2023/05/02 コラム

慌てずにすむ反則金の払い方、「青切符」以外に「ピンク切符」も!? 【交通違反の基礎知識・その2】

反則金を払わないと逮捕される!ってホント?

前の記事「反則金を払わないと逮捕される? そもそも反則金って何?」からの続きだ。

反則金を払わないと逮捕される! そう思わせる報道がよくある。取り締まりを受け、数千円の反則金を払わずにいたら、ある朝突然、警察官たちが来た。仕事に行かなきゃいけないのに警察車両に押し込まれ、手錠をかけられた。「〇時〇分、逮捕します」と警察官。そんな密着ドキュメントな番組もよくある。

はっきり言おう。反則金の納付は任意だ。任意のものを払わないことは、逮捕の理由になり得ない。しかし現実に逮捕はあり得る。どうなっているのか。簡単に言えばこうだ。

1、反則行為で取り締まりを受ける
2、反則金を仮納付しない
3、反則金を本納付しない
4、反則手続きから刑事手続きへ移行
5、刑事手続きの呼び出しに応じない
6、裁判所から逮捕状をとって逮捕!

この記事では、1から3までを少し砕いて説明しよう。基本的なところをちゃんと把握しておくと、無用な不安に陥ることなく、どうしたらいいのか、何をしちゃいけないのか、すっきり見渡せるだろう。なお、細部まで言及するとキリがないので、基本的なところをね。

1、反則行為で取り締まりを受ける

何が反則行為か、反則金はいくらか、取り締まりの警察官が勝手に決めるんじゃない。道路交通法の別表第2にしっかり定められている。一時不停止や信号無視、歩行者妨害、携帯電話使用、一般道で超過30キロ(高速道路と自動車専用道路では40キロ)未満)の速度違反など、ほとんどの違反が反則行為とされる。飲酒運転や無免許運転、超過速度が上記以上のスピード違反など一部の違反は「非反則行為」という。

2、反則金を仮納付しない

反則行為で取り締まりを受けると、薄青色の「交通反則告知書」を交付される。平たくいえば青切符を切られる。青切符といっしょに「反則金」の納付書を交付される。反則金の額は、これも先ほどの別表第2にしっかり定められている。たとえば普通車の一時不停止なら7000円だ。

納付期限は原則、翌日から7日後。この納付書により郵便局か銀行で払うのを「仮納付」という。仮納付をしない場合、本納付の手続きへ進む。

2019年の警視庁のデータによれば、反則金の納付件数は67万0145件。うち約91%、60万7042件が仮納付だ。「とっとと払って嫌なことは早く忘れたい」という人が多いようだ。

3、反則金を本納付しない

仮納付をしない場合、仮納付の期限から約2週間後に「交通反則通告センター」または「交通反則通告所」(以下、通告センター)へ出頭せよと、青切符に記載がある。裏面に住所、電話番号、略図が載っている。この出頭は義務ではない。出頭してもしなくてもいい。

出頭すると「交通反則通告書」(以下、通告書)と本納付のための納付書を交付される。これ、青切符と同じ体裁で紙の色が薄赤色(ピンク色)だ。「すぐに払わなかったから赤切符になった!」とびびりがちかも。けど心配無用。赤切符とはぜんぜん違う。反則金の額は仮納付と同じ。納付期限は原則、通告書交付の翌日から10日後だ。

出頭しなければ、3週間ぐらいして、通告書と本納付の納付書が郵送されてくる。その場合、郵送料(配達証明便)の839円が納付額に加算される。普通車の一時不停止だと7千円が7839円になる。どうせ反則金を払うつもりなら、ぐずぐずしないで仮納付するほうが839円助かる。

前出の警視庁のデータによれば、本納付のうち、通告センターに出頭して通告書を交付されたのは7261件。郵送による交付は5万5842件。出頭する人は少数派なんだね。

「仮納付に本納付、出頭に郵送、間に何週間も開けたり、やけに手間をかけるんだな」と感じた方もおいでだろう。それはね、反則金で終えることは、検察官、裁判官にチェックしてもらう権利の放棄を意味するからだ。「チェック不要でーす」という人には仮納付してもらい、「えー、どぉしよう」という人にはじっくり考えてもらう。なので念入りになっているのである。

本納付の期限までに反則金を納付しない場合、刑事手続きの扱いになる(道路交通法第130条)。そこから先は次の記事「軽い交通違反でも逮捕されるのは出頭を拒み続けるから!」へ。

文=今井亮一
肩書きは交通ジャーナリスト。1980年代から交通違反・取り締まりを取材研究し続け、著書多数。2000年以降、情報公開条例・法を利用し大量の警察文書を入手し続けてきた。2003年から交通事件以外の裁判傍聴にも熱中。交通違反マニア、開示請求マニア、裁判傍聴マニアを自称。

ドライバーWeb編集部

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