2022/11/14 コラム

まさか!青信号の横断歩道を自転車で横断したら信号無視でアウトなの?

歩行者信号が青のとき、自転車は横断歩道を渡っちゃいけないの?

歩行者信号、青で渡ったらダメ 自転車悪質走行に「赤切符」 思わぬ落とし穴も」と11月5日、産経新聞が報じた。記事中にこうある。

◇◇◇
「運転手さん、いま信号、赤でしたよね?」
 東京都内の大通りにかかるスクランブル交差点。昨年10月、会社員の女性(36)は、自転車で交差点を渡ったところで警察官に呼び止められた。女性は青信号で渡ったのに、なぜ止められたのか理解できなかった。
 警察官は「青だったのは歩行者用の信号です。車道の信号は赤でしたよ。守らなきゃいけないのは、車道の信号です」と説明。自転車は道交法上、「軽車両」に分類されるため、原則、車道を走り、車道の信号に従わなくてはならない。女性は歩道の青信号で渡っており、「その認識が全くなかった」という。
◇◇◇

「えっ、歩行者信号が青のとき、自転車は横断歩道を渡っちゃいけないの? うそでしょ。私はいつも渡ってるし、おまわりさんが渡るのを見たこともあるよ」

そう驚いた方が全国に大勢いるんじゃないか。たしかにそう思わせる記事だと思う。どういうことか説明しよう。

道路交通法施行令の第2条が信号の意味について詳しく定めている。本件に関係する部分のみ抜粋すると、まず「赤色の灯火」についてはこうだ。

一 歩行者は、道路を横断してはならないこと。
二 車両等は、停止位置を越えて進行してはならないこと。

自転車は軽車両に当たる。軽車両は「車両等」に含まれる。自転車が車道を通行してきて、進行方向の信号が赤なら、停止位置(通常は停止線)の手前で停止しなければならない。停止線を越えてスクランブル交差点へ入れば、信号無視の違反が成立する。

だが、違反が成立しない場合もある。「歩行者用の信号」は青だったという。「人の形の記号を有する青色の灯火」の意味はこうだ。

一 歩行者は、進行することができること。
二 普通自転車は、横断歩道において直進をし、又は左折することができること。

歩行者用の信号が青のとき、自転車は横断歩道を横断できる。つまり、車道ではなく歩道を通行してきた自転車が、歩行者用の信号が青で横断歩道を渡るのは、信号に従った正しい渡りかたであり、信号無視の違反は成立しない。このことは念のため警視庁に確認しました。

産経記事が報じた取り締まりが正しいかどうかわからない。会社員の女性(36)がどこを通行してきたのか、車道か歩道か、そこの言及が現時点では一切ないから。そうして記事のタイトルに「歩行者信号、青で渡ったらダメ」とある。これでは、読んだ人の多くは「えっ、歩行者信号が青のとき、自転車は横断歩道を渡っちゃいけないの?」となってしまうでしょ。そこはよろしくないと私は思う。

まとめるとこうだ。

・車道を通行してきた自転車は、進行方向の信号が赤色なら、停止線の手前で止まらねばならない。停止線の先の横断歩道の歩行者信号が何色か、関係ない。
・歩道を通行してきた自転車は、横断歩道の歩行者信号が青の場合、その青信号に従って横断できる。

信号は「赤は止まれ。青は進め(進んでよい)」だけじゃない。クイズ好きの方は、すべての信号の意味を調べてみるといいかも。「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)というWebサイトで「道路交通法施行令」で検索するとすぐ出てくる。その第2条だ。

文=今井亮一
肩書きは交通ジャーナリスト。1980年代から交通違反・取り締まりを取材研究し続け、著書多数。2000年以降、情報公開条例・法を利用し大量の警察文書を入手し続けてきた。2003年から裁判傍聴にも熱中。2009年12月からメルマガ「今井亮一の裁判傍聴バカ一代(いちだい)」を好評発行中。

ドライバーWeb編集部

TAG

RELATED

RANKING