2023/02/18 新車

落胆から一転…FRのマツダCX-60は4WDと足まわりが違う!「期待していた走りのイメージに近い」

試乗車:XDエクスクルーシブモード(FR・8速AT):443万3000円

■期待半分、不安半分で試乗開始

国内向けのCX-60にはパワーユニットに応じた4つの機種がラインアップされている。昨年9月のXDハイブリッド、12月のPHEVに続いて、この1月に発売されたのがXDだ。

エンジンはマイルドHVのない、素の3.3L直6ディーゼルターボ。上記2機種は4WDのみだが、XDには2WD、つまりFRも設定されている。CX-60最大の特徴は、何といっても新世代「ラージアーキテクチャー」のエンジン縦置きプラットフォームと、第2世代スカイアクティブDの直6エンジン。電動化モデルを別にすれば、特にXDのFR車はCX-60らしさを象徴する一台といってもいい。


●XDエクスクルーシブモード(FR・8速AT)

とはいえ、試乗前のキモチは期待半分、不安半分というのが正直なところ。後者の要素は先行発売の2機種で非常に残念な走りの質感だ。とりわけXDハイブリッドは、路面段差の乗り越えでドラレコが衝撃を検知するほど硬い足まわり、停車時のエンジン停止・再始動で不気味な異音や振動を発するアイドリングストップが、プレミアム系SUVとしてのイメージを大きくスポイル。PHEVの乗り心地はXDハイブリッドほど粗くないものの、舗装状態がいい路面でないかぎりボディが絶えず上下に細かく揺すられる傾向は同じである。

ただし、2台の名誉のためにつけ加えると、今回XDの伴走車として同行したXDハイブリッドはオドメーターが約8800㎞まで伸びており、足まわりの硬さやエンジンのフリクション感、アイドリングストップの作動の振動・ノイズは、若干こなれた感がある(それでも乗り心地は硬いが)。もう一台試乗したPHEVは約3900㎞で、乗り心地については同様だ。


●乗った瞬間から、「今までのと違う」

一方、XDエクスクルーシブモード(FR)の試乗車は、まだ最低限の慣らしをしただけの約1800㎞。しかし、怖いもの見たさのような心境で走り出すと、2台とサイズ・銘柄・空気圧ともまったく同じタイヤを履いているとは思えないほど、乗り心地は断然いい。サスペンションはしっかり引き締められているが、バネ下の動きに低中速域からしなやかさが生まれ、突き上げの不快なカドが取れている。

また、ボディのフラット感も顕著だ。路面の細かいアンジュレーションに対して2台ほど過度に影響されることかない。重厚感は2台のほうが上だが、車両の姿勢はXDのほうが安定していて走りやすい。

大排気量を低燃費に生かす3.3Lディーゼルターボは、231馬力・51.0kgmを発揮する。急加速の迫力はマイルドHV(254馬力・56.1kgm)に及ばないが、スペック差を感じる場面はそれくらい。1500回転から発生する最大トルクは5Lガソリンに匹敵するのだ。調律が整ったような直6の吹き上がり、力強く伸びるパワーもいい。



また、トルコンレスの8速ATは低速域の変速がマイルドHVよりスムーズ。アイドリングストップは再始動がセルのためXDハイブリッドよりワンテンポ遅いが、振動・ノイズは少ない。XDハイブリッドはマイルドHVとの協調制御に課題があるようだ。



ワインディングではFR系プラットフォームの面目躍如といっていい走りを披露する。ステアリングはXDハイブリッドほど操舵力が重すぎず、ロングノーズは自然なレスポンスでリニアに向きを変える。サスペンションはやっぱりしなやか。タフなロール剛性を発揮しながら路面にしっかり追従し、ボディの旋回姿勢をピタッとキメる。アクセルオンでコーナーを思いどおりにトレースできるFRならではのハンドリングを味わえるのだ。個人的にはCX-60に対して期待していた走りのイメージに近い。

■4WDとFR、足まわりが違った

いったい何が変わっているのか!? 

車両開発本部 操安性能開発部 上席エンジニアの虫谷 泰典さんによれば、これまでの2台は後輪のハブの5つある締結にピロボール/ボールジョイントを使っている。XDのFR車は車重が軽いため(それでも1.8トンクラスだが)、そのうちの1つをゴムブッシュに変更。さらに、リヤにはスタビライザーを装着していないという。


●試乗車のタイヤは、ブリヂストン アレンザ001。235/50R20のサイズを含めて、XDハイブリッドやPHEVと同じ。ちなみにXD Sパッケージとベースグレードは18インチタイヤとなる

「これまでの機種ではピロボールを使って、横力のコンプライアンスをハブ側で受け止めるのではなく、サスクロス全体でゆっくり動いてトーインの方向に安定性を確保するというコンセプトで、すごく直感的に判断できるようなかたちにしていました。今回のクルマは重量が軽く、安定性(確保)の話もあるので、ハブ側でしっかりコンプライアンスにトーインをつけてやる。また、クルマが軽くなるとメリットが多いですが、ドッシリした感じが薄れてしまうということもあるので、リヤのスタビを外してロールバランスを整えています。いや~、皆さんからの厳しいご意見は期待の裏返しだと思っています。毎日楽しく仕事していますよ、引きつりながら…(汗)」

では、XDの4WDはどうかといえば、これは従来同様、ゴムブッシュを使わずリヤスタビを装着しているとのこと。その走りもぜひ確かめてみたいものだ。間もなく登場する2.5Lガソリンの25Sと合わせて、続報をお待ちあれ!

〈試乗中の参考燃費①〉
XD:16.4km/L
XDハイブリッド:18.0km/L
※合計約100km走行。高速道路及びワインディングを含む一般道の合算

〈試乗中の参考燃費②〉
PHEV:15.7km/L
XDハイブリッド:19.6km/L
※合計約120km走行。高速道路及びワインディングを含む一般道の合算。なおスタート時、PHEVのバッテリーは満タンではない

〈文=戸田治宏 写真=山内潤也〉

ドライバーWeb編集部

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