2023/05/02 コラム

軽い交通違反…出頭拒否を続けると逮捕される?【交通違反の基礎知識・その3】

1番目の記事「反則金を払わないと逮捕される? そもそも反則金って何?」で、反則金はどういう性質のペナルティでどう誕生したのか、そのへんを書いた。2番目の記事「慌てずにすむ反則金の払い方、「青切符」以外に「ピンク切符」も!?」では、以下の6項目に分け、

1、反則行為で取り締まりを受ける
2、反則金を仮納付しない
3、反則金を本納付しない
4、反則手続きから刑事手続きへ移行
5、刑事手続きの呼び出しに応じない
6、裁判所から逮捕状をとって逮捕!

1から3までを書いた。どの納付をする人が多いのか、データも添えた。3番目となるこの記事では、4から6まで、つまり逮捕までを説明しよう。

4、反則手続きから刑事手続きへ移行

本納付の期限までに反則金を納付しない場合、つまり反則手続きで終わらない場合、自動的に刑事手続きへ移行する(道路交通法第130条)。こっちが本来の手続きであり、反則金は特別なペナルティなのだ。埼玉県警のWebサイトには、さらっとこう書かれている。

「交通反則通告書(ピンク色)に記載された納付期限までに反則金を納付しなかった場合は、刑事手続に移行します。」

5、刑事手続きの呼び出しに応じない

反則金を本納付しない場合、何月何日にこの場所へ出頭しなさいと通告書(交通反則通告書)に記載がある。住所と電話番号、略図が載っている。出頭場所は、簡易裁判所内の警察の分室。そこは、警察官、検察官、裁判官が待ち受け「三者即日処理方式」により赤切符の人をさくさく罰金刑に、それを専門とする場所だ。交通裁判所なんて呼ばれる。

指定された出頭日より数日あとに出頭しても特に問題はないようだ。けど、電話で出頭日の変更をお願いするのが礼儀正しいと私は思う。どんなときでも礼儀は大事だ。指定日より前に出頭すると、書類が届いていなくて対応できない場合もあるという。

出頭すると、どうなるか。もとが青切符なのに反則金を納付せず刑事手続きへ進んだ、そういう人は、なぜ納付しなかったのか問われる。「ついうっかり」「納付期限の頃は金がなかった」などで納付しておらず、しかし反則金を払う意思があるなら、新たな納付書を交付される。本納付の期限後に納付するのを特例納付といったりする。埼玉県警のWebサイトではこうだ。

「何らかの事情によって、納付期限までに反則金を納付できなかった場合は、特例制度で納付書を交付できる場合があります。」

通告書に出頭日の指定がないとか、なぜか通告書を受け取っていないとかいう場合は、郵便で呼出状がくる。出頭を求められていながら知らん顔していると、「これが最後です。逮捕もあり得ます」と呼出状に赤いペンで手書きされていたりする。

6、裁判所から逮捕状をとって逮捕!

警察官は「犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べることができる」(刑事訴訟法第198条第1項本文)。この「求め」に正当な理由なく応じない場合は「裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる」(同第199条第1項)。

正当な理由とは、傷病による入院とか、災害による交通途絶とかだ。仕事や育児などの都合で出頭日を変更することは、警察の担当者にもよるが、ある程度は認められるだろう。警察のほうでは、何月何日に郵便で、また電話で出頭を求めたと記録している。こんなに念入りに出頭を求めたのに応じないので、と裁判所に逮捕状を請求するのだ。

◇◇◇◇

以上で、反則金を払わないとどうなるのか、前の記事とあわせ、1から6まで基本的なところを説明した。逮捕まで進むと、反則金の特例納付はもうできない。写真や指紋、掌紋をとられ、調書をとられ、前出の交通裁判所へ連行され、略式の裁判手続きで罰金の支払い命令を受け、その日のうちに釈放される、とまあそうなるのが一般的なようだ。

反則金7000円の事件なら、罰金の額は通常7000円だ。通告書を郵送されていても、郵送料の839円は加算されない。罰金は刑法に定められた刑罰の一種だ。郵送料のぶんだけ量刑を重くするなんてできない。

刑罰を受けたことは前科になる。刑事訴訟法に「前科」という語はないが、刑事裁判には普通に出てくる。たとえば交通事故を起こして起訴されると、検察官から「被告人は交通罰金前科1犯」と言われる。

「放っておけばうやむやになるかも、とか思ったんじゃない。納得いかないことがあって反則金を納付しなかったんだ」

そんな人もおいでだろう。その場合、いわゆる交通裁判所では、調書をとられる。具体的には、納得いかない理由を警察官が聴き取り、調書にまとめ、読み聞かせて(または見せて)末尾に署名押印を求める。そして「後日また呼び出しがあると思いますので出頭してください」なんてことでその日は終わる。その先どうなるか、申し訳ない、次の記事で。今回のまとめはこうだ。

・反則金の納付は任意。不納付ゆえに逮捕されることはない。
・刑事手続きの出頭要請を拒んだ者を、警察は逮捕できる。

ところが「反則金を払わなかったら逮捕!」との印象を与える報道がよくある。どうなっているのか。うーん、報道の側が手続きのことをよく知らないから、でなければ、違反者たちに誤った印象を与えても誰も困らないから、ですかね、わかりませんけど。

文=今井亮一
肩書きは交通ジャーナリスト。1980年代から交通違反・取り締まりを取材研究し続け、著書多数。2000年以降、情報公開条例・法を利用し大量の警察文書を入手し続けてきた。2003年から交通事件以外の裁判傍聴にも熱中。交通違反マニア、開示請求マニア、裁判傍聴マニアを自称。

ドライバーWeb編集部

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