭和57)年10月に発売された世界初の「4WDターボAT」。いまだエンジンはOHVのEA型、ATも3速であったが、4WD車の高速ツアラー化を急進させた。*:当時の試乗記はすべて本誌の記事を抜粋、一部再構成したものです
「オンロード重視」 1982(昭和57)年12月5日号「オンロード性能を重視するなら、たとえ4WDビークルであってもターボチャージャーの装着があっても不思議ではない。その回答としての代表例が、アウディ・クワトロであり、このレオーネ4WDターボだ。出力こそクワトロの300HPに遠く及ばない120馬力だが、さすがにその走りは速く、ターボの底力を見せつけられた感じがする。秋色深い山中湖に向けて走り出したレオーネ・4WD・ツーリングワゴン1800ターボATは、渋いメタリックグレー&シルバーのツートーンに塗られ、周囲の山々の紅葉によく映えて、大人っぽいイメージ。ターゲットとするユーザー層が従来よりも若干高い年齢層となったことを示している。ターボが装着されたスバルのフラット4エンジンは、E81×D13と呼ばれるタイプ。これまでのレオーネ4WD・ATに搭載されていたE81ZD2Nのキャブレター仕様とは異なり、スバル初のEGIを装着した。出力は従来の1800シングルキャブ仕様が100馬力/5600rpm、15.0kgm/3600rpmに対し、1800EGIターボは出力で約20%、トルクで約25%アップの120馬力/5200rpm、19.0kgm/2400rpmとしている。さらに従来にも増して静粛性が向上し、アイドリング時の落ち着きも増した。加えて、そのシャープな吹き上がりのよさもEGI装着の効果と見ていいだろう。こうしたことから考えると、このスバル初のターボエンジンが、単にパワーアップだけをもくろんだものではないことは明らかだ。それというのも、このターボエンジンとコネクトされるのはオートマチックに限られ、4ドアセダンとツーリングワゴンだけに搭載されるからだ。それは、2ペダルのイージードライブと19.0kgmのハイトルクの組み合わせこそ、アダルトな走りを可能にするものという答えをスバルが出したからにほかならない。ツーリングワゴン4WDターボATの走りは確かに速く、かつアダルトなものだった。3速ATは全ポジションでのロックアップが可能で、3速では約30km/hでトルコンスリップ規制がはじまり、50km/h以上では100%ロックアップされる。これが効果を見せて、ATとは思えない鋭いレスポンスを見せてくれる。フロントに、ゼロスクラブジオメトリーを採用するマクファーソンストラット、リヤにセミトレーリングアームの組み合わせはすでに完成の域に達したものと思われるが、それにしてはタイヤとのマッチングが4WDらしくない。試乗車はオプションのBS・RD207・175/70HR13に5J-13のスチールホイールが組み合わされていた。確かにオンロードにおける性能は良いのだが、オフロードにおける性能がものたりない。このタイヤの選択は、あきらかにレオーネターボ4WDがオンロード重視のクルマであることを示している」 (中田和夫)

●「世界初、4WD・ターボ・AT。レオーネ4WDターボは、時代を超え、ジャンルをも超えた高速オールラウンド・ツアラーです。」とある(カタログから)

●OHVエンジンの最終進化形となるEA81型ターボ。最大過給圧を約2000回転から設定した、実用回転域に特化したユニットだ

●試乗車はメーカーオプションのデジタルメーターを装着。40〜100km/hの範囲で使えるオートドライブも備わる。83年11月にはハイトコントロールシステムも追加された

■レオーネツーリングワゴン 4WD 1800ターボAT(3速AT) 全長:4285mm 全幅:1620mm 全高:1455mm 車両重量:1095kg 水平対向4気筒OHVターボ 1781cc 120馬力/19.0kgm(いずれもグロス値)
ちなみに当時の価格は189万5000円(東京地区標準現金価格)。世界初の称号を手にし「スーパースポーツワゴン」を名乗るも、ターボやDOHCが全盛の当時、OHVエンジンと3速ATの組み合わせは明らかに古かった。そこへ経営危機も重なり、次世代モデルの開発が急務となった。

そして、フルタイム4WD

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