2021/12/10 ニュース

価格5000万円!トムスが作った超本格ドライビングシミュレーター公開。初心者からプロまでこれ腕を磨ける…眼球運動や脳波測定なども分析可能

●臨場感がスゴすぎる!

レーシングチームがシミュレーターをつくると



12月10日に「トムス」が新たなドライビングシミュレーターを公開した。トムスとは、スーパーフォーミュラやスーパーGTなど、国内トップカテゴリーに参戦するレーシングチーム。その新たなドライビングシミュレーター「TOM’Sマルチシミュレーションシステム」は、球体スクリーンやモーション装置などにより、空間視認知や姿勢認知を正確に再現し、臨場感あふれる圧倒的な没入感を実現。さらにデジタルツイン(現実世界で収集したさまざまなデータを、コンピューター上で忠実に再現する技術)で、あらゆる空間情報を視覚化。眼球運動や脳波測定など統合分析系の実装も可能で、フィジカル空間とバーチャル空間を融合させた、かつてない体験を作り出せる本格的なレーシングシミュレーターである。


●本体価格5000万円(税込み)の大型半球体スクリーン仕様のシミュレーター。ハイエンドバージョンだ

トムスでは、「フォーミュラカーを操ってみたい」「サーキットをもっと速く走りたい」「レーシングドライバーになりたい」というモータースポーツファンの夢を叶えるために、FIA-F4マシンを使ったフォーミュラ体験プログラム「トムス・フォーミュラ・カレッジ(TFC)を開校しているが、乗車前の慣熟やスキルアップ、レース前のトレーニング、データロガー解析やプロドライバーによる指導といった、リアルとバーチャルを連動させたプログラムにこのシミュレーターを活用していく。



FIA-F4はフォーミュラカーの入門カテゴリーだが、未経験者にとっては敷居が高く、なにより市販車との運転感覚の違いに戸惑うはず。遠方のサーキットまで時間をかけて通い、ドキドキ、ハラハラしながら実車の扱い方を学んで……という前段階で、もっと気軽に、例えば都会のビルや商業施設に設けられたシミュレーターでフォーミュラカーを体験してもらい、モータースポーツの裾野を広げるという狙いがある。バーチャル体験だけで終わってしまえば単なるアミューズメントだが、その先のリアルワールドでも運転スキルに応じたさまざまなフォーミュラ体験をできるのが名門レーシングチームでもあるトムスの強みだ。



筆者も都内某所に設置されたシミュレーターを体験してみた。マシンの動きを作り出す並進・動振装置が組み込まれたモーションシステムの上に、トムスのデザインセンターが製作したカーボンモノコックを設置。映像は球体スクリーンに投影される仕組み。コクピットのタイト感は実車そのもので、ドライビングポジションは「バスタブに浸かる」感じ。6点式のセーフティハーネスで締め付けられ、足を投げ出す感じで着座するので、アクセル/ブレーキ/クラッチペダルが遠い。車速やラップタイム、エンジン回転数を表示するディスプレイを内装した横長のフォミュラステアリング、6速のパドルシフトまで実車のまんま。





設定コースは富士スピードウェイ・レーシングコース。1周目でコースを覚えて、2周目から徐々にペースアップ……のつもりだったが、わずかなブレーキ操作のミスも見逃さない。コーナー侵入で減速が足りずにブレーキを踏み足すと、あえなくタイヤロックしてスピンに陥りグラベルの餌食に。スピンする際の荷重が抜ける感じや、グラベルから脱出する際のタイヤの振動、縁石に乗り上げた際のステアリングのキックバックまでリアルに再現されているのには驚いた。わずか4周の体験なのに汗はビッショリ、腕や脚の太腿もパンパンに張って、まさに「圧倒的な没入感」だ。NA・2Lのトヨタ3ZR-FE型エンジンをベースに製作したトムスのF4用エンジン、TZR42型のサウンドもエンジン回転数に合わせて音響システムで再生されるので、実車をドライブしているのと変わらぬ臨場感を味わえる。



「フォーミュラ・カレッジの体験やトレーニング、レーシングカーの開発だけでなく、未来の交通システムの研究・開発にも応用できます」と語る、経営企画室 室長の田村吾郎氏。疑似空間なのでサーキットはもちろん、高速道路や市街地、山間地など走行条件を変更すればレベル4・5の自動運転や次世代モビリティの開発、シミュレーションにも活用でき、実車を使うより安全で効率的なテストが可能になる。トムスでは今後、マルチシュミレーションシステムの販売、レンタル、コンサルティングを積極的に行っていく。


●(右)株式会社トムス 経営企画室 室長 田村吾郎氏 (左)株式会社トムス 先進技術開発室 室長 藤本哲也氏

共同開発
スクリーン/表示システム:WONDER VISION TECHNO LABORATORY株式会社
シミュレーターシステム:EXCITEC株式会社

〈文と写真=湯目由明〉

ドライバーWeb編集部

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