2023/01/31 コラム

【三菱デリカミニのなぜ】リアエンブレムの「MINI」が極端に小さい理由

DELICAの文字に比べてMINIの文字が小さい

近年の三菱のクルマは、人やクルマを守る安心感と力強いパフォーマンスを表現した「ダイナミックシールド」と呼ばれるコンセプトでフロントフェイスがデザインされている。2023年5月に発売されるデリカミニも同様のコンセプトを採用するが、どういったデザインの特徴があるのか? 東京オートサロン2023の会場でデリカミニのデザインを担当したプログラムデザインダイレクターの松岡亮介氏にフロントやリヤまわりのデザインについて伺った。

■デリカミニのダイナミックシールドの特徴





「デリカミニのダイナミックシールドについては、縦の部分が長いと思うんですね。もともとデリカとか、パジェロもそうですけれど、1980年代や90年代の三菱のRVは、けっこう縦型のプロテクターのバーが付いているデザインが多くて、デリカにもよく使われていました。これがアイコンとしてあったので、それをダイナミックシールドと組み合わせるとどういうデザインになるかというのをここで試したというのはあります。

ですので、けっこう立体的に飛び出しているように見えると思います。例えばアウトランダーはもう少し周囲の面と同一の面上に配置して、グラフィックにもメッキがかかっています。アウトランダーはモダンさを狙ったので、フラッシュ(同一の面上)にやったんですけれども、デリカミニは逆に真ん中を飛び出させることで、タフさの表現とか、なんかどこかデリカやパジェロみたいな、ちょっとだけ懐かしいけれど、タフに見えるよねと。そういったところのバランスを狙いました」

■「DELICA」の部分はプロテクターの一番上のパネルをイメージさせますね



「そうです。じつはデザインとしては、上のお兄ちゃんであるデリカD:5とか歴代のデリカからモチーフをそのまま持って来て、ここのデザインが一緒だからこれはデリカファミリーですということをよくやります。特にブランドを作るためにも同一のデザインを持ってくるというのはよくやることですけれども、デリカミニはじつはよく見るとぜんぶ一緒ではなくて、何となくファミリー感とか“ぽさ”というのは感じるんだけど、同じデザインは1つもないんです。

今、お話のあったデリカの名前も、フロント中央にDELICAと入っているクルマって、デリカの歴史のなかで初代を除けばあまりないんですね。でも、プロテクターバーが付いていたときに、ここに車名が入っていたねとか、そういう仕様もあったよねとか、そういうイメージ、世界感って何かデリカっぽいよねというのをさらっと入れています。同じようなモチーフが過去のデリカにあったのかといったら、じつはなかったりするんですね。世界観だけを取り入れているので、何となく感じていただけるのですが、よく見たら違うねというところは狙ってやっています」

■確かに並べてみると共通性があまりないですね



「そうなんですよ。リヤのほうにもDELICAの名前が入っていて、それはD:5のほうにもDELICAと入っていますけど、あれも何となくデリカというとバラ文字で入っているというイメージがあるというのも今回はさらっと。でも、入れている場所も違いますし、特に今回のデリカミニって、じつは会社のスリーダイヤのエンブレムがデリカD:5だと一番上にスリーダイヤ、下にDELICAとあるんですけれども、デリカミニはじつは一番上がDELICAで、三菱のマークは左下に小さく入っているんですよね。

そういうのも、やはり三菱のクルマだというのはもちろんですが、デリカだということを強く言いたかったので、DELICAの文字を一番上に置いたんです。本来は会社のエンブレムが一番トップにあって、その下に車名となるんですが、このクルマは特別に許可をもらいました」



■「MINI」がすごく小さい理由は?



「あれはデリカということをまず言いたかったことと、ミニなので、ミニという意味でも小さく置いたほうが可愛くてお洒落かなと。デザイン的なところが大きいかもしれないです。あとは、これは本当に製作、開発上の都合なんですけれども、フロントのDELICAという名前は通常はボディ同色のエンボス状で凹んでいるだけなんです。そこにオプションで貼り付けられるようになっていて(オートサロン出展車両は白色)、用品で装着したときにDELICAという文字がクルマの真ん中に来るようにしたかったんです。MINIという文字を大きくしてしまうとDELICAが片方に寄ってしまうんですね。ですので、DELICAという名前を目立たせたせるオプションのアクセサリーがリヤから見た時に映えるようにMINIを小さくした。その2つの理由があります」

■リヤの変更点はガーニッシュとバンパーですね



「リヤに関しましても、見ていただくと分かるんですけれども、ほぼほぼ真っ黒なんですよね。リヤから見たときにボディカラーがあまり下までないほうが、SUV感というかハイリフトしたイメージを出せます。SUVでは、下を黒く締めてクルマのボディカラーを浮いたように見せるというのが、よく使われる手法です。デリカミニに関しても、バンパーをほぼ真っ黒にしてしまって、スキッドプレートのデザインを入れながら、後ろから見たときに極力ハイリフトした感じを出すようにしています。そのバランスはかなり意識してやりました」

デリカミニはeKクロス スペースをベースに前後のデザインを変更したモデルであるが、少ない変更範囲ながらもこだわりの意匠に仕立てているのである。

〈文=ドライバーWeb編集部〉

ドライバーWeb編集部

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