2021/09/03 新車

【これが本命か!?】ニューCクラスの隠し球、PHEVに試乗! EV走行100km超えの優等生セダン


■150km/hまで加速できるEV走行


ステアリング背面にはパドルスイッチが備わるが、EV走行時には、「D+」、「D」、「D−」の3段階に調整出来る回生ブレーキの切替スイッチとして機能する。「D+」ではワンペダルとまではいかないが、かなり強めに回生ブレーキが利くので、ある程度慣れが必要かもしれない。だが、これを駆使すれば、EV走行時でもなかなか積極的なドライビングが楽しめる。さらにはどんな走り方がより効率的か、頭を使いながら走る楽しさもあって、従来のCクラスとの違いをはっきりと感じることができた。

C300e

アウトバーンでも、追い越し加速のときを除いてエンジンは始動しない。スイスのアウトバーンは最高速度が120km/hに制限されるので、140km/hまで電気モーターのみで加速できるC300eにとっては、まだまだ余裕があるのだ。ドイツのアウトバーンの速度無制限区間で、何km/hまで電気モーターで出せるか試してみたところ、メーター読みで151km/hまで加速できた。

しかもC300eは、初代日産リーフを上回る、25.4kWhもの大容量リチウムイオンバッテリーを搭載しているので、電気モーターのみで110kmも走行できるのだ。実際、オンボードコンピューターで確認したところ、チューリッヒ〜イメンディンゲンの約110kmのうち97%、急速充電のあとに走行したイメンディンゲン〜チューリッヒ空港の約100kmのうち95%がEV走行だった。それでもバッテリーは0%になっていなかったので、掛け値なしにEVモードで100kmは走れる。

C300eは、もはや「ICEによるアシスト機能を備えたBEV」といった感じだ。もちろん100kmを大きく越える長距離を走る場合でも、給油さえすれば問題なく走れるので、そこはやはりPHEVなのだが、「限りなくBEVに近いPHEV」という印象である。日本の交通環境であれば、1日走っても1度もエンジンが始動しない、なんてことも十分に起こり得るだろう。

C300e

バッテリーの充電は、出力55kWの直流急速充電に対応していて、約30分でフル充電が可能だ。オンボードチャージャーも最大11kWに対応し、家庭用ウォールボックスでも数時間でフル充電出来る。充電時間の短さは、やはりBEVよりPHEVにアドバンテージがあると言える。BEVに興味はあっても充電時間に引っかかっているような人に、C300eはピッタリかもしれない。


■PHEVゆえの欠点も


ただ、気になる所がないわけではない。加速はパワフルで、Sクラス譲りのリヤアクスルステアリングを搭載するなど、シャシーも大幅に進化した新型だけに、特にスポーツモードを選択すると、かなりダイナミックな走りが楽しめるのだが、乗り心地がなんだかゴツゴツしているように感じられたのだ。スポーティに引き締められているというよりは、重たいパワートレインやバッテリーを支えるために固められているといった印象で、ストローク感が薄いのである。まだマイルドハイブリッドのモデルを試乗していないので、なんとも言えないが、新型のポテンシャルはこの程度ではないはず。来年のデリバリー開始までには、ぜひとも改善してもらいたいところである。

また、ラゲッジフロア下にバッテリーを搭載するため、フロアが持ち上げられていて、セダンは通常445Lのところ315L、ステーションワゴンは通常490Lのところ360Lと、それぞれ130Lも荷室容量が小さくなっている点も、購入する場合には要確認だ。

とはいえC300eは、EV航続距離の大幅な拡大によって、PHEVの新たな可能性を感じさせてくれるモデルであることは間違いない。実際に所有してみたら、そのうち「もうBEVでいいんじゃない?」と思うかもしれない。そういう意味では、今後のBEVの普及を後押しする絶妙なパッケージングを備えたモデルなのかもしれない。

<文=竹花寿実 写真=竹花寿実/メルセデス・ベンツ>


ドライバーWeb編集部

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