2021/09/28 コラム

76年前に墜落した爆撃機B-29のタイヤが足立区の道端に…驚きの保存状態だった

●私有地に佇む爆撃機B-29のタイヤ


■ひっそりと佇むタイヤ…思ったよりも朽ち果てていなかった


そして本題のタイヤだが、なんと畑の隅にひっそりと置かれたままなのだ。しかも私有地である畑に入ることなく、歩道からじっくりと見ることができる。土に3分の1ほどが埋まり、立った状態。およそ76年もの月日が流れたとは思えない保存状態。特徴的なダイヤモンド型のトレッドもしっかり刻まれており、ゴム自体は当然硬化してはいるもののボロボロとまでは言えない見た目でたたずんでいた。当時の写真と見比べるとよく似たトレッドデザインのタイヤを装着していたことから、このタイヤはB-29のもので間違いないだろう。



それにしても風雨にさらされ、直射日光にも当たり続けてきた(以前は近くに木があり日陰になることが多かったようだ)わりにトレッドゴムが劣化していないように見えるのは、当時からとてもいい材料を使っていたからだろうか。ちなみにタイヤメーカーはもちろんアメリカのグッドイヤーだ。

残念ながら歩道側からはタイヤの裏面しか見えないためグッドイヤーロゴは確認できないが、資料によると1898年にアメリカ・オハイオ州で誕生したグッドイヤーのロゴマークが表側(歩道の反対側)に刻まれている。ロゴの中央にはシンボルマークの「ウイングフット」が入っている。ちなみにウイングフットは、古代神話の神マーキュリーが由来で、足元に羽をたずさえたマーキュリーは、吉報の使者だという。タイヤにははっきりとオールウエザー(全天候型)、さらにMAED IN U.S.A.と刻まれている。



劣化を感じさせないトレッドに対してビード部は朽ち果ててしまっている。通常ビード部にはワイヤーを使うため、サビて脱落したのかもしれない。ビード部から簾(すだれ)のように垂れ下がるのは、カーカスの一部かタイヤコードだろう。現在のタイヤではナイロンなどが使われている部分だが、これを見ると綿素材のようにも見える。しかし、腐っていないように見えるからナイロンなどが劣化したものかもしれない。



タイヤには強度を示す「16PLY」との刻印が。現在では「16PR」と表記するが、「PR」はプライレーティングの意味だから当時は「PLY」と表記していたのだろう。その下の「56」の数字は不明だが、さらにその下、「SMOOTH CONTOUR」は、滑らかな外形という意味示す商品名だったかもしれない。また、旗のマークもあり、その下には製造番号らしきものも見てとれる。

戦争があったことを忘れないためにも、このタイヤはこのまま置いておいてほしい。実物を見に訪れる際は、農業用ハウスが立ち並ぶ一角なので迷惑にならないようにしてほしい。

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〈文=丸山 誠〉

ドライバーWeb編集部

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