2021/12/21 コラム

野生なのに超フレンドリーな馬を接写!「三好秀昌のニッポン探訪・取材ウラ話 第23回〜野生馬」

ドライバー2020年3月号からスタートした新連載「(じつは)動物カメラマン 三好秀昌の『ニッポン探訪』」。日本全国をSUVで駆けまわり、かわいい動物や最高の絶景を撮影してしまおう!という企画です。第23回は宮崎県・都井(とい)岬で撮影にチャレンジした『野生馬』。撮影テクニックやクルマのインプレッション、その地域のグルメやお土産情報など、取材ウラ話をいろいろと紹介します。
 
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馬たちの美しい楽園のリアル
 
「ああ、野生とはこういうことなんだな~」
 
最初に都井岬で馬を見たときにそう思った。
牧場などで手厚くケアされた馬たちは、ブラッシングされ、毛並みが美しく、草ひとつ体についていないイメージがある。
しかし、ここ都井岬の野生馬はそうではない。当たり前だが自由で彼ら任せなのだ。
ある馬などはたてがみにびっしりとひっつき虫(雑草の種)がくっついているうえ、枯れ草が引っ掛かり、それがまるで冠のように見えて、ほほえましかった。
 
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それで奔放に走りまわるとこうなるんだと思った次第。
またひっつき虫が色とりどりなのだ。新しく付いたのは緑で、古くなると乾燥して茶色くなり、2つの色の間にグラデーションが生まれていろいろな色に発展していく。
 
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小松ケ丘という草山に登ると馬たちが点々と見える。
バックには紺碧の海。スケールが大きく、色合いに富んだ景色はまるで楽園のようだ。

しかし足元をよく見て歩かないと“グニュ”という感触とともに思わぬ悲劇に見舞われる。
緑の草原に馬がたくさんいるだけに、そこかしこに馬糞(ばふん)が散乱しているのだ。
 
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まさに「夜目遠目(よめとおめ)」という熟語そのままの世界である。
 
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都井岬の魅力は野生馬だけではない。
扇山(おうぎやま)の近くには自然体で穏やかに立ち並ぶお地蔵さんたちが。ここは九州八十八カ所の霊場のひとつだ。
強く明るい日差しのもとに並ぶ石像は一つひとつに特徴や個性がある。オイラが石段の途中で野生馬に“通せんぼ”された、海に面した御崎神社も独特の雰囲気で楽しめる。
 
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ここは蘇鉄(そてつ)の自生地でもあり、南国風の植物3000本が広がっている。自生北限地として国の特別天然記念物に指定されている。
ちなみに、馬はこれをバリバリと食っておりました。
 

 
ホンダらしいアイデアたっぷり
 
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ホンダ ヴェゼルは色みのせいもありなかなか精悍に見える。カラードフロントグリルのモデルだけに、明るい色合いのモデルよりスポーティさが強調されているのだ。
クルマの印象もボディカラーによってずいぶん大きく変わるものだと再確認。

ハイブリッド車なのでモーター走行時の静かさや、しっかりとした操縦性などが特徴だが、一番の美点は“とっつきやすさ”である。
運転席に座り、パッと走り出しても慣れ親しんだマイカーのような感覚で走れるのだ。車幅感覚もつかみやすく取りまわしもラクなので、ドライバーに優しい。
 
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個人的に“THE HONDA”だと思ったのは、独自のセンタータンクレイアウトとリヤシートのダイブダウン機構が生み出すフラットなラゲッジスペース。からくり感満載で、シートの下のリンクが動いてゴキゲンなスペースが出現する。
 
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SLブームとスーパーカーブーム
 
宮崎県では、野生馬の撮影以外にもうひとつやってみたいことがあった。
それは“あの場所を訪ねて”だ。
1974年.世の中がSLブームに沸いていたころの夏休み、オイラは南九州の線路っ端にいた。じつに47年ぶりの日豊本線だ。
 
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それがどれほど感慨深いものになるか密かに楽しみだったが、意外とあっさりとしたものだった。
 
うるっとくることもなく、ああ、この景色がまだあるんだ!という感じ。
なぜなら当時のことをほとんど覚えていないのだ。どこもけっこう駅から遠い場所だから歩くのも大変だったはずなのだが、記憶にない。
 
写した蒸気機関車は覚えている。だが、それをどれだけ興奮して出迎えたか、記憶が呼び覚まされない。
 
思い出すのはこのあたりの産物のつぼ漬けがとてもおいしく、大きな竹の筒に入ったものを買って帰ったことぐらいだ。
そういえばこの田野のエリアの平地は一面、大根畑である。
 
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今ごろは収穫され、干すための巨大な大根棚が設置されていることだろう。場所によってはライトアップされている。
 
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この清武川の鉄橋と築堤を行く列車を写したのはよく覚えている。日本で最後の蒸気機関車が引く定期急行列車だったからだ。
 
あのころは世のなか上げてのSLブーム。ものすごい数の人が線路端にあふれていた。この撮影場所もすごい熱気だったはずだ。
撮影した日付を見ると、なんと大みそかである。
その後、正月をどうやって迎えたかなんて何ひとつ覚えていないのが残念だ。
SLブームは大人まで巻き込んでの狂乱だったが、次のスーパーカーブームは子供たちが中心だった。
 
おもしろいことに田野のすぐ近くにはスーパーカーの聖地のようなF.pazuというガレージがある。山と大根畑が広がるエリアに艶やかな色とフォルムのクルマたちが集っているのはなかなかおもしろい。
 
