2021/09/23 ニュース

トヨタの水素エンジンカローラは日本を救う? 課題解決のため、レースの場を借りた水素社会の実証実験

スーパー耐久の鈴鹿大会(9月18〜19日)を走った水素エンジンカローラ


■鈴鹿の水素カローラは“戦えるクルマ”に



前置きが長くなったが、以前のレポートにもあったとおり、富士戦でもある程度の速さは備えていた水素カローラ。しかしGAZOO Racingカンパニーの佐藤恒治プレジデントによれば、今回の鈴鹿戦に持ち込んだ車両は「開発が非常に順調に進み、クルマとしてのフェイズが1段階上がった」という。

この水素カローラのエンジンは、GRヤリスが搭載する1.6L・3気筒ターボのG16E-GTSに、インジェクターを水素対応品(ガソリンのように液体ではなく、気体を噴射する)とするなどの変更を加えたもの。しかし富士戦では市販GRヤリス(272馬力)よりも出力では10%以上低く、アクセルを踏んでもトルクが立ち上がってこないなどドライバビリティにも問題を抱えていた。

しかし鈴鹿戦の車両では、エンジン性能は市販GRヤリスと全く同等にまで向上。ドライバーからのコメントも“パワーがないなりにクルマをどうまとめるか”という方向だった富士戦に対し、鈴鹿戦では“130Rでもっと空力を効かせたい”など、より速く走るための要求へと変化。実際に鈴鹿でのタイムは想定していたより約2秒も速かったという。

モリゾウ選手も「富士はST-5クラスと競争していたが、鈴鹿ではST-4クラスを直線で抜けるかも?くらいまで来た」とコメントしており、水素カローラの所属チーム・ルーキーレーシングの片岡龍也監督も「車重が重いのでタイムはST-4と同等だが、出力的にはST-2(=GRヤリスやWRXが参戦)に近いところに来ている」と述べる。

他にも、水素のチャージ口を車体左右に設け、両サイドから給水素を行う仕様として富士戦で4分30秒掛かっていた給水素時間を約半分に短縮。富士戦からわずか1.5ヶ月でこれだけの改良を行えたのは、次のレースという期限があるモータースポーツゆえのスピード感だと佐藤プレジデントは語る。「モータースポーツのノウハウでもっといいクルマを作る」を旗印に掲げる豊田社長の面目躍如といったところだ。

ドライバーWeb編集部

RELATED

RANKING