2021/12/17 カー用品

ブリザックVRX3は氷上性能すごいって。溝なしタイヤで最新コンパウンドを体感してみた

ブリヂストンの新作スタッドレスタイヤ「ブリザック VRX3」は、氷上性能が大幅に進化。従来型と比べて20%も向上したというから驚きだ。実際、どこがどれだけ進化したのか? 氷上性能をとことん試してみた。
 


BLIZZAK_VRX3

ブリザックVRX3の2回目の試乗会が「三井不動産アイスパーク船橋」で行われた。2回目の試乗会ということもあり、今回はちょっと変わった趣向の体験が用意されていた。
 
試乗会で用意されていたのはVRX3と、VRX3のコンパウンドで作られたスリック(溝なし)タイヤ。
 
BLIZZAK_VRX3
●スリックタイヤ(最新発泡ゴム)

一般論でいうと、スタッドレスタイヤのグリップ性能は接地面積が広いほどグリップ性能が高いのでスリックタイヤが最強。ただし溝がないと手応えがあいまいで、ハンドルの利きは節度がなく鈍い。
 
溝がつけられると、絶対的なグリップ性能はスリックタイヤに比べ落ちるが、そのぶんハンドルの手応えがよくなし、ハンドル操作に対してクルマが反応よく動いてくれるようになる。
 
BLIZZAK_VRX3
●スリックタイヤ(最新発泡ゴム)

さっそくVRX3のコンパウンドで作られたスリックタイヤを装着した車両で試してみる。文字どおり路面に吸い付くような強いグリップ感がある。ハンドルの利きもグリップの強さが影響しているのか、ヌルヌルした感触は少なめ。もっとも、エッジの効いたシャキッとした動きはなく、そういう意味では応答は鈍い。とはいえ意外にスイスイ走れてしまうのに驚いた。
 
ただし、一旦グリップの限界を超えて滑り出してしまうと、すっぽ抜けたようにツツーッと滑りだしてしまう。
 
BLIZZAK_VRX3
●ブリザックVRX3

スリックタイヤのグリップが強く感じられたことから、VRX3のグリップはそれなりに落ちているのだろうと想像していたのだが、いざ走らせてみると、意外なほどグリップを強く感じる。だいぶ昔に体験したスリックタイヤとVRXとの落差と比べると、VRX3は想像を数段上まわるグリップ性能を持っていた。グリップ性能の落ち込みがそれほど感じられないのだ。しかもハンドルが効く。
 
BLIZZAK_VRX3
●ブリザックVRX3

ハンドルを切り出すと、反応よくスイッと向きを変えてくれる。この応答のよさはVRX3の特徴の一つ。コンパウンドが氷の路面に密着し、しっかりとグリップを出しているといった感触がある。
 
BLIZZAK_VRX3
●ブリザックVRX3

これはトレッドデザインの効果によるものだと推察できる。トレッド面になるべく水を流さないようにと考案された「端止めサイプ」や「L字ブロック」が効いているのだろう。しかもコンパウンドは太く長い気泡(通路と呼ばれる)を楕円にしたことでスポイト効果が表れるほど吸水性能がよくなっている。これがスリックタイヤでもグリップを高くしている理由なのだと思うが、他方、ブロックのエッジやサイプのひっかき効果を引き出す役割も果たしているのだろう。
 
BLIZZAK_VRX3

実際のところ、スリックタイヤでは吸い付くようなコンパウンドと氷の路面の密着の強さからくるグリップ感があったが、VRX3には密着によるグリップ感に加えて爪を立てて氷の路面を捉えているような、エッジの効いたグリップ感があり、これがかなり強く感じられるのだ。
 
氷とタイヤの間に発生する、あるいは侵入してくる水を徹底的に排除することで、タイヤに刻まれたトレッドパターンやサイプによるエッジがより効果的に機能しているのだ。

BLIZZAK_VRX3
 
試乗会では、この2つのタイヤのほかにブリシストンが初めて発泡ゴムを搭載した「ブリザックPM-20」を復刻、比較試乗することができた。

BLIZZAK_VRX3
●初代ブリザックPM-20(復刻)

試乗してみると、案外走れるなと思う反面、特にスケートリンクの壁に近づこうとすると、クルマが正確に動いてくれない。また思ったところで止まってくれないかも、と不安を感じた。当時のスタッドレスタイヤの走行フィールを思い出すとともに、20数年の時間の流れとブリザックの進化の大きさを実感した。
 
BLIZZAK_VRX3 

〈文=斎藤 聡 写真=岡 拓〉

ドライバーWeb編集部

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