2022/03/15 コラム

マツダにもボクサーがあった…スバルの「BOXER」はかつてはマツダが所有する商標。スバルが入手した経緯とは

●1969年に誕生したマツダ ボクサー

スバルのコア技術である水平対向エンジン。左右に配置されたピストンがまるでボクサーがこぶしを突き出す様子に似ているところから「ボクサーエンジン」とも呼ばれ、親しまれている。1966年に発売したスバル1000以来、スバルを象徴する存在になっているのはご存知のとおり。しかし、BOXERという英文字綴りの商標を手に入れたのは、じつは比較的最近のことである。


●スバル1000 4ドアスタンダードセダン(1966年)


●水平対向エンジンEA52型

BOXERはマツダ(当時は東洋工業)が1967年3月に出願して登録された商標であった。マツダはこれを1969年9月に誕生した中型トラックの名称として採用している。ボクサー犬というドイツの中型犬から命名され、ブルドッグに似たたくましく俊敏な犬で、そのイメージをもってネーミングされている。その語源はボクサーエンジンと同様に「拳で打ち合う」という意味である。


●マツダ ボクサー(1969年)

スバルはブランドの根幹をなすBOXERの名称を手元に置いておきたい…そう考えるのは当然の成り行きであった。

2002年1月のことである。当時、マツダは指定商品として自動車が属する第12類で「MAZDA BOXER」という商標を持っていた。そこで、スバルは第12類で「SUBARU BOXER」という商標を出願した。SUBARUを頭に冠せば差別化できると考えたのかもしれない。

ところが、特許庁での審理を経て、拒絶査定を受けてしまう。マツダが持つ「MAZDA BOXER」の商標との類似を指摘されてしまったようである。そこで、スバルは、2003年8月に第12類「BOXER」、「SUBARU BOXER」という2つの商標の出願と同時に、マツダの「MAZDA BOXER」の商標取り消しの審判を請求した。

マツダは中型トラックのボクサーの国内販売を1981年ごろに終了してから長い年月が経っていた。商標法第50条の規定によって、継続して3年以上、日本国内で当該指定商品の商標を使用していないことから、その登録は取り消されるべきであるというスバルの主張であった。

マツダは申し立てに対して反論することはなく、「MAZDA BOXER」の商標が取り消された。その結果、スバルが出願していた「BOXER」と「SUBARU BOXER」の商標は認められ、2004年2月に晴れて登録されたのであった。

スバルが商品名などに「BOXER」の名前を使えるようになったのは2004年以降のことである。

〈文=ドライバーWeb編集部〉

ドライバーWeb編集部

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