2022/06/03 コラム

なぜ自転車違反の取り締まりが激増? そして電動キックボード規制緩和後に待ち受けるもの

もっとも多い違反は、「信号無視」

自転車の取り締まり件数を私は“コレクション”している。素敵でしょ(笑)。手元にあるいちばん古いのは1989年分。全国で79件だ。1996年なんか10件だった。全国で1年間に10件ぽっちですよ。

ところが2006年4月に警察庁が、自転車の取り締まりを強化する通達を発出。2007年に500件を超えた。さらにぐぃんぐぃん増えた。2009年に1000件を、2012年に5000件を、2015年に1万件を、2019年に2万件を超えた。2020年はなんと2万5465件。昔を知る者からすれば「しぇーっ!」である。

【資料】全国自転車検挙件数一覧(2021年中)

2021年の自転車取り締まりについて、都道府県別、違反別のデータを情報公開法によりゲットした。2021年の全国合計は、前年よりだいぶ減って2万1906件。都道府県別の件数は、可搬式による速度取り締まりの件数以上に、ばらつきがめっちゃ大きい。山形、山梨、長野、福井、岐阜、和歌山、沖縄の7県はゼロ。1桁の県が多数ある。一方、トップ3はこうだ。

1位 兵庫  6210件
2位 東京  4084件
3位 大阪  3074件

この3都府県だけで全国合計の61%を占めている。現場の警察官諸氏はノルマを課され、尻を叩かれたのではないか。

次に違反別のデータを見てみよう。違反別で最も多いのは「信号無視」で1万978件、全国合計の半分だ。以下はそのトップ3と、ご当地の自転車取り締まりに占める信号無視の割合だ。

1位 兵庫  4672件(75%)
2位 大阪  2622件(85%)
3位 東京  2285件(56%)

兵庫と大阪は信号無視の取り締まりにやたら力を入れているんだねえ。ほか、違反別の取り締まり件数はこうなっている。

「通行禁止違反」 658件
「しゃ断踏切立入」 4383件
「指定場所一時不停止」 2595件
「無灯火」 24件
「乗車・積載違反」 121件
「酒酔い運転」 103件
「運転者の遵守事項違反」 1554件
「制動装置不良自転車運転」 325件
「その他」 1165件

無灯火の自転車はよくいて、非常に危険な場合がある。なのにたった24件?と思うでしょ。じつは、取り締まり件数とは別に「自転車に対する指導警告票交付件数」というデータがある。それによると、無灯火に対する指導警告票の交付件数は、あらびっくり、33万6366件もある。

この指導警告、2021年の総数はなんと131万2438件。取り締まり(2万1906件)の60倍だ。でも驚くのは早い。ピークは2012年。取り締まりは5321件で、指導警告は248万5497件。よ、467倍って、ぶっとんじゃうよねっ。

なぜそんなことが起こるのか、語ると長くなる。今回はざっくり省略する。とにかくね、2022年4月、電動キックボード(以下、電ボ)を要するに自転車の扱いとし、違反については反則金の対象に、という法案が国会を通過した。2年以内に施行される。そのとき、電ボは反則金ですむのに自転車は相変わらず罰金(刑事罰。前科になる)のままってことは考えにくい。自転車も反則金の対象になるだろうと私は読む。

自転車も反則金(または自転車違反金)の対象とするには、道路交通法の改定が必要になる。2023年の国会にその法案が出る可能性がある。その場合、社会的な盛り上がりを狙って、迷惑自転車の傍若無人ぶりがテレビで盛んに報じられるだろう。いつもの司会者、コメンテーター諸氏が何を述べるか、こう言っちゃ何だが私は今から楽しみなのです。

文=今井亮一
肩書きは交通ジャーナリスト。1980年代から交通違反・取り締まりを取材研究し続け、著書多数。2000年以降、情報公開条例・法を利用し大量の警察文書を入手し続けてきた。2003年から交通関係以外の裁判傍聴にも熱中。2009年12月からメルマガ「今井亮一の裁判傍聴バカ一代(いちだい)」を好評発行中。

ドライバーWeb編集部

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