2021/08/01 コラム

2020年度のJNCAPファイブスター大賞受賞車 レヴォーグが受け継ぐ「スバルの安全」

  

愚直に考え、真摯につくる

SUBARU_SAFETY

時を戻そう。今回のレヴォーグの大賞受賞に合わせて、スバルはレヴォーグの総合安全性能を説明する会を開いた。そこで常務執行役員CTO(最高技術責任者)技術本部長兼技術研究所長の藤貫哲郎氏が強調したのは、スバル車に共通する安全性の基本「0次安全」だった。

ドライビングポジションはもちろん、ウインドーのデザインなど人間工学に基づいた検証を実施、疲れにくく運転しやすいクルマづくりを行っている。スバルらしい基本に忠実なその姿勢は、ユーザーにとってもっとも信頼をおけるポイントともいえる。


 
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あえて見せる「シートベルト未装着の怖さ」
後席には2体のダミー人形。左側はシートベルト未装着だった。衝突の衝撃でダミー人形は前席を乗り越え、フロントガラスに衝突。大惨事は免れない。また助手席乗員がシートベルトをしていたとしても、後方からミサイルのように乗員が飛んでくる。エアバッグやボディなどがいかに進化しても、シートベルト装着がもっとも大事なことがわかるテストだった。


 
歴史を紡いで、今がある

レヴォーグの開発責任者であり、商品企画本部プロジェクトゼネラルマネージャーの五島 賢氏の説明にも誠実さがにじみ出ていた。新機能であるアイサイトXが安全に貢献するのはもちろんだが、より強調したのは「伝統のAWDとスバルグローバルプラットフォーム(SGP)、そして新環状力骨構造ボディなどが優れた安全性につながっている」ということ。そうした一つひとつ紡いできた技術が現在の「スバル=安全」という実績につながっているのだ。

レヴォーグのオフセット衝突試験映像も公開された。SGP+インナーフレーム構造により衝撃をうまく吸収し、エアバッグの効果もあって乗員(ダミー人形)は守られる……という内容かと思いきや。

じつは、後席のダミー人形2体のうち1体はシートベルト未装着だったのだ。おもに衝突安全を担当する車両安全開発部部長の古川寿也氏はその衝突実験の様子を用いながら、いかに後席シートベルト着用が乗員の安全性を担保するために大事なのかを強く訴えた。

事実、スバルは早くから後席シートベルト着用をうながす未装着ウオーニングランプ&ブザーやリヤシートリマインダーを採用。北米市場の法規に対応した装備とはいえ、国内仕様にもしっかり装着していることにもやはり真面目さが表れている。

対歩行者の安全にも

また、インプレッサから採用された歩行者エアバッグもスバルの安全を支えるコア技術だ。国産ではスバルが唯一となるこの装備は、万が一歩行者をはねた場合、硬いAピラーやその周辺に頭部が当たるのを防ぎ、致命傷になりやすい頭部障害値を抑える役割を持つ。

こう説明すると簡単な装備に思えるが、古川氏は「歩行者を検知するセンサーの開発が難しかった」と開発当時を振り返った。歩行者ではなく電柱や壁に当たったときに歩行者エアバッグが開かぬよう、スバルでは独自に開発したチューブタイプのセンサーを採用している。

これは、バンパーに足が当たって押され、次にバンパー裏に配置されたチューブがつぶれると圧力の変化で歩行者として判断し、歩行者エアバッグを展開するという仕組み。衝撃があったら片っ端からエアバッグを展開すればいいというものではないのだ。

新採用のアイサイトXは、渋滞時のハンズオフアシストなど高度な運転支援を行う最先端の先進安全装備。大賞受賞にそういった装備が大きく寄与したのは事実だが、スバルは0次安全から衝突安全ボディなどの基本をつねに意識してクルマ造りを行っている。スバルが目標とする「2030年にスバル車が関係する死亡事故ゼロの達成」がいよいよ現実的になりつつある。その一端がレヴォーグの安全性から垣間見えるのだ。


ドライバーWeb編集部

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