2023/02/21 ニュース

3月に公道実証実験!「東京を中心とする関東圏〜大阪を中心とする関西圏」を自動運転レベル4で走るトラックを開発中…深刻なドライバー不足解決に繋がるか

実験用のトラック。車両周囲の状況を検知するカメラ、ライダー、ミリ波レーダーなどのセンサー類が取り付けられている

■深刻なトラックドライバー不足

「欲しいものはネット上で買えて、自宅に届けてもらえる」。そんな便利な世の中はすでに当たり前のものだが、その一方で商品を届ける物流業界はさまざまな問題を抱えている。

特に長距離輸送におけるドライバー不足が課題になっている。何しろ、長時間業務が規制され、頑張れば儲かった時代は終わった。新規労働者が増えなければ、高年齢化が進む。また「2024年就業規則」も重くのしかかり、より一層業務時間が減る。だからといって配送料を上げてしまっては、商品自体が売れなくなる可能性も…。

便利になった一方で運送業界にしわ寄せがきているのは、誰もが知るところである。

そんなドライバー不足を解決するため、長距離輸送における「レベル4自動運転トラック」のサービスを開発しているスタートアップ企業がある。それが今回紹介するT2だ。

T2(代表取締役:下村正樹)は千葉県市川市に本社をかまえる(他にも東京都中央区に東京オフィスあり)。三井物産・Preferred Networksの合弁会社として2022年8月30日に設立。自動運転システムの開発を行っており、将来的には同システムを搭載した車両による幹線輸送サービス事業などを行う。

T2が目指す幹線輸送サービスは、あくまでもレベル4の自動運転トラックによるものだ。つまり人が運転するのではなく、荷物を積んだトラックが自動で走行し、目的地(高速道路直結乃至インターチェンジに近い無人運転と有人運転を切り替える拠点)まで到達する。


●まずは乗用車で自動運転のシステムを開発。それをトラックに適合させている

■「始点・終点」を限定して自動運転を実現

「幹線輸送」に限定するのが注目すべき点。現在、T2がターゲットにしているのは、関東圏〜関西圏間の往復だ。日本の幹線輸送の総市場規模は約2兆円で、東京〜大阪間はその約2割を占めている。つまり、「約4000億円」にのぼる幹線輸送で将来ドライバー不足に起因する輸送能力不足を、自動運転により補うというわけ。

T2の顧客は、もちろん運送会社や荷主。関東圏〜関西圏間の往復に対して、自動運転トラック幹線輸送サービスを提供するのだ。

それらサービスを実現するために必要なのは、高感度センサーや機器類を搭載したトラックに加えて、T2が開発した自動運転システム。これらを自社で運用し、車両の監視も主にT2側で行うという。


●実験用のトラックに装着されたライダー

例えば輸送用トラックが集まる大きなターミナルがあるとする。ここで荷物が積まれたトラックは「切り替え拠点」と呼ばれる拠点で無人運転に切り替え高速道路をひた走り、目的地側の切り替え拠点まで自動で到着し有人運転に切り替える。さらに荷物の積み降ろしを行う拠点でトラックにはまた新たな荷物が積まれ、来た道を戻って切り替え拠点に向かう。つまり幹線道路を使った、自動シャトル便のようなサービスである。切り替え拠点は、高速道路IC直結または付近の場所を念頭に考えているのもポイントだ。

また、関東圏〜関西圏の切り替え拠点候補となる場所の議論も進んでいる。

■3月には公道で自動運転トラックを実証実験

同時に、自動運転トラックの実証実験も進んでいる。2022年11月には初めて高速道路における自動運転乗用車の公道実証実験を実施。さらに自動運転トラックも日本自動車研究所(JARI)が保有するテストコースでの実験を経て、2023年3月には、公道実証実験も計画している。

T2代表取締役社長の下村氏は、「運送会社様のお困りごと、業界の課題を解決すべくこの自動運転輸送サービスを開発しています。このサービスは、T2だけでは成しえません。運送会社様はもちろん、関連する官公庁と歩調を合わせ、法制度や規制緩和に関しても協議できればと思っています」と語っている。


●下村氏いわく、「自動運転トラックだと、いかに周囲にわかってもらえるかもポイント」とのこと。来る実証実験の際には、わかりやすいカラーリングを施す予定とのことだ

世界でもまれに見る複雑な交通事情を持つ日本。でも、こと高速道路に限ってしまえば、確かに人が運転するクルマと自動運転トラックの共存は可能かもしれない。

そのためにも、「安全は最優先。ですので、自動運転中の遠隔監視は、われわれが提供するサービスに含まれます。安全に走行するのはもちろんですが、何かあったら安全に停車させるなど、あらゆるシーンを想定した自動運転システムの開発を行っています」とは下村氏。

すでに自動運転のように走るクルマは世の中にある。自動運転トラックに関しても、安全を担保する徹底的な開発はもちろん、社会の受容性も気になるところである。

〈文=ドライバーWeb編集部〉

ドライバーWeb編集部

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