2021/07/29 カー用品

横浜ゴムの大型トラック・バス用スタッドレスタイヤ新製品「904W」を体感

●横浜ゴムの新型スタッドレス「904W」総合性能重視型

横浜ゴムの大型トラック・バス用スタッドレス「904W」は総合性能重視型


猛暑続きだが、この真夏に新製品を発表することが一般的なスタッドレスタイヤ。まるでファッションショーのようにシーズンを先取りして発表会が行われる。一部製品では先シーズンにプロトタイプの試乗会が北海道などで行われる。

多くのタイヤメーカーは乗用スタッドレスタイヤが試乗のメインだが、毎回ユニークなプログラムを用意しているのが横浜ゴムだ。過去にはスタッドレスタイヤ用の特別なコンパウンドを使ったスリックタイヤで、圧雪路を走るというメニューもあった。トレッドに溝がなく、レーシングスリックのようなタイヤを見ると、とても走れるとは思えないのだが、発進からトラクションがかかり意外にも普通に走れてしまう。



こうした面白い試乗はほかにも用意されていて、大型トラック・バス用のスタッドレスタイヤの同乗試乗がそのひとつ。大型トラックや大型観光バスなどはテストコースで試乗したことはあるが、ドライ路面ばかりで雪道を走った経験はない。だが、横浜ゴムでは継続的にドラック・バス用のタイヤ試乗を実施。さすがにステアリングを握らせてはもらえないが、同乗試乗を体験している。

今回、同乗試乗したのは2021年9月発売予定、新型スタッドレスタイヤ904W。横浜ゴムによると、大型車用のスタッドレスタイヤも細分化が進み、氷上性能重視型、総合性能重視型、摩耗/低燃費重視型の3タイプに分類されるという。氷上性能重視型の903ZWは、以前の北海道試乗会で勾配10%の急坂を上るデモを見学できた。903ZWのようなタイヤはおもに北海道や東北などアイスバーンが多い地域で選ばれている。新型の904Wは総合性能を重視しているタイヤで、広いエリアをカバーする使い勝手のいいモデルだ。


●新製品「904W」


●氷上性能重視型の903ZWのデモンストレーション

トラック・バスユーザーのスタッドレスの使い方は、大きく分けて3パターン。氷上性能を重視したようなタイヤは冬季のみに使用して、サマータイヤに履き替えるというのがひとつ。2つ目は、新品を秋に装着して冬、春、夏と1年を通して使い続け履きつぶしてしまうというサイクル。もうひとつは北海道の一部のユーザーに見られる特殊な使い方。秋に新品を装着し、冬にさらに新品に買え替えて春までに履きつぶす。春から夏までは最初の装着した摩耗タイヤを履きつぶすというパータンだという。北海道のトラックユーザーの一部は年に2回新品を履く場合もあるというのだから驚く。厳寒地で安全に運行するのには、多少のコスト高も仕方がないのかもしれない。

いずれにしてもトラック・バス用のスタッドレスタイヤは高価なため、履きつぶす傾向のようだ。もちろん乗用車用と同様にスタッドレスとしての寿命が尽きても、サマータイヤとして使えるわけだ。夏に東京を走っているトラックやバスのなかにはスタッドレスを装着したままの車両をよく見かける。降雪地以外でも長距離を移動する大型車は、急な降雪が予想されるルートを走る可能性があるためスタッドレスタイヤの装着が不可欠だ。安全のために冬季に新品タイヤを装着したいというのは多くの事業者に共通している。

素直なグリップ感…疲労軽減にひと役買うはず



今回の904Wはボルボのトラクターヘッド(けん引車)に装着されていて、連結器(フィフスホイール)の部分にはトレーラーけん引時と同じになるようにウエイトを積載している。走行コースはフラットな圧雪路でパイロンスラロームを行う。まるでハシゴのようなアシストグリップを握って着座位置の高い助手席にアプローチするが、雪で足を滑らせればケガをする可能性が高い。なんとか慎重に助手席に座ってシートベルトをすると発進。後輪(後軸の駆動輪)にトラクションがしっかりかかっているのがわかり、ガッツリと路面の雪を噛んでいるのが伝わってくる。通常トレーラーをけん引していると発進時にトラクターヘッドは前上がりになり、さらに後軸に垂直荷重がかかるが、ヘッドだけでもウエイトを積んでいるためトラクションがいい。



パイロンスラロームに入り、ステアリング操作と横Gを助手席から観察していると、素直に横Gが高まっていくのがわかる。大型車用だけあってステアリングレスポンスより、しっとりとした安心感のあるグリップとGの高まり感だ。大型トラックのドライバーにとってレスポンスより、しっかりした操舵感が優先されるのは当然のことだ。パイロンをすり抜けて切り返すときにもスムーズなグリップ感が伝わってくる。同乗試乗なので限界値は試せなかったが、テストドライバーは結構なスピードでスラローム実施。それでも横Gが抜けるような場面はなく終始安定した走行だった。

ブレーキングでも制動Gの立ち上がりがスムーズでガッチリと圧雪をつかんでいるのが伝わってくる。助手席であってもそう感じられるのだから、ステアリングを握っているドライバーはより安心していられるはずだ。乗用タイヤはドライビングの楽しさも要素のひとつだが、大型用はドライバーが安心してドライビングできることが重要で、疲労軽減が優先される。試乗コースは平坦な圧雪路という好条件だったが、いずれにしろ904Wの走行性能の高さを実感した。

904Wは従来品のSY397と比較すると、耐摩耗性と耐偏摩耗性が向上しているという。もちろん氷上制動や雪上制動などの性能も向上しているが、ロングライフ化することでメンテナンス費を抑える効果がある。耐摩耗性は10%以上向上していて、氷上制動性能は4%、雪上制動性能は2%向上。これは溝容積と接地面積をアップするワイドトレッドによって、氷上性能と耐摩耗性を両立させているわけだ。また、トラクション性能はセンターのブロックをワイドにすると同時に、レイアウトを最適化することで性能を向上させた。

乗用スタッドレスタイヤは今シーズンも進化がめざましいが、大型トラック・バス用も確実に進化を続けている。

〈文=丸山 誠〉

ドライバーWeb編集部