2021/12/27 コラム

あなたにはどんな思い出が? MEGA WEB閉館…22年の歴史を振り返る

●2021年内で閉館するMEGA WEB

2021年12月31日、東京お台場(江東区)の「MEGA WEB(メガウェブ)」が閉館します。「クルマのすべてを遊んでしまうアミューズメントスポット」として1999年3月19日に開業、22年と9カ月もの長期にわたり子供から大人まで、クルマに興味のない人からマニアまで幅広い層にクルマの楽しさを発信してきましたが、今年いっぱいでその幕を閉じます。

今回は、これまでMEGA WEBが発信してきたイベントや展示をちょっぴり振り返ってみたいと思います。

ちなみにMEGA WEBは、現行トヨタ車の展示、試乗、そして次世代技術の展示などを主に行う「トヨタ シティショウケース」、国内外のヒストリックカーをノスタルジックな空間で楽しむ「ヒストリーガレージ」、子どもたちが運転する楽しさや交通ルールを学べる「ライド スタジオ」という3つのパートで構成されています。

まずは「トヨタ シティショウケース」から。その名前の通りトヨタが販売しているモデルが一堂に展示され、見て触れることができますが、その他にも世界各地のモーターショーで発表されたコンセプトカーや日本未発売のモデル、モータースポーツ参戦車両など貴重なモデルが入れ替わり立ち替わり展示。何度訪れてもいつも新鮮な場所でした。


●一堂に揃った販売中のトヨタ車に見て触れられました。東京・池袋のアムラックス東京が2013年に閉館した後、これだけの数の新車を一気に見られるのはMEGA WEBだけだったと思います

「トヨタ シティショウケース」は初代86発売前のプロトタイプなどさまざまなコンセプトカーや貴重なワンオフモデルが次々と展示され間近で見られる穴場中の穴場でもありました。発売に至らなかった86のオープンモデルやサイオンFR-Sのオープンモデルもここに展示されていました。そして筆者が何より気に入っていたのは日本未発売のモデルの展示で、他の国内向け現行モデルの展示車と同じように乗り込んだり触れることができたことです。数々の展示の中でもコンパクトなアイゴやオーリス ハイブリッド ツーリングスポーツなどは日本でも売って欲しいと思ったものです。


●G’sモデル揃い踏み。初代トヨタ86がまだプロトタイプだったころには、ターボ装着のG’sバージョンも提案されていました(2010年)


●2012年にジュネーブモーターショーで発表された次世代スモールハイブリッド・コンセプトモデル「FT-Bh」。後ろに見えるのは欧州でのみ販売されていたステーションワゴン、オーリス ハイブリッド ツーリングスポーツ(2014年)


●初代トヨペットクラウンやランドクルーザー。よく見るとどちらも輸出仕様の左ハンドルです(2015年)

また屋外には試乗用のテストコースも用意。新車試乗のほか、様々な走行イベントも開催されていました。単なる展示用モデルと思っていたコンセプトカーがちゃんと走行する姿に驚かせられたこともあったりました。また、モータースポーツイベントではF1やWRC、WECの車両からヴィッツのワンメイク車両まで幅広いジャンルのマシンがメーカーの垣根を越えて走行を披露しました。振り返ると、ここでジェンソンバトンがホンダのF1マシンを走らせたのも貴重な時間だったかもしれません。ここのコースはモータースポーツ車両の走行には少々狭かったのですが、じつは至近距離で見られるというメリットでもありました。


●F1の走行をこの距離で見られるのはMEGA WEBならでは。ラルフ シューマッハー選手、ヤルノ トゥルーリ選手が来場し、館内でのトークショーなども行いました(2006年)


●ST185セリカのWRCマシンは藤本吉郎氏がドライブ(2007年)


●トヨタがル・マン24時間に挑戦してきた歴史です。トヨタTS010(2007年)


●MEGA WEB名物企画「DREAM DRIVE DREAM LIVE」はミュージックライブとモータースポーツのコラボレーションイベント(写真は2007年の模様)


●ヒストリックラリーイベントのゴールとなったり、中庭はいつも賑やかでした(Caro Gran Sport RC/2006年)

