2022/03/26 コラム

ミニバン3列目シート格納の争いに終止符!? 新型ノア/ヴォクシーの格納方式が便利すぎる

●3世代 15年にわたる格納の軌跡

トヨタ ノア/ヴォクシーに2代目から採用の「ワンタッチスペースアップシート」は、4代目の新型で「ワンタッチホールドシート」に進化した。3列目シートの跳ね上げ格納に革命を起こしたこのアイデア装備は、フルモデルチェンジとともにアップデート。ついに新型では一応の完成を見た感がある。ミニバンユーザーを驚かせ、ライバルメーカーをうならせ続けた3代にわたるその軌跡を、あらためて振り返ってみたい。

ボックス型ミニバンの3列目シートには、車種によって大きく2つの格納方式がある。左右への「跳ね上げ式」と「床下格納式」だ。

それぞれ一長一短があり、左右跳ね上げ式は「格納操作に手間がかかる」、「跳ね上げたシートに荷室幅を取られる」、「そのときの見栄えもあまりよろしくない」というのがそれまでの短所。一方の床下格納式は、「シートのサイズが小ぶりになる」、「荷室下への反転格納式だと荷室の収納物を出さないと格納できない」といった弱点がある。

跳ね上げ/床下
●左:左右跳ね上げ式(エスクァイア)、右:床下格納式(ステップワゴン)

3列目席
●左:先代ノア、右:先代ステップワゴン

左右跳ね上げ式は今のカタチのミニバンが出現する以前の、キャブオーバー1ボックスの時代から採用されている。初代ノア/ヴォクシーまでは格納のしかたも昔ながらで、1:背もたれを前方に倒す 2:シートを座面ごと側方に持ち上げる 3:座面裏のストラップのフックをルーフサイドのアシストグリップにかけて固定する 4:シートの脚部を折り畳む、という操作が必要だった。

特にシートを持ち上げるのは大の男でもズッシリ重く、しかもその状態をキープしないと固定ストラップをかけることができない。3列目シートの左右跳ね上げ操作は男性ユーザーでもかなり面倒で、小柄で非力な女性には非常にハードルの高い力作業だったのだ。

1st
●初代ノア/ヴォクシー(2001年)

それを一変させたのが、2007年6月発売の2代目でお目見えした世界初のワンタッチスペースアップシートだ。

跳ね上げ操作はまさにワンタッチ。荷室側から座面下のロック解除レバーを引くと、背もたれが “パタン” と前に倒れ、同時にシート全体が内蔵スプリングによって “グィ~ン”と跳ね上がる。持ち上げる操作力をアシストするのではなく、格納位置までほぼ自動的に上がってくれるのだ。脚部も連動して座面裏側に格納される。この状態でもOKな感じだが、あとは固定用ストラップのバックルをDピラーのロックに差し込んで格納操作完了。ワンタッチスペースアップシートは3列目の格納アレンジを女性ユーザーにも解放したのである。

2nd
●ワンタッチスペースアップシート(ノア/ヴォクシー:2007年)

先代の3代目ノア/ヴォクシーは2014年1月のフルモデルチェンジで登場。ワンタッチスペースアップシートの進化点は、ズバリ薄型化だ。目的は2つあった。

ひとつは、クラス初となる2列目キャプテンシートの超ロングスライド採用(810㎜)。ワンタッチスペースアップシートが先代のままでは、2列目に横スライド機構を追加しても跳ね上げた3列目シートに干渉してしまい、実現することができなかったのだ。もうひとつは、左右跳ね上げ式の短所である格納時の荷室幅を拡大すること。

3rd
●超ロングスライド(ノア/ヴォクシー:2014年)

そのために、ワンタッチスペースアップシートは座り心地を損なわないよう配慮しながら座面・背もたれとも薄型に設計された。ヒンジ形状も見直され、クオーターウインドー部にきれいに収まる格納が可能に。超ロングスライドシートの実現とともに、格納時の3列目間の荷室幅は200㎜も拡大した。

おまけに、ビルトインのようなスッキリ格納で見栄えも向上。これで左右跳ね上げ式のデメリットは格納操作以外の点でも大きく改善されたのだ。斜め後方視界については180度にワイド化したバックモニターでカバーするなど、安全面についても抜かりはなかった。

2nd/3rd
●左:2代目ノア、右:3代目ノア。格納した3列目席の幅に注目

そして、8年ぶりにフルモデルチェンジされた4代目の新型ノア/ヴォクシーでは、先代で手をつけられなかった格納時の固定方向が刷新された。ドアやボンネットと同様のストライカーロック機構を採用。跳ね上げたシートをそのまま軽く押し込めば、シートに内蔵のストライカーとDピラー部のラッチがかみ合ってロック。ラッチのロック解除レバーを引けばシートの展開も簡単にできる。固定用ストラップのバックルをはめたり外したりする手間すら必要なくなったのだ。操作はホントに片手で楽々。固定用ストラップがなくなったおかげで、見栄えもさらにスッキリ洗練されている。

4th_
●ワンタッチホールドシート(ノア/ヴォクシー:2022年)

ノア/ヴォクシーにとってワンタッチの跳ね上げは当たり前。今度は跳ね上げの固定までワンタッチだから。……そんな開発陣の志の高さと達成感が伝わってくるような、ワンタッチスペースアップシート改めワンタッチホールドシート。しかも、これは新型ノア/ヴォクシーに雨あられのごとく投入された、ユーザーの購買意欲を刺激する新装備・新機能のひとつに過ぎない。

その商品力はスゴい!というより、もはやオソロシイ!!のである。

〈文=戸田治宏〉

ドライバーWeb編集部

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