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本業は発電機やコンプレッサーの修理だそうだ。永遠のスーパーカー少年のようなオーナーが手厚くメンテナンスしてくれるガレージなんて、想像しただけでも楽しくなってくる。
 
F.pazu
宮崎県宮崎市清武町今泉字上の原甲3608番地11
TEL:0985-89-2080
https://f-pazu.shopinfo.jp/
 
 



地鶏に伊勢エビ……宮崎グルメを満喫
 
宮崎といえば地鶏のイメージ。
その隠れ家的なレストランが青島の近くの、国道220号からは少し外れたところにあった。
BBQスタイルで食べる地鶏と霧島赤鶏の卵かけごはんが絶品だった。
 
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七輪炭火焼 居心
宮崎県宮崎市折生迫5636
TEL:0985-65-2140
営業時間:11:00〜15:30
定休日:月曜日 ※月曜日が祝日の場合は火曜日
https://shichirin-igokoro.com/
 
そして、日南海岸の内海には巨人軍の選手がよく訪れる野島食堂がある。ここは伊勢エビ料理が名物だ。
 
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野島食堂
宮崎県宮崎市内海5456
TEL: 0985-67-0111
営業時間:11:00〜18:00 ※18:00〜は予約制
定休日:不定休
 
なんとここは、かつて鬼の洗濯岩の横を走る日南線の蒸気機関車を写した場所のすぐ近くだった。
 
国道沿いに大きなレストランができていて正確な撮影場所が特定できなかったが、野島食堂の大将に聞くとその場所は一発で判明。
 
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かつてただの丘だった場所にはCinema Heavenという手作り感満載のカフェができていた。お願いしてここの展望デッキに入らせてもらうと、こここそ昔、蒸気機関車を写したポイントだった。お店のオーナーと景観に対するセンスがシンクロした気がした(笑)。
 
今、ここ日南線は土砂崩れの影響で列車は走っていない。風光明媚な路線だけに、なんとか復旧してもらいたい。
 
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今回のクルマのヴェゼル e:HEVをお借りしたのは、Honda Cars 宮崎 花ケ島南店。
昔からの自動車ディーラー街である花ヶ島にある販売店だ。一家に1台ではなく1人1台の、クルマ依存度が高い宮崎県民の足を提供する地元密着型のお店である。
 
Honda Cars 宮崎 花ケ島南店
宮崎県宮崎市花ケ島町新地橋1134
TEL:0985-25-7031
営業時間:10:00〜18:30
定休日:水曜日
https://www.honda-minamikyushu.co.jp/shop_hanagashima-m/
 

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都井岬で泊まった黄金荘は目の前が海で絶景だった。
建物は少々くたびれてはいるものの(笑)、トビウオの刺身やゾウリエビの料理も変わっているうえにおいしかった。
馬たちも宿の目の前にまでやってくるワイルドなシチュエーション。
 
都井岬黄金荘
宮崎県串間市都井岬黄金荘
TEL:0987-76-1029
https://www.minshuku-ougonsou.com
  



馬とフェリー、そしてオイラ
 
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馬にはそれほど近づけないだろうという先入観があり、超望遠レンズで撮影することを想定していた。
 
実際にそのシチュエーションが多かったのだが、馬たちがあまりにも人なれしていて近づけるし、また近づいてきてしまう。
子馬などは地べたにくっついて居眠りまでし始める。
 
風景用に24-105mmレンズをポケットに忍ばせていたのは好判断で、くつろいだ馬の表情をアップで撮ることができた。
まさか野生馬を24mmで撮影するとは思わなかったが、思い込みや先入観で機材をセレクトしてはいけないとあらためて思った次第。
 
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後ろのフェリーまで少しでもピントが来るように馬に近づき200mmまで焦点距離を下げ、できるかぎり絞り込んで撮影した。
 
以前は東京から日向までだったサンフラワーは今、大阪から鹿児島・志布志まで航行している。かつてラリーに行くために乗ったので懐かしい。
久しぶりにマイカーで長距離フェリーの旅もいいな、と思い始めた。
 
 
「今回の機材」
カメラボディ:SONY α1
レンズ:FE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS
撮影モード:マニュアル
シャッタースピード:1/400秒
絞り:F20
ISO:1600
 



「オススメのSUV……ホンダ ヴェゼル」
■e:HEV プレイ 主要諸元
(ー/FF)
全長×全幅×全高:4330mm×1790mm×1590mm
ホイールベース:2610mm
最低地上高:195mm
車両重量:1400kg
パワーユニット:直4DOHC+モーター
総排気量:1496cc
エンジン最高出力:78kW(106ps)/6000〜6400rpm
エンジン最大トルク:127Nm(13.0kgm)/4500〜5000rpm
モーター最高出力:96kW(131ps)/4000〜8000rpm
モーター最大トルク:252Nm(25.8kgm)/0〜3500rpm
燃料/タンク容量:レギュラー/40L
WLTCモード燃費:24.8km/L
価格:329万8900円
 


〈文と写真〉
三好秀昌 Hideaki Miyoshi
●東京都生まれ、日本大学芸術学部写真学科卒業。八重洲出版のカメラマンだったが、ラリーで頭角を現し、そのうち試乗記なども執筆することに。1995年、96年にはサファリラリー グループNで2年連続優勝。そのほか、国内外で数多くのラリーに参戦。写真家としては、ケニアでの豹の撮影など、動物をおもな題材としている
YouTube「Maddogチャンネル」

ドライバーWeb編集部

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