2018/01/17 コラム

まもなく半世紀 歴代モデル “試乗記” で見る スバル4WD「進化の軌跡」4

driver archive SPECIAL数ある自動車メーカーのなかでも “四駆” に強いこだわりを持っているのがスバル。その歴史は半世紀近くにさかのぼり、いまも水平対向エンジンと並ぶ同社のコア・テクノロジーである。林道から市街地、そしてサーキットまで。その進化の過程を、本誌試乗記で振り返ってみたい。 まとめ:編集部

1981 LEONE 4Door Sedan 4WD 1800 Automatic第4回は、市場の要望に応え1981年(昭和56)11月に追加された、スバル初の4WD AT車。センターデフが要らないシンプルな構造とした、以後、同社四駆システムの中核を成す「MP-T」である。*:当時の試乗記はすべて本誌の記事を抜粋、一部再構成したものです
「イージードライビング」 1981(昭和56)年11月20日号「よりイージーに4WDを楽しみたいという要望は多いという。それに応えたように、富士重工からレオーネ4WDオートマチック車10月20日に発表され、11月1日から発売された。車種はレオーネ1800セダン4WDとツーリングワゴン4WDで、東京地区標準現金価格はそれぞれ158.1万円、166.8万円。マニュアル車に比べ6万円高だ。もともと富士重工は、4WD=オフロードカーとは考えていない。むしろ4WDのメカはFFやRRの付加価値的なもので、エマージェンシーユースに主眼を置いている。とくに、HiとLoのトランスファーを持つデュアルレンジはエマージェンシーとして使いわけることを望み、通常は、やはりFFとして走ってほしいそうだ。さて、試乗車は水冷水平対向4気筒OHVのEA81型を持つセダン4WD。エンジン性能は、100馬力/5600rpm、15.0kgm/3600rpmを発揮する。例によって、軽快な排気音のボクサーエンジンはアクセルレスポンスがよく、かろやかな吹き上がり。Dレンジにシフトして走りだしてみるが、加速感は従来のFF・ATと変わらず、スムーズで変速ショックもほとんどない。まずは首都高速から東名高速へとハイウェイ・クルーズを試みた。その静粛性は、4WDだけに1800GTSなどよりはさすがにうるさく、100km/h時にはラジオのボリュームを少し上げなければならない。ただ、パッセンジャーとの会話に困ることはなく、通常の会話ができる程度のうるささだ。ハンドリングの軽さも目だった。エンジン回転数堪能型のパワーアシストが付けられ、そのタッチは軽く、ATとのコンビネーションがいい。サスは基本的に他のレオーネと変わらず、乗りごこちにポイントを置いたソフトなものだ。タイヤも155SR13のソフトなものが足まわりを受け持つ。そのため、フィーリングは完全にコンベンショナルなセダンそのもので、4WDのイメージはない。ところで、FF→4WDの切り替えは、シフトレバーにあるスイッチを押せばOK。ソレノイドスイッチを利用しているが、この方式はFRベースのランクルBJ40系のものと同じ。レオーネのそれは使い勝手と性能面でレベルが高い。デュアルレンジのLoに相当するレシオは省かれているが、ATということを考えれば逆に使いやすい。FF→4WDのスイッチオン・オフ時のクルマの挙動変化はまったく体感できず、砂地でやっとその感覚がわかった程度だ。燃費はFF時の一般路11.4km/L、4WD時8.1 km/L、高速道路では、それぞれ12.7 km/L、12.0 km/Lと良好だった」 (中田和夫)

●「そうそう、このシフトレバー!」と思う人も多いのでは?(カタログより)
MP-T初登場シフトレバーに備わる4WD切り換えボタンを押すと、ソレノイドバルブが作動し油圧クラッチに接続。ATの油圧を流用して多板クラッチの結合具合を、トルクセンサーの検出値に応じて制御することで後輪への動力伝達率と回転数を変化させる、センターデフの要らないシンプルな構造とした。
●「MP-T」(マルチプレート トランスファー)は前輪と後輪をつなぐプロペラシャフトの間に油圧多板クラッチを配し、必要に応じて後輪側へ必要な駆動力を流す仕組み

●この年、4WD ATとともに追加されたのが「ツーリングワゴン」。2段ルーフがスタイリングのアイデンティティ。以後レオーネ、そして「レガシィ」の中軸車種となる

■レオーネ4ドアセダン1800 4WD オートマチック(3速AT) 全長:4250mm 全幅:1620mm 全高:1410mm 車両重量:1030kg 水平対向4気筒OHV 1781cc 100馬力/15.0kgm(ともにグロス値)
当時は、まだ4WDは特殊なクルマと思われていたころ。イージードライブ化を実現したMP-Tの登場により、ユーザーの選択肢が大幅に増えた。

世界初の4WDターボAT登場

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