2021/08/30 コラム

最後のNSXはなぜ「タイプR」ではなく「タイプS」なの? 開発責任者語る

●LPL(ラージ・プロジェクト・リーダー)シニアチーフエンジニアの水上 聡氏

なぜ最後のNSXが「タイプS」だったのか? 開発責任者に聞いた



NSXの開発責任者を務めるLPL(ラージ・プロジェクト・リーダー)シニアチーフエンジニアの水上 聡氏に、2021年8月30日に発表されたNSX タイプSにまつわるあれこれを聞いた。


●手前は2代目NSXの2020年モデル。奥は初代NSX タイプS

■なぜ最後に「タイプS」だったのでしょうか?
どちらが先かみたいな話はあるんですけれども、もともとNSXを極めていきたいという思いで開発していまして、それが2022年(7月発売)のタイミングになったということが正直なところですね。

それでなぜ、タイプSにしたかということですが、やはり「タイプR」でも「タイプS」でもバッジが付くことではいいんですけれども、極めた証拠として「S」にしたかった。というのは「スーパー」なものを目指してやっていたこと。それと、「S」というのはホンダのスポーツの系譜であるということで、それのトップ・オブ・トップを目指したということでの「S」です。ただし、そのなかで私の場合は「タイプ」という文字はあってもなくてもよくて、本当は「NSX-S」でもよかったんです。でも、やはりわかりやすいのはタイプSだろうということで。

じつをいうと、タイプSという名前は、後で決まりました。でもタイプSの名前は、「意識は」していました。何かバッジは付けたいという感じで、特別なものとして。それが「S」と決まったわけです。

<※編集部補足>
海外の「アキュラ」ブランドでは、高性能グレードの呼称として「タイプS」を展開しており、2021年6月にスポーツセダン「TLX」にタイプSを設定。NSXタイプSは、その上をいくフラッグシップとして訴求している。


●NSXタイプS

■「タイプR」ではなかった理由
「タイプR」は、サーキットベストを追求し、なおかつ街なかでも使えますということで、手段として軽量化を行っています。タイプSはサーキットも走れますが、一番気持ちよく走れるステージとしてワインディングベストを追求した初代NSXの「タイプS」の系譜を踏襲しています。タイプSは、やはりグランドツーリングカーとしても使えるというのがポイントで、初代もそうだったように、快適性とタイプR並みの運動性能の両立。なおかつ、あらゆるシーンで幅広く使えます。そこが今回のクルマにはあると思っています。

ということで、せっかく3モーターのハイブリッドシステム「スポーツハイブリッドSH-AWD」をうまく活用して“極める”ということをやりたかったのです。最近、ホンダではあまり「タイプS」がないものですから。私が2004年のインテグラを(車体研究開発責任者として)担当していたときの「タイプS」は、エブリデイスポーツと言っていました。やはり、それは使い切れるスポーツ性能と、快適性能を持ち合わせた大人のスポーツ。毎日使っていただきたいという思いでやりました。やはり、どちらかというと、カチカチサーキット+あらゆるシーン(のタイプR)というよりは、それを両立させたものとして考えています。

今回のタイプSは、鈴鹿サーキットで2020年モデルと比較して、2秒ラップタイムを短縮していて、実力的にサーキットでもちゃんと走れますと。このようにシチュエーションを選ばないレンジの広さがタイプSの特徴です。

■生産終了に至った理由
まず法規制をにらんだときに、アメリカのエミッション規制が厳しくなると、かなりやらなくてはいけないことが出てくるはずなんですね。そういったことも考えまして、2代目NSXとしてはそろそろ役割を終えたかな、やり尽くしたかなというところが1つ。

それと、社内事情もあるのでなぜこのタイミングというのはハッキリとは申し上げられないですけれども、いろいろな諸事情を含めて総合的に考えて生産終了を決めました。当然、電動化に舵を切ったというのは大きな理由の1つではありますが、その1つの理由だけではなくて、先ほど言った法規制も含めて、総合的な判断でこの結論に至ったということなので、何か1つあげてくださいといわれても、それだけではありません。

■タイプSの開発が始まったときには生産終了が決まっていたのですか?
いや、そうではなかったです。開発は進めていました。現行の2代目が出てから、年次で進化していったなかで、極めるのはこのタイミングだなと決めていたものですから。開発の途中で生産終了の方針が会社として決まって、何としてでもこれだけはお届けするようにしたかったという思いです。だいぶ苦労しました。

■その方針を聞いたときには陰で泣いたりとか…
それはやっぱりつらかったですね。衝撃が大きかったです。でも、最後にある意味引き締めて、きちんとこれを完成させようというふうに思いましたね。いろいろな言い方があると思いますけれど、逆にこれを形にしたいという思いが強くなったかもしれないですね。

■最後にメッセージをお願いします
お客様にはクルマ全体を見ていただき、ホンダが出したスーパーカーというイメージをぜひ感じていただきたいと思います。正直「らしく」なったと思います。デザインにしても、全体のフォルム、佇まいというのを大事にしたので、前と後ろだけ変えたというような感じではないと思うんですね。最初からこの形があったんじゃないかというものができたと思います。そういった意味でのスーパーカーとしての存在感とか、佇まい。日本のホンダがやるとこういうものを出すというところを感じていただければうれしいです。

〈文=ドライバーWeb編集部〉

ドライバーWeb編集部