2021/12/01 コラム

踏み間違い死亡事故の88%は高齢者…加害者には厳罰!で問題は解決するのか

●加害者を厳罰して、なくなるものなのか?

■死亡事故の88%は高齢者



高齢者によるブレーキ・アクセル踏み違い事故が続々と起こる。ノーブレーキどころかアクセルをベタ踏みで突っ込むわけで、被害は甚大となる。なぜこうも続くのか。3つのシンプルな理由が考えられる。

1、正反対のペダルが足もとに

ブレーキとアクセルは、正反対の働きをする。正反対のペダルを、運転席の足もとの暗がりに接近して2つ並べ、目視確認することなく、ひっきりなしに踏み換える。人間に「ついうっかり」はつきものだ。たまに間違えて踏む、それは自然なことといえる。

2、死亡事故の88%は高齢者

「アクセル・ブレーキの踏み違い交通事故件数の推移」という文書を、情報公開法を利用して警察庁からゲットした。

踏み違い事故は、2016年は5085件、どんどん減って2020年は3020件。3020件の年齢層別の内訳はこうだ。

・15歳以下   0件
・16~24歳 474件
・25~29歳 205件
・30~39歳 266件
・40~49歳 281件
・50~59歳 288件
・60~64歳 201件
・65~74歳 603件
・75歳以上  702件
・合計   3020件

16~24歳が踏み違い事故をけっこう起こしている。運転に不慣れなせいだろう。そうして、65歳以上がどかんと多い。世界保健機関(WHO)の定義では65歳以上を「高齢者」という。高齢者の合計は1305件。踏み違い事故の約43%を高齢者が起こしている。

なぜ高齢者が多いのか。一般的には、高齢になるほど、頭の中で情報を処理する能力が衰えるという。例えばスーパーや病院などの駐車場では、なるべく玄関に近い駐車枠を探しながら、他のクルマや人や自転車に注意を払う。赤信号で停止するよりずっと多くの情報を同時に瞬時に処理しなければならない。そのうえで、的確にハンドルを切りつつ、足もとに2つ並んだ真逆のペダルをひんぱんに踏み換える。予想外のことが突然に起こったとき、頭の中での情報処理が間に合わなくなりやすい。踏み違い事故が高齢者に多いのは、これも自然なことというべきだろう。

次に、そのうち死亡事故になった件数を見てみよう。死亡事故に限って見ると、2016年は47件、その後増えたり減ったりして、2020年は57件。この5年間で最も多い。年齢層別の内訳はこうだ。

・15歳以下   0件
・16~24歳  1件
・25~29歳  0件
・30~39歳  0件
・40~49歳  1件
・50~59歳  3件
・60~64歳  2件
・65~74歳  15件
・75歳以上   35件
・合計     57件

若年層も踏み違い事故をけっこう起こしているが、死亡事故に至ったのは1件のみ。一方、高齢者は、57件中50件、約88%! 高齢者の踏み違い事故はかなり多く、しかも非常に死亡事故になりやすいという、恐ろしい事実が見てとれる。

高齢者の踏み違いはなぜ死亡事故に結びつきやすいのか。若い人たちは「あっ、踏み間違えた!」と気づくのが速い。ブレーキへ踏み替えるのも速い。事故っても被害は小さくすむ。一方、高齢者は、踏み違いに気づくのが遅れがちだ。ペダルを踏み替えるのにも、若い人たちより時間がかかる。あわてると、「ブレーキを踏まねば!」のうち「踏まねば!」だけで頭がいっぱいになり、いま足が乗っているペダル=アクセルをべた踏みしてしまうことがあるという。それもまた自然なことといえよう。

ドライバーWeb編集部

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