2022/04/25 コラム

電動キックボードの交通違反はどう取り締まる? 歩道上の駐車はアウトかセーフか 

電動キックボードは、自転車でも原付バイクでもない分類に属するようになる

近ごろ話題の電動キックボードについて2022年4月19日、道路交通法(以下、道交法)の改定法案が国会で可決、成立。自転車でも原付バイクでもない新しい車種「特定小型原動機付自転車」(以下、特定小型原付)が誕生した。

改定法の施行は2年以内。2024年4月1日あたりのスタートになるのか。特定小型原付の規格に合った電動キックボード、いわば“特定電ボ”が各種発売され、ニュースやワイドショーが盛り上がるだろう。警察庁の発表と報道をまとめると、特定小型原付について現時点で決まっているのは次の9点だ。

1、運転免許は不要。
2、16歳未満は運転できない。
3、ヘルメットの着用は努力義務(罰則なし)
4、車道通行が原則。
5、時速20キロまでしか出せない。
6、時速6キロ以下に制御でき、かつその速度を表示できるタイプは、自転車通行可の歩道を通行できる。
7、反則金制度の対象とする。
8、放置違反金制度の対象とする。
9、危険な違反行為をくり返した場合、講習の受講を義務づける。

反則金は、たとえば一時不停止なら大型車が9000円、普通車が7000円、自動二輪が6000円、原付が5000円だ。特定電ボは4000円? いや、取り締まりがうまくいけば、自転車の違反も反則金の対象にする可能性がある。そこを見越して特定電ボは3000円かもね。

放置違反金とは、駐車監視員が違法駐車の車やバイクに黄色いステッカー(確認標章)を貼りつけ、後日、その車やバイクの持ち主に納付書が送られてくるあれだ。

歩道上の駐車は、道交法第47条第2項の違反「車道の左側端に沿わない駐車」に当たる。反則金は、大型車は2万1000円、普通車は1万5000円、自動二輪と原付は9000円だ。車体の大きさ、迷惑度が金額に影響しているのだろう。特定電ボは5000円程度になるのかな。歩道に特定電ボを置いて立ち食い蕎麦店などへ入り、戻ったら黄色いステッカーが、というケースが続出しそうだ。

特定電ボの取り締まりを、警察はどれぐらい行なうのか。2020年の自転車取り締まりは約2万5千件。そのほかに指導警告票の交付がなんと約144万件! 指導警告のかなりの部分を特定電ボの取り締まりへ向けることが十分に可能だろう。もちろん、特定電ボの普及台数にもよるわけだが。

反則金の年間の総納付額は、1988年から20年ちょい、だいたい800億円前後で推移してきた。ところが2011年に700億円を割り、2018年には600億円を割った。特定電ボがどかんと普及すれば、だいぶ盛り返せそう。

放置違反金もだ。この金は、反則金や罰金と違って、取り締まりをおこなった都道府県の収入になる。2006年6月に制度が誕生したとき「財政難の地方自治体にとって天恵だ」とか言われた。2007年の納付命令は約235万件。その後ぐんぐん減り、2021年は約76万件に! 天恵はどこへやら。特定電ボの普及で自治体は少し息を吹き返すか。

まだまだ語りたいことはあるが、今回はこのへんで。おっと、念のため言っておく。以上のあれこれは、改定道交法が2年以内に施行されてからの話ですよ。それまで電ボは、原則として原付バイクの扱いだ。運転免許なしで乗ると無免許運転になったりする。ご注意を。

文=今井亮一
肩書きは交通ジャーナリスト。1980年代から交通違反・取り締まりを取材研究し続け、著書多数。2000年以降、情報公開条例・法を利用し大量の警察文書を入手し続けてきた。2003年から裁判傍聴にも熱中。2009年12月からメルマガ「今井亮一の裁判傍聴バカ一代(いちだい)」を好評発行中。

ドライバーWeb編集部

RELATED

RANKING