国内外のヒストリックカーをノスタルジックな雰囲気のセットの中で楽しむ「ヒストリーガレージ」。じつは「トヨタ シティショウケース」とは少し離れていて、同じ敷地内のショッピングモール、ヴィーナスフォートを通って行き来するために買い物や食事を楽しんだついでにクルマを楽しむ人がいたり、その逆だったりと、そのレイアウトはMEGA WEBの来場者の幅の広さと気軽さに一役買っていました。また、なかなか凝った作りの展示や貴重なクルマは素晴らしく、ミニカーや自動車雑誌を数多く揃えたコリドーもあり、そちらも見応えのあるものでした。


●モチーフは古いヨーロッパの街並みでしょうか。ちょっと異国情緒がただよう展示空間でした(2010年)


●スクリーンで流されているのは貴重な国内外のクルマのコマーシャル映像。立ち止まって見入ってしまうこともしばしばありました(2013年)


●歴代クラウンをはじめトヨタ車が並ぶ展示。このころトヨタでは創立75周年を記念して「TOYOTA75」という企画展を愛知県の「トヨタ博物館」をはじめパリのショールーム「ランデヴー・トヨタ」やカリフォルニアの「トヨタUSAオートモービルミュージアム」でも同時開催していたこともあり、こちらも「TOYOTA75」の東京会場といった趣でした(2013年)


●1962年の全日本自動車ショーに参考出品されたパブリカスポーツが復元され展示されていました。復元製作過程の写真展示もなかなかの充実ぶりでした。パブリカスポーツはトヨタスポーツ800の原型とも言えるモデルです(2013年)

「ヒストリーガレージ」の展示内容は貴重なクラシックカーからモータースポーツ車両にまでおよぶ幅広いもので、とんでもなく貴重な復元車だったり、メーカーの枠を超えたモータースポーツ車両だったり、時にはちょっとだけ懐かしいけど今でも街で見かけるクルマだったりと何でもアリの空間は不思議と居心地のよい空間でした。施設内にあるカフェが元F1ドライバーがプロデュースするイタリアンバール「アレッサンドロ・ナニーニ・カフェ」だった時期があったり、レストア室があったりと隅から隅までクルマ好きのツボを刺激しまくっていたのもこのエリアです。


●ル・マン関連の展示は比較的多かったように思えます。今やWECの覇者となったトヨタのチャレンジの歴史もここで楽しめました。共に戦った日産やマツダの展示もあったように記憶してます(2005年)

閉幕を控えた2021年のヒストリーガレージは以前の欧州的雰囲気から一転。2度目の東京オリンピックが開催されたことにちなんで館内全体は最初のオリンピックが開催された1960年代の東京の雰囲気に塗り替えられています。かつてガソリンスタンドだった場所は大衆酒場に。フルーツ売り場は洋品店に。昭和の香りいっぱいの街で22年9カ月の幕を閉じようとしています。


●かつてガソリンスタンドだった場所には・・・(2010年)


●まさかの大衆酒場に。本屋やおもちゃ屋もできました(2021年)


●かつてフルーツが並べられていた路地には・・・(2011年)


●立派な洋品店が建ちました(2021年)

「ライド スタジオ」は子どもたちが運転する楽しさや交通ルールを学べるエリアです。残念ながら筆者は訪れる機会があまりなかったのですが、ミライや燃料電池バスSORAキッズカーはちゃんと水素で動き、小学生から乗ることができる電気自動車も用意されたりと、これからのクルマを楽しむ世代に自動車メーカーが本気で取り組んだ仕掛けがいっぱいでした。


●就学前の子どもでも乗車できるSORAはちゃんと水素燃料電池で走ります

MEGA WEBは自動車博物館にも負けない展示車の充実ぶりと工夫をこらしたアトラクションで自動車ファンのみならず、お台場を訪れた多くの人に自動車の魅力を発信してきました。オープン当初掲げた「クルマのすべてを遊んでしまうアミューズメントスポット」のコピーに偽りはなく、累計1億2700万人もの来場者を楽しませてくれました。その閉幕はちょっぴり残念でもありますが、これまでの活動への感謝とともに生まれ変わるお台場にクルマの魅力、楽しさを発信する新しいスペースができることを期待しています。

〈文と写真=高橋 学〉

ドライバーWeb編集部

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