2022/01/08 新車

戦略というより直感!? 新型ステップワゴンが先祖返りを決断したワケ

●ボックスシェイプがステップワゴン初期を思わせる

2022年1月7日にお披露目となった新型ステップワゴン。リヤビューに初代や2代目に対するオマージュ(尊敬する作品に影響を受けて似た作品を創作すること)を全体的に入れているのが特徴だ。その代表例が縦長のリヤコンビランプである。その意図や理由について、外観デザインを担当した花岡久和氏にお話を伺った。


●新型ステップワゴンのエクステアリアデザインを担当した花岡久和氏

■初代&2代目をモチーフに選んだ理由


●初代ステップワゴン(1996年5月)

「初代とか2代目ステップワゴンは、正直に言いますと、少し前までは古くてダサイと感じていた時期があったのです。ですがある時期を境に一周まわって“いいぞ”というのが来たという手応えがあったんです。というのも、若いデザイナーに初代とか2代目を見せると、『スッキリしていていいよね』という答えが返ってくる。これはもう一周まわって時代がきたなあと思いました。だから(新型のデザインに)取り入れようと。個人的にはやはり2代目とかが好きなんですよ。そういう絵を選んでプレゼンテーションしたら、みんなも無意識でそう思っていたのか、すんなり評価会で通ってしまったのです。そういった経緯で、(初代や2代目をモチーフにしよう)と言い出したのは私ですね。


●初代ステップワゴン(1996年5月)

初代、2代目のオマージュを入れたいというのは、誰かにやるようにといわれたわけではないですね。戦略としてやったというよりは、デザイナーの“暴走”、いやデザイナーの“考え”があってやったんですけれども(笑)、その意志をみんながなんとなく共感してくれて、製品化までこぎつけられました」


●2代目ステップワゴン(2001年4月)


●2代目ステップワゴン(2001年4月)

■細部までオマージュにこだわっている

「コーナー部分にあたる“C面の付け方”です。2代目は、角のところに斜め削ぎの面を一周まわしているんですよね。それを昇華して取り入れています。新型もルーフの角に斜めの面を1面入れたり、縦に“折れ”を通したり、そういうところは2代目の処理を参考にしています。

また、ボディのバランスは初代を参考にしています。新型はしっかりとしたボックスシェイプとするために、Aピラーを70㎜後ろに引いていますが、結局、Aピラーを引くと放っておいても初代&2代目にシェイプが似てきます。その段階で、(オマージュを)もうやっちゃえという空気になってきたという状況ですね。Aピラーを引いたのがまずありきで、(オマージュを)取り入れてしまおうよと。でも、絶対に古臭くはしたくないという思いがあって。ディテールは現代的にしていますし、デザイン技法的にも現代的な処理を入れています。


●新型ステップワゴン

じつは通常「比較車」というのをデザイン部門で買います。新車を開発する際に参考にする車両を買って、クレイモデルの横に並べたりするんですね。普通は欧州車などを買うんですけれども、今回は2代目のステップワゴンを中古で買いました。(ホンダの)和光研究所が買ったなかで、史上一番安い比較車でした(笑)。それで(新型のクレイモデルの)横に並べて置いておくと、やはり若いデザイナーたちは、このころのホンダ車はすごくいいよねと。あーこんなこともできる、こんなカラクリが付いている、この処理がカッコいいと。これはもう、やるしかないと(笑)。そう思って、(過去のモチーフを)どんどん適用していきました」

■ホンダはよく、デザインで過去を振り返りますよね?

「当然、25年以上の歴史のあるステップワゴンなので、できることだと思っています。N-ONEもN360のテーマをうまく使っていますし、そういった立ち返りは時々使いますね。だから、みんな何となく、あーそれをやりたいのね、気持ちはわかるという空気があって、ここまできました。ただ、新型のティザー公開(2021年12月10日)をやった瞬間に、(初代&2代目のモチーフを取り入れたことが)ここまで一瞬でバレるとは思わなかったです(笑)」


●N360(1967年3月)


●2代目N-ONE(2020年11月)

〈文=ドライバーWeb編集部〉

ドライバーWeb編集部

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